Taejunomics

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ファイナンス理論からの10のメッセージ10:オプション価格理論
足かけ数年になってしまったこのシリーズも最終回。

選択権、という変わった商品の値段付けが、ファイナンス理論を大きく発展させました。最後は、オプションとその価格付けについての紹介です。

1.オプションとは
2.オプションの名称と、そこに見られる文化的偏見
3.オプションの価格付けが難しい理由
4.オプションの価格付け理論がもたらした、ファイナンス理論の発展



1.オプションとは

オプションという英語の意味の一つとして、選択権というものがあります。あるものを、ある値段で買う・売る選択権を、オプションといいます。


たとえば、チューリップの球根を1年後に100円で買うオプションがあるとしましょう。

ここで、もし1年後のチューリップの球根の値段が200円になっていたら、あなたはオプションを行使して球根を100円で買い、それを200円で売ることにより、100円の利益を得ることができます。

逆に、球根の値段が50円より低かったら、あなたはこのオプションを行使しないでしょう。よって、追加的に利益も損失も発生しません。

これを踏まえると、球根を100円で購入するオプションから得られるお金(ペイオフ)は、こうなります。
無題


普通に球根を買う場合より、オプションを買った場合の方が、余計な損失をしないですみます。よって、このオプションはただでは買うことができません。オプションの価格のことを、オプションプレミアム、といいます。




2.オプションの名称と、そこに見られる文化的偏見

さっきの球根のオプションの例で説明しましょう。
原資産(Underlying Asset)とは、そのオプション契約の元となる資産で、この場合は、チューリップの球根です。行使価格(Strike
Price, Exercise Price)とは、オプション契約により取引するときの価格で、上の例で言うと、100円になります。
この行使価格と、実際の価格の差を、ペイオフと言います。

買う権利はコールオプションと呼ばれ、売る権利はプットオプションと呼ばれます。

権利行使のタイミングが一時点に定められているオプションをヨーロピアン・オプション、常に権利行使できるオプションをアメリカン・オプションと呼ばれています。また、満期以前の原資産価格の平均値によってオプションのペイオフが決まるようなオプションを、アジアンオプションと言います。
こういうステレオタイプのにおいがするものについて敏感な僕は、この命名者たちが何を考えていたのか、ついつい考えてしまいます。




3.オプションの価格付けが難しい理由

オプションの価格付け、これが意外と難問です。

第三回で説明したように、ファイナンス理論においては、あるものの価値は、それがもたらしてくれるキャッシュフローを、何らかの形で割引くことによって得られます。

ですが、この割引きの際の割引率をどうするか、が問題なのです。

経済学的に合理的な形で割引率を求めるには、その資産が何らかの形の確率分布に従っていることが望ましいのです。たとえば、第6回で紹介したCAPMは、資産価格の収益率の分布が正規分布(もしくはそれに類する分布)に従っていることに前提を置いています。(もしくは効用関数が二次関数、というのが条件なのですが、これはあまりにも非現実的なので)

もし資産の収益の確率分布が正規分布やそれに準じるような分布でない場合、割引率の計算は非常に大変なことになります。オプションの場合、買い手の選択権が存在するため、ペイオフの分布はゆがんだ形になり、とても正規分布と呼べるようなものにはなりません。


じゃあ、どうすればいいのでしょうか。



4.オプションの価格付け理論がもたらした、ファイナンス理論の発展

この難問であるオプションの価値を求めるためには、三つつの方法があります。


一つ目は、実際に市場で売られている資産を組み合わせて、オプションと同じようなキャッシュフローをもたらす資産を複製することにあります。たとえば、あるオプションが、A社の株式1000万円とZ国の国債500万円と全く同じキャッシュフローをもたらすのであれば、そのオプションの値段は1500万円となるでしょう。


二つ目は、同様にオプションと株式を組み合わせて、リスクが全くない資産を作り、そのキャッシュフローを安全利子率で割引く方法です。市場において裁定機会(これは第7回参照)がないのなら、この資産の割引率は、安全資産の割引率、すなわち安全利子率に等しくなるはずです。

理論的には同値ですが、実際の確率に少し細工をして、あたかもある資産から得られるキャッシュフローの期待値が安全資産のそれに等しくなるようにして、そのキャッシュフローの期待値を安全利子率で割引くこともできます。

この方法は、偉大な学者たちである、フィッシャー・ブラック、マイロン・ショールズ、ロバート・マートンらによって行われた方法です。



そして三つ目は、世の中の各状態に対して存在する割引率を一つ一つもとめ、

ある状態の発生確率×そのときのキャッシュフロー÷(1+その状態の割引率)

を、全ての状態について足し合わせることによって得る、というものです。

例えば、
将来の世の中の状態にA、B、Cがあって、
その発生確率は50%、30%、20%、
各状態で得られるペイオフは230円、330円、240円として、
それぞれの状態の割引率を15%, 10%, 20%としましょう。

なら、この資産の価値は、
A : 50%×230÷(1+15%)=100
B : 30%×330÷(1+10%)=90
C : 20%×240÷(1+20%)=40

A+B+C=230になります。

この、それぞれの場合において割引計算をするときに用いた、
1/(1+15%)、1/(1+10%)、(1+20%)らを、確率的割引ファクター(SDF)、もしくはプライシングカーネルと呼びます。確率的割引ファクターは、世の中の状態によって異なり、SDFが大きいほど、世の中は悲惨な状況であることを示しています(SDFが大きい、というのは割引率が小さい、ということです)。

現代のファイナンス理論は、このSDFを用いて、全ての価格理論を体系化することに成功しています。
この確率的割引ファクターを用いると、CAPMも、APTも、ブラック・ショールズ・マートンのオプション価格計算式も、統一的に理解することが可能になるのです。

SDFの概念は、ブラックらの業績に多くを依っています。ある特殊な金融商品の価格付けが、理論体系を大きく発展させることになったわけですが、天才フォン・ノイマンも話しているように、多くの場合、理論の発展は、あるニッチな分野において得られた知見が、より一般的な形で適用されるときに起こるのでしょう。


まだまだSDFを用いた価格付けにも大きな問題があり、実証として解明できていない問題はたくさんあります。これら謎が残っている分、まだまだファイナンス理論は僕の知的好奇心を満たしてくれそうです。


長い間お付き合いくださり、有難うございました!





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初めての米国市場のオプション取引なのだが、やはり実際にやってみないと、わからないこともあるので、それを書いてみようと思う。 私は扱い慣れたEuropean Cash SettleのS&P500 Index Options、Index Point×100倍(CBOE上場)を取引している。 http://www.cboe.com/Products/indexopts/spx_spec.aspx ...
2013/10/11(金) 21:12:57 | 投資一族のブログ
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