Taejunomics

            政治、経済、社会、哲学、芸術、文学、スポーツ、マイクロファイナンス、教育などなど、徒然なるままに書き綴ります。 ※お初の方はカテゴリー欄の「Taejunomicsについて」、をご覧ください。
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30にして立つ
「15にして志し、30にして立つ」という言葉は、なぜか肩にずっしりとのしかかっていて、30歳のうちに人生の方向性を明確に決めようと思っていた。

去年の10月に30歳になってからの1年間、これから人生をかけてやることについて色々と考えていて、4つくらいの選択肢を検討していたのだけど、時間の制約の中でいざ何を選ぶかということを考えている間に、色々なものが雨上がりの空と同じくらいにクリアになった。


僕が人生をかけられるのは、世の中の結構大きな不条理を正すことなのだと思う。虐げられている人、代弁されることがない人、貧困の中に死にゆこうとしている人がいる世界の状態を、少しでも良いものに変えられるのであれば、僕は死ぬ時に多少は満足できる。

それと、もう一つ情熱を注げるのは、必要な場所に必要なお金や人・モノが届く世界をつくること。全ての人には自分の力で自分の運命を切り開いていく力があるし、必要なものは平等なチャンスなのだと思う。そのチャンスは必要な場所に必要なお金やモノ・ヒトに提供されることによって、より多くの人にきちんと提供されるはずだ。

世の中を便利な場所にするとか、カッコいいものを作るとか、そういうことは僕の人生のテーマではないみたいだ。テクノロジーの話は好きでワクワクするし、Appleの製品は好きだけど、それを作ることそのものに 情熱をかけられるかというとそうではない。別に便利でなくても人は生きてきたし、かっこいい製品が手元になくても、楽しくやっていけるから。一方で、自分の人生のテーマを達成するためのテクノロジーやイノベーションには興味があるし、それは引き続き探していけたらいいなと思う。


こんな内容のことを、仲のいい友だちに話してみたら、「はあ?何をいまさら・・・」と言われた。周りから見ると明らかなことが、自分にとってはそうでないものというのは、よくあることだ。傍目八目。

なんにせよ、30歳のギリギリのタイミングで何をやるのかが明確に見えたので、30代はどんどん突っ走ろうと思う。
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経済成長における4つのドライバー
メモ代わりに、サマーダボスで参加したセッションと関連して3つの興味深いトピックに関することを書き留めておきたい。

今日は経済成長に関して。

世界経済は一つのターニングポイントを迎えようとしている。2025年には、世界人口の半数が一日10ドル以上で生活をするようになる。この変化に相俟って生じる中間層の増大は、「新しい産業革命」ともよばれる。そこに至るまでの過程には、かなりの変化と混乱が待っているだろう。

では、このポイントまでの成長がどのようにもたらされるのか。いくつかの主要なドライバーがある。


労働力人口の増大
日本にいると感じにくいが、世界人口の半数は27歳以下で、その多くがまだ労働力となっていない。これから10年の間に、若い世代が労働市場に流れ込むことになる。それだけではなく、定年年齢の引上げと女性の社会進出と相俟って、労働力人口はさらに増大するだろう。

労働力人口が増大しても、産業が拡大しなければ失業が増えるだけなのではないか、という懸念はある。実際のところ、今後とも雇用は不安定になるだろう。ただし、労働力の供給増加が、新しいメガ産業の到来を惹起する可能性もあり、労働力人口の増加は経済成長のドライバーとなりうるだろう。この点と関連して、教育は非常に重要なテーマとなるが、それは別の記事で書くことにする。


資源・エネルギー
これから、過去にない成長が望まれるのがアフリカ。アフリカ諸国にとっては、地下資源や広大な国土が強力な成長のドライバーになりうる。広大な国土の使い途としては、例えば太陽光エネルギー発電所の設置等が考えられる。実際に、Desert Techという、サハラ砂漠での太陽光発電のプロジェクトが進行中。新興国全体が先進国と同水準のエネルギー構成で生活するのは持続可能でなく、こういったGreen Techの取り組みが大きなトレンドとなりうる。


