Taejunomics

            政治、経済、社会、哲学、芸術、文学、スポーツ、マイクロファイナンス、教育などなど、徒然なるままに書き綴ります。 ※お初の方はカテゴリー欄の「Taejunomicsについて」、をご覧ください。
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「日本で最も人材を育成する会社」のテキスト
LIPにおける僕の今年のテーマは組織づくり。会社でもつい最近昇進したので、一ヶ月前に「はじめての課長の教科書」を購入しました。その著者である酒井穣さんの新刊。
日本で最も人材を育成する会社のテキスト
「日本で最も人材を育成する会社」のテキスト (光文社新書)

本書のテーマは人材育成。なぜ人材を育てないといけないのか、どういう人々を、誰が、いつ、どのように育てるのかという問への答え、そして、その育成プログラムを評価する方法と自らが会社で取り入れている手法について紹介しています。

企業が人材を育てないといけない理由はグローバル化にあると筆者は説きます。ここでのグローバル化は、労働人口間の競争において国境の垣根がなくなる文脈から説かれています。事実、日本でもちょっとしたアルバイトの店員が外国人となっていることをよく見かけますが、この傾向はさらに進み、そのうちほとんどの業種・職種において同様の競争が起こることでしょう。好きでも嫌でも、多くの人々がこの国境なき競争に放り込まれることになります。社会人も学び続ける必要があり、その学び場が組織です。

組織には、10%の割合で積極的に学習する人々がいて、60%の消極的な学習者、そして30%の学習をしない人々がいるそうです。人材育成が、より多くの人々の能力を高めることが目的であれば、ターゲットとするべきはこの60%と本書では説かれています。

この人々に働きかけるタイミングとして紹介されているのは、(1)新入社員期間、(2)新規プロジェクト立ち上げ時、(3)出世や異動時、(4)人材がスランプに陥っているとき、(4)人材同士のトラブルがあったとき、(5)中途入社する人の入社前後3ヶ月、そして、(6)退職の前後、です。 個人的に印象に残っているのは、(6)です。人材の流動性が高い業種においては、一度会社をやめた人が戻ってくることもよくあり、退社する人々も将来の貴重な人材候補とみなす必要性は、高まっていくことでしょう(日本の労働市場の流動性が高まっていくのであれば、ですがいつになると劇的に高まるのかなかなか想像はつきません)。

人材を育てるために重要なことの一つは規律と動機づけ。このバランスが非常に重要で、うまくバランスをとらないと、人材が奴隷化したり(規律が強すぎるとき)、仲良しクラブの一員化(動機づけだけがあるとき)してしまう危険があります。

また、本書に何度か出てくる話が、「誰と一緒にいるかが、個人の成長をある程度において規定する」というものです。これは労働市場の流動性が非常に低い日本では非常に残酷な話でもあります。多くの組織において人々は上司を選べず、上司と反りがあわなくてもなかなか転職しにくいためです。こういう組織の問題について考えれば考えるほど、労働市場の流動性を高めることの重要性を痛感します。

また、本書は、実際にどうすればよいの?という問いにも一定の答えをもたらしてくれます。人材の育成結果を指標化し、それをチェックする形で育成プログラムのパフォーマンス測定をする方法が紹介されています。最終章では、酒井穣さんが勤めているフリービットでの人材育成プログラムが紹介されています。とてもユニークで面白いものが多いのですが、その中でも読書手当の存在はとても羨ましいなあ、と思えるものでした。

コンパクトな新書の中に多くの論点が整理されていて、非常に読み応えのある本でした。現在僕がいつも考えているパートタイムNPOの組織づくりにも、次に書こうとしている本についても、いくつか貴重なヒントを頂きました。

本書では組織の人々を社員とは呼ばず人材と書いています。ここからも分かるように、会社のみならず組織全般の人材育成の問題に関心のある人にはオススメの一冊だと思います。

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ブルー・セーター
アキュメン(叡智)ファンドの創業者、ジャクリーン・ノヴォグラッツによる回顧録。

bluesweater.jpgブルー・セーター――引き裂かれた世界をつなぐ起業家たちの物語

アキュメンファンドは、世界の(主に開発途上国で)、単なる慈善事業や政府事業が失敗してきた分野(医療、水、住宅など)に挑戦する起業家たちに投資するファンドです。経済的なリターンと同時に、社会性も重視するという点で、多くのマイクロファイナンスファンドに類似しています(そして、この社会性は長期的にはリターンにも関連してくるのではないかと個人的には思います)。

感じたことを三つ書きます。

1. ビジネスベースの問題解決の大切さ
2. 開発途上国の貧しさと自分の豊かさとの折り合い
3. 貧困の削減と平和の実現は表裏一体




1. ビジネスベースの問題解決の大切さ

入行して3年でチェース・マンハッタン銀行を退職した著者は、アフリカでのマイクロファイナンス事業に着手し、厳しい洗礼を受けます。アフリカのリーダーたちは北側諸国が自分たちのことを何も知らずに、単に人とお金ばかり送ってくることに憤る。援助に慣れた住民たちは、”どうせ時間がたてばこの人達は帰るのだからお金を返さない方が得だ”と思い、借りたお金を返そうとしない。ある時期共に働いていた3人の仲間のうち、一人は改革に反対する人々によって殺され、一人は横領により辞任する(そして後にはルワンダの大虐殺政権の法務相となり)。盗みは日常茶飯事で、時には警備員も買収される。

