Taejunomics

            政治、経済、社会、哲学、芸術、文学、スポーツ、マイクロファイナンス、教育などなど、徒然なるままに書き綴ります。 ※お初の方はカテゴリー欄の「Taejunomicsについて」、をご覧ください。
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野口悠紀雄「ファイナンスの基礎」第12回。
ファイナンスの基礎も、もうおしまいですね。
最終回では、ほとんどが復習とその他お話に費やされた感があります。 その中で、大切なポイントを書いておくことにします。

1.個別リスクと市場リスク
2.オプション理論を用いた企業価値評価


1.個別リスクと市場リスク

ファイナンス理論は、不確実性に対処するための知恵を与えてくれます。 そのファイナンス理論において、もっとも大切なコンセプトはリスクで、それは資産から得られる収益のばらつきで表され、数学的には標準偏差などの道具がその計測に用いられます。

投資におけるリスクは、投資対象を多様化させることによって減らすことが可能です。この事を、リスク分散と言いました。 リスク分散について考えるときに重要なのは、以下の二点です。
1.多様化させる投資対象間の資産の収益の相関が低いほど、分散の効果は高まる。資産がそれぞれ完全に相関しているのなら、分散の効果は期待できない
2.分散させることができないリスクが存在し、それは市場リスク・組織的リスクとよばれる

サブプライム問題におけるファイナンス理論上の一番の問題は、1の基本原則が無視されてしまった点にあります。信用力の低い人々が不動産担保ローンについてデフォルトするという事象は、かなり高い相関をもっていることが無視されていたのだと思われます。 一人がデフォルトするとまた一人がデフォルトするようなローンをいくら一つのプールにまとめても、リスク分散にはならないのです。

また、サブプライム問題における理論上の問題は第二に、統計の問題と言えるのかもしれません。 過去に起こらなかったことが、将来にも起こらないとは言えないわけですね。 過去には確かにアメリカの低所得層の不動産担保ローンのデフォルト率は低かったかもしれませんが、それがずっと続くとはいえないのです。


2について少し補足しましょう。 市場リスクというのは、分散不可能なリスクです。分散投資ができるという前提に立つと、分散可能なリスクはさほど重大なリスクとはならないため、市場リスクこそが本質的なリスク要因となります。 だから市場リスクに対して脆弱な資産は、より危険な資産であるという考え方は、納得のいくものだと思います。 そして、授業で習ったCAPMは、市場リスクに対する感応度であるベータをリスクの指標とする理論です。

CAPM成立するまでのロジックの流れは、次のようなものになります。
・2つの前提どちらかが満たされると、平均・分散分析が投資家の期待効用最大化と整合的になる
・投資家が分散投資を行うのであれば、最小分散フロンティアを得られる
・安全資産が存在するのなら、最小分散フロンティアとの接点となるポートフォリオのみが、唯一の危険資産ポートフォリオとなり、それは全ての投資家が保有しようとするポートフォリオである。この、すべての投資家が保有しようとするポートフォリオを、市場ポートフォリオと呼ぶ
・皆が市場ポートフォリオのみを保有するのであれば、人々にとってリスクとは市場ポートフォリオのリスク、すなわち市場リスクを意味し、個別的な証券は、市場リスクとの関連性によってのみ評価される
・すなわち、市場リスクに対する脆弱性が高い証券ほどリスクの高い証券とみなされ、逆は逆である



2.オプション理論を用いた企業価値評価

最近になってオプションのロジックが企業価値評価の実務にも用いられそうな前触れが見え始めていますが、学問の世界では、すでに30年以上前にこの事が考えられてきました。 Robert Mertonは、本当の天才だったのでしょうね。 有名な逸話としては、サミュエルソンは、マートンがあまりにも優秀だったので、自分の研究室において勉強させたというものがあったりもします。

それはさておき、どういうロジックで企業価値評価をするか、概要だけ説明しましょう。 (もっと詳しく知りたい方は、池田先生の「コーポレートファイナンス・トピックス」を受講することを強くお勧めします。巷の行き当たりばったりのコーポレートファイナンスのお勉強ではなく、原理原則に基づいた学問としてのコーポレートファイナンスを体感できます。)

株式と負債には、優先劣後の構造があります。すなわち、企業が倒産した時に、資産が100億円しかのこっておらず、負債額面が120億円あったとしたら、株主は一切の剰余を受け取る事はできません。 ただし、その代りに、こんな状況であっても株主は20億円を更に余分に支払う義務はありません。 これは、株主の有限責任から来ています。

この例では、企業の資産が120の時までは株主の取り分はゼロですが、その後、株主は企業の資産の増加分のすべてを手にする事になります。 

こう考えてみると、株式は、企業の資産を原資産として、負債の額面を行使価格とするコールオプションという事ができます。 逆に、負債は、プットオプションですね。 
なので、両資産ともに、オプションの価格付けのロジックでプライシングができるわけです。 そうすれば、企業価値=オプションの価値として算定された株式と負債の価値の合計値、となります。


少しずつ、連続時間モデルのコーポレートファイナンスの理論が発展してきていますが、まだ発展途上段階にあり、これから、色々な研究が花開いていくのかもしれません。


以上です。 受講生の皆様、お疲れ様でした。 テストがんばってください! 


(Iさんからリクエストいただいた、SDFを用いたMM命題の証明を、Appendixとして書きますが、少々お待ちください。)





Comment
≪この記事へのコメント≫
初めまして、偶然このブログにたどり着きました。
ざっと内容を見てみたのですが理論的な思考をなさっているようですね、馬鹿な自分にとってはうらやましい限りです。
リアリストは個人的には好きではないのですが、ちょっと思うところもあるので色々と内容を読ませていただきます。
今回の内容と関係なくて申し訳ありません。
2008/07/17(木) 00:31:58 | URL | さぶ #-[ 編集]
はじめまして。
色々と読んでくださったらわかるように、実はあまりリアリストなわけでもありません。。 

これからもどうぞよろしくお願いします。
2008/07/17(木) 02:46:13 | URL | Taejun #-[ 編集]
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