Taejunomics

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戦後日本経済史。
来期も野口先生のチューターをします。
(なので、秋にファイナンスの基礎を受講する皆様、どうぞよろしくお願いします。)
そんな野口先生の本で、だいぶ前から読もうと思っていたこの本、休暇を使って読みました。

戦後日本経済史 (新潮選書)戦後日本経済史 (新潮選書)
(2008/01)
野口 悠紀雄

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よく、戦時・戦後の断絶が日本の問題の一つだと言われていますが、野口先生はそれとは正反対の主張をしています。それは、戦時と戦後はつながっていて、戦後の日本経済は戦時期に確立された経済制度の上に成立しており、日本経済のこれまでの発展と現在の行き詰まりの要因となっている、というものです。正直、僕は日本のシステムは戦時と戦後で断絶している、と何の根拠もなしに考えていたので、さまざまな証拠に裏付けられた先生の主張からは学ぶことが多かったです。

断絶はむしろ、戦前と戦時の間にあるようでうす。戦前の日本は間接金融よりも直接金融方式の経済システムを採用していて、株主が企業に対し強い影響力を持っていたそうです。それが、戦時経済においてはイノベーションよりも規律が重んじられ、規律と親和性の高い間接金融の重要性が高まり、日本の経済は一気に間接金融に傾斜することになります。農地解放、財閥解体、癪借家法は、戦時経済の中で形成・準備されてきたものでした。その意味で、戦後日本の社会構造を作ったのは戦時体制であると野口先生は説きます。


本書によると、戦争直後、軍需省はまたたくまに商工省(現在の経産省)と名を変え占領後も残ることになりました。大蔵省もまたしかり。財閥も解体はされたものの、財閥系の企業は残り、支配的な立場を保ち続けてきました(戦後の日本の大企業といったらソニーとホンダくらいのものだそうです)。そして、銀行が支配的な地位を占めるという間接金融の仕組みも戦時そのままのものです。それ以外にもメディア、教育制度、土地制度、全てが戦時のものを引き継いでいるそうです。

野口先生は、占領経済改革が不徹底だった理由は、GHQ内の派閥対立と東西冷戦の激化(よって経済に打撃を与えずに日本を早急に対共産主義の防衛基地にする必要があった)のみならず、GHQの人々が日本について極めて浅薄な理解しか持ち合わせていなかった事にあると指摘しています(ドイツの場合は多くのユダヤ人が占領軍に情報を提供したのに対し、日本の場合、そのような人間も少なかった)。また、官僚もその「三大得意芸(最高権力者に対する面従腹背、都合の悪い情報は一切出さない情報操作、自分たちが必要であるとの最大限アピール)」をいかんなく発揮して占領軍の目を曇らせる事に成功したとも先生は指摘します。

戦後の日本経済は、高度成長を成し遂げます。その原動力となったのは、家計貯蓄をスムーズに財政投融資・企業投資につなげられる郵貯と間接金融の仕組み、租税特別措置、解体されることなく力を持ち続けた財閥系の企業の存在、企業と官庁の関係が維持されたことによる天下り先の確保と、それによる官僚機構の若さの維持などがが挙げられます。これらの多くは、日本の経済システムが戦前のものを引き継いでいるからこそのものでした。「世界で最も効率的な社会主義経済」として、中央集権的な日本経済は成長を進めます。

その後のオイルショックも、それからの立ち直りも、そして、バブルも、現在日本経済が行き詰まりに至っていることも、この戦時中の経済システムが現在にも引き継がれている事に由来していると先生は喝破します。現代の行き詰まりは、情報技術が発達した現代においては、地方分権的なシステム作りが最適なのに対し、日本の経済システムが中央集権的であるという事に一因があると本書では書かれています。


読みながら、感じた点を2点。

現地にもともとある指導機構をそっくりそのまま残し、占領政策のコストを低減するというのはアメリカの一貫した統治スタイルで(韓国もそうですし、最近で言えばイラクもそう)、もしGHQが日本について正確な知識を持っていたとしても、結果は同じだったのかもしれません。

それと、「日本の経済システムが戦前のものを戦後も引き継いでいる」、という命題が正であるのであれば、戦後の様々な経済の出来事や行き詰まりが戦前のシステムに由来している、というのは、当然と言えるのかもしれません。世の中の多くの出来事は、構造的な問題に由来するのですから。



歴史は偶然の産物か必然の産物か、という点について先生はかなりの分量を割いているのですが、先生が自らの立場としてどう考えるか、という点についてはいまいちクリアでないので、今度聞いてみようと思います。 多少なりとも歴史の偶然はあるとはいえ、多くの歴史的な出来事は、システマティックな要因に由来していると僕は考えます。

とても内容が濃く、1200円の価格に比べ、非常に価値のある本だと感じました。日本の経済史を考える上で、非常に貴重な書籍だと思います。
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2008/09/04(木) 23:13:57 | | #[ 編集]
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