Taejunomics

            政治、経済、社会、哲学、芸術、文学、スポーツ、マイクロファイナンス、教育などなど、徒然なるままに書き綴ります。 ※お初の方はカテゴリー欄の「Taejunomicsについて」、をご覧ください。
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--/--/--(--) --:--:-- | スポンサー広告 | Trackback(-) | Comment(-)
よい子にならないと仲間に入れてあげないよ。
ユーゴスラビアの崩壊後、92年から95年にかけて生じていたボスニア戦争の時期に、数千人の虐殺を指示したとして、当時のセルビア人勢力指導者であった、Karadzic氏が逮捕されました。 (写真右は90年代のもので、左は最近のもの) 彼はその後、ハーグの国際戦犯法廷にて裁かれることになります。

beforeafter.jpg
(彼は偽名を名乗り、教師として薬学やキリスト正教の精神論、瞑想の仕方などを教えていたそうです。同一人物には見えません。。)

この逮捕は、決して偶然のうちに起こったことではなく、セルビアのユーロ加盟への意欲を示すためのものだったと言われてもいます。 EUは、Karadzic氏の逮捕前に、セルビアに対して「安定と協力の合意書(stabilisation and association agreement, SAA)」を発行しました。このSAAは、ユーロ加盟への第一歩とも言われています。 また、SAAは、上で述べた国際戦犯法廷の取組みに協力的な国に対してのみ付与されるもので、セルビアが過去の内戦時代の犯罪者たちを摘発しないのであれば、SAAは凍結されると考えられていました。 


このような事情を背景として、Karadzic氏は逮捕されたわけですが、ここから学ぶことは多いのかもしれません。


第一に、経済発展のための民主化インセンティヴの刺激。
極論すると、今回の逮捕の背景には、「よい子にならないと仲間に入れてあげないよ~」という事情があったわけです。 セルビアの場合は、それが、まだ完全ではないにしろ(ちなみに、Karadzic氏の逮捕に直面し、セルビア人国粋主義者一万人が抗議に殺到したそうです)、経済成長を志向する国の民主化を進めるための一つの処方箋を示したのかもしれません。

このような、経済発展を動機づけとして民主化を促す仕組みのことを、「よい子スキーム」と呼びましょう。

インセンティヴの問題として考えると、この「よい子スキーム」においては、

逮捕によってユーロ加盟確率が上昇する事による便益 > 逮捕しない事から得られる便益(逮捕のコスト)

が成立してこそ、経済発展と民主化の両立へ国が動き出すことになります。 こんな簡単な不等式からでも分かることは、次のような場合は、「よい子スキーム」は効果的でないという事です:

 ①ユーロに加盟することと経済発展との関連性が低い場合
 ②逮捕をしてもユーロ加盟の可能性が大して上昇しないと看做されている場合
 ③国内の政情がいまだに極右である場合
 ④自国が民主化を成し遂げた事を示すのが難しい場合(たとえば、Karadzic氏が行方不明で、他の主だった人間もどこにいるか分からない場合など)

 よって、「よい子スキーム」は、時と場合を選ぶといえるでしょう。 



第二に、内政干渉の問題。
一連の出来事は、間接的な内政干渉と言う事ができるかもしれません。 スマートなやり方であるとはいえますが、他者が自らの力を間接的にであれ行使して、他国のあり方を変えるというのは、問題があるのかもしれません。 本来、ある国の問題は、その国民が自力で解決するべきものであって、他国からの干渉は、可能であれば避けるべき問題なのかもしれません。


最後に、「よい子」の定義の微妙さ。
僕の大学時代の刑法の先生は戦争犯罪について詳しく、このハーグの国際戦犯法廷の活動に参画していたのですが、その先生が取り組んでいたことがあります。 

それは、「ブッシュ大統領を逮捕してハーグに連れてくること」。 

多くの人は、そんなことが出来ない事はわかっています。 ですが、僕たちは、そもそもの戦争犯罪の定義がかなり微妙であることを、このことから理解するべきなのかもしれません。 もちろん、8,000人の虐殺の指導者は裁かれるべきだと思います。 しかし、他方で、もちろん間接的にであれ、より多くの死者を出すような指令を出している人々が、裁かれていないという事実については、盲目であってはならないと思います。

ちょっと前に、Tirole勉強会で飲んでいたのですが、そこで、『最近皆が良く言う「いい子」というのは、「(大人にとって都合の)いい子」のことだ』なんという話になりました。 そのことを少し思いだしました。大人が変になってしまった社会においては、「いい子」が本当に「良い」子なのか、わかりませんものね。



Comment
≪この記事へのコメント≫
「EUにとっていい子にならないと…」
2008/08/07(木) 13:53:45 | URL | 三浦介 #-[ 編集]
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
Secret: 管理者にだけ表示を許可する
 
Trackback
この記事のトラックバックURL
≪この記事へのトラックバック≫
Designed by aykm.
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。