Taejunomics

            政治、経済、社会、哲学、芸術、文学、スポーツ、マイクロファイナンス、教育などなど、徒然なるままに書き綴ります。 ※お初の方はカテゴリー欄の「Taejunomicsについて」、をご覧ください。
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カブドットコム証券調査報告書のはてな
磯崎さんのブログで知ったのですが、このカブドットコム証券のインサイダー取引に対する特別調査委員会の報告書にめまいがしたので、ちょっと書いておきます。

僕はこの類の報告書というのはあまり読んだことがないのですが、これは報告書、というよりは、弾劾文と言った方が適切な感を受けます。 その理由は主に二つ。


1.事実ベースでない記述の多さ
特に背景事情の記述において、事実ベースの議論が希薄です。 たとえば20ページのこの記述。

一言で言えば、社長は部下を信じきれずにいた。そのため、社長は社内(時にはアフター・ファイブ)の出来事を全て掌握したいという思いが強く、これがメール文化を生み出し、ひいては管理される役職員の側にも、社長の顔色や社長の評価を気にする風潮をもたらしていた。時折、社長は、他の役職員の面前であからさまに役職員をしかりつけたり、アフター・ファイブにおける同僚との行動を承知していることを匂わせたりすることによって、やや過剰に役職員を精神的にコントロールしていたが、このことは、メール文化と相まって、疑心暗鬼に陥る役職員を生み出していた。



この文に事実として立証可能な情報はほとんど存在しません。また、報告の他の部分で、この情報が事実であることをサポートしているわけでもありません。

小説なら別によいのですが、調査報告書というのは、事実ベースでロジカルに導きだせる結論を述べたり、事実からかなり高い蓋然性を持って推測できるものについて、「~という可能性がある」という程度の書き口で述べるものなのではないでしょうか。

一つ一つの主張の論理の飛躍にも、理解できない点がたくさんあります。たとえば、

社長が社内の出来事すべてを掌握したいと思っていた→その思いがメール文化を生み出した

というのは、少し理解ができません。


もしかしたら、調査委員会の人々だけが知っている情報があり、それに基づいて書いているのかもしれません。しかし、もしそうだとすれば、その、主張を根拠づける情報を可能な限り記載するのが、報告書の果たすべき役割なのだと思います。




2.分析手法の水準の低さ

二つあります。

①比較が行われていないこと

ガバナンスが完全に行き届いている会社が世の中にどれくらいあるのか分かりませんが、ある会社のガバナンスの問題点を指摘するためには、そのガバナンスの水準を示す数値や指標について、同業種の他社と比較をする必要があると思います。

たとえば、人の体を検査してがん細胞が見つかったとしましょう。だからといって、その人が非常に危険な状態にあるとはいえません。なぜなら、がん細胞は多くの人に普通に存在するものだからです。重要なことは、それが重大な人命の危険を及ぼす水準かどうかを判断することにあり、そのためには、他者との比較が重要となります。

しかし、この報告書の各種調査結果は、比較というポイントはほとんど見受けられず、ミスリーディングな結論や印象を与える可能性があります。


②調査手法の設計がバイアスを生み出しうること

添付資料には、実際に用いられたアンケートがあります。そのQ1には次のようにあります。

Q1)今回の元職員のインサイダー取引事件の原因は、元職員個人の問題に尽きると思いますか、それとも、それにとどまらず当社の組織としての問題もあったと思いますか。
 
 □ ①元職員個人の問題に尽きると思う
 □ ②当社の組織としての問題もあると思う



全ての問題の原因を、完全に個人に帰せられるなんということはあまり無いわけで、ほとんどの場合責任の程度にはグラデーションがあります。 しかし、この選択肢は、①がグラデーションの極端な点のみを占める回答なのに対し、②がそれ以外のグラデーションの部分をすべてカバーしている回答となっています。

何か問題が生じた時に、このような二者択一を突きつけられたら、少なくない人が②を選択するように思います。 そんな選択肢を突きつけられたにもかかわらず、①と回答した人が全体の3割を占めるというのは、かなり高いと言えるのかもしれません。(個人的には、ですが)

もちろん会社は重大事件が起こらないように、十分に注意をする必要があるとは思います。


弾劾文を書くためのアンケートであればこれでも良いのかもしれませんが、もし本当に真相の究明をするのなら、もう少し違うやり方があるような気がします。 


全体的に、色々と疑問の多い調査報告書でした。

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