これら著者の経験は、開発途上国で何か事業をすることの大変さを思い知らせてくれます。僕は、先進国に住む人間が開発途上国に行き、本当に成果をあげる事業をしたかったら、最低限守らなければいけないことが二つあると感じています:

・コミットメントを示すこと:少なくない現地の人々は、「この豊かな国から来た人々には帰る国があり、ちょっとした困難があれば帰るだろう」と考えている場合がある。残念ながら、今までの少なくない人々がそうだった。自分はそうではないということを示す必要がある。きっちりとモニタリングを行うことはそのひとつ

・相手の動機構造を理解すること:人々の多くはインセンティヴにつき動かされて生きている。ある行動を選択するときには、頭の中でしっかりと損得勘定が働き意思決定をしている。人間の善意は素晴らしいが、事業をデザインするときには決して善意に依存してはいけない

援助もビジネスベースの問題解決も同様に重要ですが、援助の場合、上の二点を満たすインセンティヴが援助する側に欠けている場合が多いのかもしれません。著者は、先進国の「善意」によるプロジェクトの多くが失敗してきたのを見たと述懐します。(とはいえ、今にも死にそうな人がいて、その人を助けるための援助にインセンティブデザインを導入するのはなかなか難しい問題ですが)

また、ビジネスベースでの問題解決は相手を被害者ではなく顧客とみなします。そこでの関係は対等なものです。人間は尊厳を求める生き物で、それを奪わない点にビジネスベースでの問題解決の素晴らしさがあると思います。これは別に開発途上国に限った話ではなく、先進国における貧しさを解決するためにも必要な考え方だと思います。それが出来ないと、ホームレスに数万円を渡し、それが全く活きないという事態が生じる。

問題は一朝一夕に解決するものではなく、かなり長い時間を求めるものです。10年以上かかる場合もある。世の中が変わっていくのはそれくらいの時間を求めるもので、それゆえにアキュメンファンドは自らの資金を、patient capital(忍耐強い資本)と名付けています。






2. 開発途上国の貧しさと自分の豊かさとの折り合い

本書はまた、経済開発に携わる先進国の人間がいつも抱くジレンマについても、正直に記述しています。友人と祝いごとをしようと思い立ち、スーパーで買物をするときのシーン。 アフリカ現地の人が決して入れないような高級品のそろうスーパーで食材を買い、さらにシャンペンを買おうとする友人ダンに、彼女は拒否感を示します。 それに対してダンはこう言います。

「ある意味で妥当とは言えないのはわかってる。ぼくたちが仕事をしている相手は貧しい人たちで、きみもぼくも相対的にはこれ以上ないほど恵まれている。でも、自分じゃないふりをするのはよせよ。アメリカにいたらシャンペンでお祝いするんだろ。この仕事をして幸せで生き生きしていたいなら、自分のこういう部分と折り合いをつけて、仕事との矛盾を頭にたたきこんで、どうやっておさまりをつけるのか考えるべきじゃないのか。」

そしてジャクリーン(著者)はシャンペンを購入します。問題はシャンペンを数本買うかどうかではなく、特権を当然視せず、世の中と大きな目的に役立つように活かせるか、と自分に言い聞かせて。

「人が特権を得るのはただ出自とか生まれだけではなく、躾や外見、運動能力、教育によるということもわかってきた。一年生のときの修道女の先生から教わった”多くを与えられた人間は多くを求められる”ということと、人は”自分自身に誠実で”いなければならないというシェークスピアの知恵とが結びつく必要があるのも学んだ。これに、謙虚さ、共感、好奇心、勇気と、そして勤勉をいつでも付け加えれば、リーダーシップへの真の道がやっと見えてくる。もちろん、ユーモアはいつでもプラスだ。」



3. 貧困の削減と平和の実現は表裏一体

日本国憲法の前文にも書かれていることですが、僕たちは貧困の削減こそが本当の意味での平和をもたらすものだと信じています。 僕たちの団体名がLiving in Peaceなのはまさにここにあります。

著者も、自らが活動をしていたルワンダでのツチ族大虐殺を目の当たりにし、次のように説きます。

「もしルワンダ人の大半が、自分の努力で生活を変えることができ、子供を学校に通わせたり、子供の健康を守ったり、将来の計画を立てたりするだけの収入を得ることができると考えていたら、道徳的に腐敗した政治家達が、ジェノサイドを誘発するほど深く、人々の心に恐怖を吹き込むのはずっとむずかしかっただろう。」

ルワンダは、戦前のドイツにも、30年前のカンボジアにも置き換えられると思います。力を持つ側が持たない側を基本的な機会から排除することを正当化する社会では、いつか大きな問題が生じる。今は豊かな国でも、同じことが起こらないとは決して言えないのではないかと感じています。


本書のタイトル、ブルーセーターは、著者が大学生の頃に中古品店に売った青いセーターをアフリカで見つけたエピソードから。世の中は色々なところでつながっていて、誰かの貧しさをなくすことは、他人のためだけではなく、自分たちのためでもあると、いつも強く思います。




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