南南協力
南南協力は、新興国の台頭と相俟ってこれまで以上の意義を有するようになっている。これまでのところ、とくに多いのは中国とブラジルとの間の資源取引だが、こういった資源をめぐる新興国間の大規模取引に参加するプレーヤーは増大していくだろう。


Frugal Innovation
Frugal Innovationとは、新興国でやってきている低コスト化(ただし品質は満足できる水準)におけるイノベーションのこと。ここ2,3年で注目されているコンセプトで、少し前にThe Economistでも特集が組まれていた。BOP (Base of the Pyramid)層とよばれる人々のニーズにあった商品を、驚くほどの低コストで生産することの意義は日に日に高まっている。特に注目されている分野は、エネルギー、水、携帯電話関連サービス、その他日用品など。

世界中のスラムの風景は似たようなものだという。だとすれば、一国で生じるFrugal Innovationは、世界中に拡大させることができる可能性がある。このイノベーションは、途上国の貧困層が中間層へと変わっていくスピードをさらに上げることだろう。
新興国発の医療イノベーション
インドの医療イノベーションについて、現地にいる友だちからのメールを転載(許可は得ています)。これがまさに途上国・新興国で起こっているイノベーションの一例で、コスト削減と質の向上をともに実現している好例。制度の不在が理由でこのような思い切ったイノベーションが生じるという側面もあるので、日本で同様の取り組みができるのかは分からないけれど、その精神から学ぶべきことは非常に多いと思う。


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Narayana Hrudayalaya病院(以下NH病院)は、南インドのバンガロール郊外にある800床程度の心臓外科専門病院です。バンガロールはInfosysなどインドの代表的なIT企業が多く存在し、「インドのシリコンバレー」と呼ばれる産業の集積地です。街の中心部から車で40分ほどいったところに、NH病院は立地しており、世界で最も革新的な病院として世界中の医療従事者から注目されています。理事長のDr. Devi ShettyはEconomist誌が選ぶイノベーター大賞にも選ばれています。

NH病院の革新性は"Walmart meets Mother Teresa"と表現されます。圧倒的な規模の経済を活用して、心臓外科の手術コストを抑え、低価格でインドの貧困層に心臓外科治療を提供しているのです。インドの病院で世界的に有名なApollo病院、Fortis病院などは、インドの富裕層もしくは海外患者の受け入れで高い収益を上げているので、貧困層を対象としているNH病院とは一線を画しています。NH病院は今まで医療を受けることができなかった貧困層に心臓外科手術を行って、高い治療成績を誇り、かつ利益率も高いという驚くべき病院です。

インドの医療費はGDP比4-5%程度、その中での政府支出は1%です。また保険のカバー率は全人口の15%程度であり、多くの医療は患者の個人負担によってまかなわれます。一人当たりGDPは平均1400ドルですが、これはあくまで平均の数字であり、インドの貧富の差は凄まじいので1日1ドル以内の支出で生活している貧困層の割合も30%程度にのぼります。インドでの心臓外科手術の平均コストが4000-5000ドル(もちろん先進国よりは遥かに安いですが)なので、ほとんどの貧困層は心臓外科手術を受けたくても受けることができません。インドの場合糖尿病などの生活習慣病の有病率も高く、心臓外科手術が本来的に必要な人数は年間250万人いるといわれていますが、実際手術を受けることが出来ている人は10万人だけです。

このインドの医療問題に立ち上がったのがDr.Devi Shettyです。Dr. Shettyはインドで医師免許を取得後、イギリスで心臓外科医としてのトレーニングを積みます。その後インドに帰国して、インドの心臓外科会を常にリードしてきました。Dr.Shettyはあるときからマザーテレサの主治医を勤めるようになり、マザーテレサとの対話が彼のその後の人生に多くの影響を及ぼします。医療の世界は日進月歩の発展を遂げているのに、医療費は高騰していく一方で、貧困層は適切な医療を受ける機会が減っていっている。医療以外の世界では、イノベーションによって自動車、テレビなどのコストは低減しているのに、医療はその逆なのは何かおかしいのではないか?貧困層にたいして何かできないか?ということを考えるようになりました。2000年にDr. Shettyは彼の義父の力を借りてNH病院を立ち上げます。

