Taejunomics

            政治、経済、社会、哲学、芸術、文学、スポーツ、マイクロファイナンス、教育などなど、徒然なるままに書き綴ります。 ※お初の方はカテゴリー欄の「Taejunomicsについて」、をご覧ください。
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野口悠紀雄「ファイナンスの基礎」第11回。
授業が始まる直前で申し訳ないのですが、野口先生の授業のキャッチアップ。

MM命題についてです。ModiglianiさんとMillerさんが提唱した命題なので、MM命題という名前が付いています。

前提
第一命題
第二命題
第三命題



前提

前の記事でも少し書いたかもしれませんが、MM命題を導出するための仮定には以下のようなものがあります。
・市場は完全競争市場であり、裁定機会は存在しない
・取引費用、税金は存在しない
・投資家の効用は富の増大に伴い増加する
・投資家の間で企業の将来収益の確率分布について同一の予想がされている
・企業と投資家は同一の利率で貸付・借入ができる

前にも書いたように、企業がデフォルトする可能性について排除することは、別に重要な仮定ではなく、そんな仮定を置かなくともMM命題は成立します。



第一命題

MMの論文によると、第一命題は以下のようなものとして書かれています。
「ある企業の市場価値はその資本構成から独立であり、それは、企業の期待利益を、それが属するクラスに妥当な率(資本コスト)で資本還元したものに等しい」

「ある企業の平均資本コストはその資本構成から独立であり、それが属するクラスに適用される資本化率に等しい」

平たく言うと、
①負債で資金調達しても、株式で資金調達しても、企業の価値が変わることはないし、
②投資家が企業に平均して要求する収益率について変わるわけもないということです。


①の感覚的な証明としては、次のような事を考えるといいでしょう。

ここに、全く同じ二つの会社があります。
片方の会社が、その資金を借り入れで行うか、株式を発行して行うことにより価値を上げられるなんてことはありうるでしょうか。ちょっと考えてみるとわかるように、ありえないわけです。


最近のファイナンス理論の発展を用いた証明としては、次のような方法があります。

MM命題では無裁定を仮定しています。無裁定ならば、授業でやったように、リスク中立確率やSDFは、一意ではないにしても正の数字として求まり、一定の幅をもって金融商品のプライシングをすることが可能になります。
このリスク中立確率を用いて、企業の負債と株式をプライシングしてみます。 そして、その比率が変わることにより、企業の価値、すなわち企業の負債と株式の価値の合計が増加するかを確認します。 すると、これが全く変わらないことが分かります。



②の証明としては、次の事を考えるとわかります。

ここに、ある企業の負債と株式をすべて持っている投資家がいるとしましょう。いうなれば、企業の完全なるオーナーです。
このオーナーさんが、自分の企業の株式と負債の比率を入れ替えたところで、このオーナーさんが企業に対して要求する収益率が変わるなんてことがありうるでしょうか? ないですよね。

世の中では、資本コストの考え方について混乱が見られますが、いわゆる加重平均資本コストは、企業の資産のリスクによって決定されるものということは覚えておいてください。言い換えると、企業の本業のリスクの度合いにより、企業の加重平均資本コストは決定されます。資本構成を変えることにより、これらが変わるなんてことはあり得ないわけです。


ただし、注意するべき点は、MMでは税金が存在しないと仮定している点にあります。

負債に対する利子は企業の損益計算書で費用として計上されるため、企業の税引き前利益を下げることになり、結果として、企業が支払う税金を下げることになります。よって、税金が存在する世界においては、企業の資本構成が多少なりとも企業価値に影響を与えることがありうるわけです。この税金支払いにおける利益を、タックス・シールドと呼んだりします。MM命題の論文が1958年にパブリッシュされた5年後、論文はタックス・シールド分について考慮されたものとして修正され、そこで提唱されているMM命題は、修正MM命題と呼ばれています。

ですが、もし国税が税金の決定において硬直的でないのであれば、企業の法人税、配当や利子所得に対する源泉税は、最終的には、MM命題が成立するような水準になると、Miller先生は主張しました。これが、ノーベル経済学賞受賞を決定的なものにしたという人もいたりします。


第二命題

株式収益率=営業リスクを反映した収益率+財務リスクを反映した収益率

として求まるという事がその内容です。営業リスクは企業のビジネスが変わらない限り変化しませんが、財務リスク(企業が債務不履行に陥るリスク)は企業の負債が増加することにより増加します。

すなわち、企業の負債比率が上昇すると、企業のROEは上昇する、という事を話しているとも言えます。
授業で野口先生は、「ROEは企業のパフォーマンスを評価するのに適切な方法でない」というのがMM第二命題だとおっしゃいましたが、それはこの事から来ています。

ちなみに、スターン・スチュワート社が提唱しているEVA(決してエヴァンゲリヲンじゃないですよ)という付加価値評価の指標があります。このEVAは、なんと負債水準を上げると上昇するというとんでもない指標でして、これが世間に流布することには相当な弊害があったりします。エヴァンゲリヲンの方が、はるかに社会に付加価値を与えていると言えるでしょう。こんな指標に商標登録をしてしまって良いのでしょうか…


第三命題

あまり注目はされないのですが、MMには第三命題まであります。
それは、企業は、実物投資機会から得られる収益率が、その平均資本コストより高いときにのみ、その投資機会を採択するという内容のものです。 これは、結局、「企業はNPVが正の投資を行う」ということと同じで、コーポレートファイナンスとしては当たり前のことです。 だから、あまりリファーされることが無いようですね。


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2008/07/11(金) 22:50:05 | | #[ 編集]
EVAとDCF 
返信遅れて申し訳ありません。
実は、世の中には「邪道な(?)」DCFが結構あって、そのDCFとEVAは同値なのですが、それは、負債と株式の資本コストが、財務構成の変化によっても変化しないという点に起因しているようです。 
WACCの計算式において、ReとRdって一定ですよね。それはやっぱりおかしいのだと思います。

あ、もちろん、資本構成が一定という状況においては、問題はさほど重大にはならないわけですが。

いつも意義深いコメントありがとうございます。
これからもどうぞよろしくお願いします!
2008/07/15(火) 08:18:15 | URL | Taejun #-[ 編集]
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