Taejunomics

            政治、経済、社会、哲学、芸術、文学、スポーツ、マイクロファイナンス、教育などなど、徒然なるままに書き綴ります。 ※お初の方はカテゴリー欄の「Taejunomicsについて」、をご覧ください。
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野口悠紀雄「ファイナンスの基礎」第八回。
ファイナンス基礎第8回。
前回の授業は、この前の記事で書いた内容の実例を用いての復習が多かったので、代わりに、先生がさらりと流した部分の補足説明に重点を置いていこうと思います。


1.相対的価格付けと絶対的価格付け
2.SDFと状態証券とリスク中立確率



1.相対的価格付けと絶対的価格付け

1)相対的価格付け
相対的価格付け (Relative Pricing)とは、前回の数値例のように、マーケットで成立している価格を所与として、ある金融資産の価格を計算する方法です。

例えば、500mlのバナナジュースが200円で、500mlの牛乳が100円なら、バナナジュースと牛乳を1:1で混ぜたバナナオーレ500mlの値段は(手間とかを無視すれば)、150円ですよね。これと似たような方法で、

あるペイオフをもたらす資産価格=それと同じペイオフをもたらす資産を組み合わせるのにかかる費用

というロジックから価格を割り出すわけです。

復習ですが
市場が完備である=ありえる状態の数と証券の数が同じ

連立方程式を解けばすべての状態のペイオフについて複製ができる

どんな資産も相対的価格付けが可能

です。 これは、

市場が完備である ⇔ すべての状態についてSDFがユニークに決まる

ということと同値です。(⇔は、必要十分条件を指す記号です。決して「正反対」を示す記号ではありません)


もちろん、常にこのようにピタリとした答えが求まるわけではありません。
市場が完備でない限り、全ての状態のSDFが唯一の値として決まるわけではないのです。

それでも、以下のような方法で対処することは可能です:
・たまたまユニークなSDFが存在し、もしある資産が、ユニークなSDFだけでプライシングができるのであれば、価格はぴたりと求められる
・「無裁定⇔すべての状態のSDFは正(前回やりました)」なので、無裁定の仮定から「あり得る価格の幅」を求めることができる



※他にある方法としては例えばこんなのがあります
・動学的完備化:時間を連続時間に変え、発生する状態をup-downの二つの状態(二項ツリー)のみに再構築して、市場を完備とみなす(アロー先生のアイディア)
・オプションによる完備化:市場のペイオフに対するオプションの存在を仮定することにより、完備市場を常に想定することが可能になります(ロス先生のアイディア)




2)絶対的価格付け (Absolute Pricing)

絶対的価格付けでは、経済主体の効用からものの価格を求めようとします。 具体的には、代表的経済主体というものの存在を想定して、その代表的経済主体の期待効用最大化行動に基づき、価格付けを考えることになります。

人間はみんな違うのだから、代表的経済主体など存在するわけがない、と思うかもしれませんが、いくつかの条件がそろうと、もし実際には世の中にいろいろな人がいるとしても代表的経済主体を想定しても何の問題もなくなります。
たとえば、市場が完備であるときや消費者の効用関数としてあるタイプの効用関数(HARA型効用関数)を仮定できる時、代表的経済主体の存在を想定することが可能になります。

代表的経済主体を想定できる時、SDFは、次のような方法で求めることができます:

ある状態sにおけるSDF
=sにおける消費水準の限界効用/現在の消費水準の限界効用

で表されます(これに、時間選好率というものをかけることもあります)

限界効用は低減するので、消費水準が高い将来の状態においてほど、SDFは低くなります。 逆に、消費水準が非常に低くなるような将来のある状態においては、SDFは高くなります。 これは、SDFが「経済の不快度」となっていることと整合的な結果ですね。




2.SDFと状態証券とリスク中立確率

授業で出てきているのはSDFだけですが、このSDFと状態証券とリスク中立確率の間には密接な関係があります。先生が何の説明もなしにいきなり状態証券の話をしていた気がするので、補足しておきます。


状態証券

状態証券というのは、「ある状態が発生したときだけに1円を支払ってくれる証券」です。たとえば、晴れた日には1円を支払ってくれる証券は、晴れという状態についての状態証券になります。

こんな証券がもしあるとして、全ての状態に対する状態証券を買ったらどうなるでしょうか。たとえば、晴れたら1円を支払ってくれる証券と、晴れなかったら1円を支払ってくれる証券を買ったらどうなるでしょうか。

常に1円をもらえるわけですから、この状態証券の組み合わせから得られるペイオフは、安全資産のそれと等しくなるはずです。だったら、この証券の価格は、将来のペイオフの期待値である1を、安全利子率で割り引けば計算できるはずです。

よって、

すべての状態について購入した状態証券価格=1/(1+安全利子率)

になります。


SDFは、ある状態における1円のペイオフの割引現在価値でした。この事を踏まえると、SDFと状態証券には、以下のような関係が成立することが分かるでしょう。

ある状態sのSDF×状態sの生起確率=状態証券価格

確率は、常に非負ですし、これが事前に分かっていると仮定しています。
すると、前回紹介したアセット・プライシングの基本定理は、次のように書き換えることができます:

定理1:市場において無裁定が成立しているとき、状態証券価格は非負になる
定理2:市場が完備であるとき、状態証券価格はユニークになる




リスク中立確率

次のような数字Qを考えてみましょう:

ある状態sにおけるQ=状態sの状態証券価格/すべての状態証券価格
 
このQをすべての状態について足し合わせると、当然ながら1になりますよね。

無裁定が成立しているとき、状態証券価格がマイナスになることはありません。

すなわち、このQは、「一つ一つが非負の値をとり、全ての状態について足し合わせると1になる」という性質を持っている数字であることが分かります。

思い起こしてみると、これは、確率についても同様に言えることなのですね。だから、Qを一種の確率と読んでも差し支えないわけです。

そこで、このQはリスク中立確率と呼ばれています。別名、マルチンゲール確率。

なんでリスク中立確率と呼ばれるのでしょうか。それは、この確率を用いて、ある金融商品のペイオフの期待値を計算してみるとわかります。(ちょっと確認するとすぐにわかります)
リスク中立確率で期待値をとると、全ての資産収益率の期待値は、無リスク利子率に等しくなります。 これが、リスク中立確率と呼ばれる所以なのでしょう。

リスク中立確率を用いると(すなわちこれは、SDFや状態証券を用いることとも同値なのですが)、全ての資産の価格の収益率は安全利子率になります。これにより、資産価格を求める方法が非常に容易になります。

価格=リスク中立確率を用いた期待値/(1+安全利子率)

によってどんな資産の価格も求められるわけdす。

さっきと同様にアセット・プライシングの基本定理をリスク中立確率について書き換えると、次のようになります:


定理1:市場において無裁定が成立しているとき、リスク中立確率は(非負のものとして)存在する
定理2:市場が完備であるとき、リスク中立確率はユニークになる




もっと詳しく知りたい人は、アセット・プライシングを受講してみてください、もしくは、池田先生の教科書

金融経済学の基礎 (ファイナンス講座)

を読んでみてください(とてもいい教科書です)。


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