NH病院のCABG(バイパス手術)のコストは平均2000ドルです(術前、術後管理、入院期間含む)。日本でのコストはどの程度か知りませんが、米国のコストの1/10、インドの平均的な病院の半分程度の圧倒的な低コストで手術を行っています。カラクリは極めてシンプルで、心臓外科手術に絞って病院経営を行っているので、とにかく手術件数が多いのです。NH病院では1日平均35件の心臓外科手術が行われています。バイパス手術だけでも1日15件-20件行なわれており、年間の心臓外科手術の件数は8000-9000件、バイパス手術も4000件以上行なわれています。米国のCleveland Clinicの倍以上の件数ですし、日本の榊原記念病院の6-7倍の数は行なわれているのではないでしょうか。

Walmartは小売の世界で、規模を大きくすることで圧倒的な低価格で製品を販売できることを証明しましたが、NH病院は医療の世界でも規模の経済が働くことを証明しました。まず病院コストは固定費が多くを占めます(NH病院の場合は7割程度)例えば一つの高額の検査機器を持っている場合、その検査機器を1日2回使うか10回使うかで大きく1回あたりのコストは異なります。手術件数、患者数を増やすことで、一患者当たりの固定費を減らすことができるのです。それだけでなく、NH病院はインドの心臓外科手術の1割程度を行なっているので、医療機器メーカーなどのサプライヤーに対して圧倒的な価格交渉力を持つことが出来ます(これはWalmartの得意戦術でもあります)また、手術件数の多寡は心臓外科医にとってトレーニングの最大の肝の部分なので、多くの若手医師を比較的安い給料で集めてくることができます。
 
規模の経済はコスト低減に寄与するだけではなく、質の向上ももたらします。一人の医師は週に10例程度のCABG手術を行なうことができるので、手技に熟練することができます。これは医師だけでなく、看護師などのほかのチームメンバーに関しても同様です。正確な数字をきちんと見たわけではないのですが、NH病院の術後治療成績は米国のトップレベルの病院のそれと比較して遜色ない、もしくはよりよい結果が出ていると聞いています。また質の向上に伴う合併症の減少、入院期間の短縮は上記のコスト削減にもまたつながります。医療の質に直接つながるところには、投資を最大限に行っており、PICUの設備などを見学しましたが最新鋭の医療機器を整えておりました。それに比較すると建物などはかなりオンボロで、トイレなどはなるべく行きたくないところです。また設備だけでなく、質の高いプロセスが存在することの証明としてJCI認証も今年受けております。JCIは国際的な医療認証機関で、病院の感染管理や患者プライバシー保護などの様々なプロセスを評価して認証の可否が決められます。日本では亀田病院、聖路加病院、NTT東日本関東病院が認証を受けています。

貧困層に対して医療を提供するために、コストを下げる以外の様々な取り組みも行なっています。一つは支払い能力によって、医療費を決めています。10日入院期間+手術のCABGパッケージで通常2800ドルの支払いが必要なのですが、その支払いをしているのは50%程度の患者です。30%程度は1200ドル、10%程度は無料で医療を受けています。逆にインドの富裕層で支払い能力が高い人たちは、サービスレベルがそれほど大きく変わるわけではないのですが、5000-6000ドルの支払いをしてNH病院に入院しています。払える人には払ってもらって、もらえない人からはもらわないというCross subsidizationの仕組みによって病院経営を成り立たせているのです。また地域の貧困層向けの保険もつくって提供しており、保険料は月間1ドル程度(数字は未確認です)だそうです。それら貧困層向けの活動を行ないながら、病院の純利益率は7%であり、日本の病院とは単純比較は出来ないと思いますが、極めて高い数字をキープしています。

