Taejunomics

            政治、経済、社会、哲学、芸術、文学、スポーツ、マイクロファイナンス、教育などなど、徒然なるままに書き綴ります。 ※お初の方はカテゴリー欄の「Taejunomicsについて」、をご覧ください。
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--/--/--(--) --:--:-- | スポンサー広告 | Trackback(-) | Comment(-)
格差と希望。
格差と希望―誰が損をしているか?格差と希望―誰が損をしているか?
(2008/06)
大竹 文雄

この本では、格差の実情や、格差をなくすための適切な処方箋について、著者の考察が述べられています。格差という言葉が流行語になりつつありますが、それが具体的にはどういうことなのかについて、曖昧模糊としたイメージしかもっていない人が多いかもしれません。僕もそうなのですが。

以下、簡単なまとめです。

1.日本の格差の実情
2.格差をなくすための処方箋


1.日本の格差の実情

日本では、所得の格差は傾向的に増大してきています。ただしこれは近年に急激になったものではなく、80年前後からなだらかに増大しているものです。この傾向的な格差の増大の理由の一つは、人口の高齢化にあります。もう一つは、若年層における失業やフリーターの増加にあります。

日本においては、必要以上に格差が拡大していると感じられているそうです。その理由につき、著者は以下のものを考えています。
・将来における格差拡大予想
・デフレおよび低成長の影響
・若年失業やフリーターの存在
・成果主義的賃金の導入
・所得階層間の移動の低下
・累進税制の緩和
・情報のゆがみ(格差が過剰に報道される)

日本の格差は、主に中位と下位の間で拡大しています。この拡大は、低所得層の所得低下によって引き起こされており、ここに日本の格差の特徴があります。この原因を明らかにすることは重要です。原因をきちんと分析してこそ、適切な政策を考えることが可能になるからです。


2.格差をなくすための処方箋

経済学を学んでいる人にはよくわかることかもしれませんが、格差をなくすために、政府が企業の雇用慣行に対して規制することは、かえって逆効果になりえます(ちょっと前に紹介した「資本主義と自由」と同じロジックです)。たとえば、最低賃金を高めると、企業は新規雇用を減らそうとするでしょう。

重要なことは、雇用が人々の生産性に応じてスムーズにされる社会の仕組みを作ることにあります。そうすれば、一度職を失っても、それが人生の終わりにつながらなくなり、格差が固定化しにくくなります。

もうひとつ大切なことは、教育です。教育水準は、賃金と明らかな相関を示していますが、これは、生産性と賃金には関係があるためです。上で述べたようなスムーズな雇用システムを作るとしても、受ける教育の水準が高くならない限り、問題は解決しません。

ただし、教育のコストが非常に高いと、人々は教育を低水準に抑え、将来の低賃金を甘んじるという意思決定をしやすくなり、これは格差を固定化する結果をもたらします。なので、こういう意思決定がされないように、政府が教育を支援することにより、教育のコストを下げ、親が子供を教育させようとするインセンティヴを刺激することが重要になります。
この方策は、公平性に資するのみならず、経済全体の生産性を高めるものでもあります。著者が引用しているように、「恵まれない境遇にいる子どもたちへの教育投資は、公平性と効率性を同時に促進するという、まれな公共政策」なのです。

しかし、社会が高齢化するほど、その社会が教育のために投じる支出は少なくなる傾向にあり、それが日本の状況を難しくしている感があります。高齢化社会で多数決をすると、教育に対する支出案は負けやすいのです、だって、多くのお年寄りには関係のないことですから。問題の解決のためには、政府の強力なリーダーシップが重要ですが、近年において政治が迎合主義に陥りつつあることは、不安材料になっています。


少し意見を言うとすれば、以下の2点。

・事実ベースで非常に多くの学びがある本ではありましたが、どうしても、雑誌の記事の切り貼りの感を否めず、統一的な言説というよりは、ランダム・トークの感を受けざるを得ませんでした。

・接続詞が比較的少ないので、文章の構成を読むのに少し手間取りました。特に、事実や他の人々の意見を取り上げる際の接続詞が少ない感じを受けました。このことから、その引用が全体の主張においてどういう位置づけにあるのか、その引用に対して筆者はどのように考えているのか、という点が不明瞭になっているきらいがあります。




経済開発の勉強会で、海外のこともそうですが、国内の問題に目を向けることがすごく大切だと感じている今日この頃です。勉強会でも、国内で自分たちがどういうアクションをしていけるか、について話し合ってもいます。


Comment
≪この記事へのコメント≫
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
Secret: 管理者にだけ表示を許可する
 
Trackback
この記事のトラックバックURL
≪この記事へのトラックバック≫
Designed by aykm.
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。