Dr. Devi Shettyは成長を止めようとはしていません。心臓外科専門病院の近くに腫瘍内科などがメインのMulti Speciality Hospitalも作りましたし、バンガロール以外のほかの都市にも次々と病院を作ろうとしています。彼らの患者数、売上げなどは年率40%以上で成長しています。現在Dr. Shettyは米国に出張中なのですが、今の大きなプロジェクトの一つにカリブ海のケイマン諸島にNH病院を作るというものがあります。ケイマン諸島に病院を作って、米国に多く存在する無保険者たちが安価で心臓外科手術を受けることができる病院を作ろうとしているのです。

このような革新的な取り組みが出来るのも主にはDr. Shettyの強烈なカリスマ性、リーダシップによるところが大きいと思います。私も何度かお話する機会がありましたが、そのオーラには常に圧倒されます。Dr. ShettyはMBAをとったような人材も積極的に採用しており、病院内に10名程度のMBAホルダーが活躍しています。彼らは様々なプロジェクトマネジメントを行なったり、病院内のITインフラシステムの立ち上げを行なったりしております。私のようなインドの医療も文化も言語もよくわかっていないような人間も、インターンとして迎え入れてもらっています。私は院内のサプライチェーンマネジメントの最適化をプロジェクトとしてあたえられて、倉庫で腕まくりをしてたな卸しを行なったりと様々な貴重な体験をさせてもらっています。まだプロジェクトの途中ですが、色々面白い分析やアイデアが出来てきているので千万円くらいのコストインパクトは出せるのではないかと思っています。

NH病院のモデルはあくまでインドだから成立するモデルなのかもしれません。ただNH病院から日本の病院が学ぶことは多いと思います。まずは病院のミッションや戦略をクリアにすること。病院の運営を徹底的にその戦略に合致させること。投資すべきところに投資して、そぎ落とすところはそぎ落とす。現在の日本の中規模病院にありがちな、中型だけれどもMRIも何でも持ち多角化経営をするというのは決してサステイナブルなモデルではないでしょう。今までの病院の常識を捨てて、他の業界からも学べることは学ぶことも重要です。医療問題でベストセラーを多く出しているHarvardの外科医のAtul Gawandeの著作も是非読んでみてください。彼の着想の多くは他の業界(航空業界、建築業界、チェーンレストラン業界など)から来ています。日本の医療は規制だらけで難しい部分はあると思いますが、その中でもDr.ShettyがWalmartの事例から学んだのと同様に、他の業界から学び、変われる部分は多くあるのではないでしょうか。
国際会議のセッション
World Economic Forum in Tianjinに来ている。国際会議はこれで3つ目。

こういった会議の一つの価値って、世界で今起ころうとしていることに関する情報を知ることができることだと思う。それは、イノベーション浸透の段階でいうと、アーリーアダプターが知り始める段階にある情報。業界内の人にとっては常識でしかないけれど、外の業界にいる人にとってはとても新しい情報。

なので、こういったフォーラムで語られていることが、専門家にとって何一つ新しい内容を含んでいないという批判は、あまり本質的でないような気がする。そもそも、そういう新しい情報を共有しようとするインセンティブがないから。

例えば、金融関連のセッションでよく語られているテーマは、「これからのリテールバンキング」だ。コンピューター(携帯電話含む)に業務の大半が代替されることにより、今後、銀行のリアル支店はどんどん無くなっていくだろうという話題は、多分金融業界にいる人にとっては大して新しい話題ではない。でも、外部の人からすれば、結構珍しい情報なのだろうと思う。

ということを考えると、国際会議に出て、セッションに参加するときには、選ぶ基準は、「自分がどうしても何か発言したい分野」か「自分にあまり馴染みのない分野」にすると良いように思う。たった数十分で、自分が門外漢である業界の潮流が分かるのは、結構お得なことだ。


(いくつか気づいたことがあるので、この期間に幾つか連投していこうと思います。)


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