Taejunomics

            政治、経済、社会、哲学、芸術、文学、スポーツ、マイクロファイナンス、教育などなど、徒然なるままに書き綴ります。 ※お初の方はカテゴリー欄の「Taejunomicsについて」、をご覧ください。
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児童養護施設訪問録
Living in Peaceの教育プロジェクトは地道に進行中で、今日はある養護施設に行ってきました。そこで学んだこと、感じたことを書き留めておこうと思います。

1.児童養護施設の変遷
2.今回訪問した養護施設について
3.子供たちの生活
4.財政と人員不足
5.出所後の子供たちの生活の苦しさ
6.自分たちができること



1.児童養護施設の変遷

児童養護施設の役割は時代とともに変遷してきた。昭和中期までは戦災孤児を養うのが主要な目的だった。昭和後期において自立に対する取組がとくに強調されるようになり、高校進学などが主な課題となるように。

平成に入ると児童虐待防止法も導入され、児童養護施設の役割は家庭内で虐待を受けた子供の内面と付き合うことになってきた。心理療法担当職員が6年前から入るようになり、最近では、家庭支援専門相談員も入るようになった。 

施設に対する全国的なガイドラインは非常にベーシックなもの。施設ごとにレベル感はまちまち。注力している分野も異なる。

日本全国の施設(570)全体のキャパシティが3万人なのに対し、虐待につての報告は全体で8万件(報告ベースなので実数はさらに多いと思われる)。結果的に、虐待の中でも重度のケースの子供が入ってくることが多い。 



2.今回訪問した養護施設について

この施設には、東京都に住む子供たちが来ている。財政的にも東京都の管轄下にある。東京都の子供が東京都の外にある施設に来るようになった背景には、地方の施設に入る子供の数が相対的に少なくなったのに対し、都市部では逆のことが起こっていることがある。

この施設の目的と使命は三つ。
①個人の意志の尊重
②社会的自立に向けた発達の援助
③養護の継続と自立支援

②について、職業指導ボランティアを行っている。子供が自立するための職業訓練等を行う人たちが多い。

この養護施設の子供のうち7割が、何らかの虐待を受けて育っている。身体的暴力(50%)、ネグレクト(40%)、性的虐待などがその内容。 日本全体として今一番増えているのがネグレクト。 これらは連鎖する。 暴力を受けて育ったこどもの3割は、大人になって子供に暴力を振るうようになるといわれている。



3.子供たちの生活

スケジュールに従って子供たちは行動する。このスケジュールは生活日課とは呼ばず、生活時間と呼んでいる。自由時間には、遊びにいく子供が多い。高校生には、アルバイトをすることを積極的に呼び掛けている。アルバイトを通じて職場体験すると同時に、この養護施設を出る前の貯蓄を促すため。(18歳を超えると、この施設を出ていかないといかない) 

入ってくる子供ごとに色合いが違うので、事前に心理テストをして、子供別にどういうアドバイスをすればいいか考えるようにしている。全体的に子供のためを考えて、可能なかぎり細かい気配りを出来るようにしている。

より少人数で、家庭と似たような感じで育てることを考えている。 なので、部屋には普通の家にあるように冷蔵庫、調理器具を準備している。 でないと、家庭を作るときに、大変な苦労をする。 たとえば、大食堂でしか食事をした経験がないと、普通の家庭の食卓での食事がどういうものか分からない。 家庭を知らない人が、結婚して家庭を作る、というのは大変なこと。

子供の入所の経緯のために、学校でトラブルが起こりやすい。暴力や盗みなど。そういうことを事前に見越して、養護施設としても学校にあらかじめ連絡をするようにしてみる。




4.財政と人員不足

子供一人に対し、年間150万円の措置費があるが、これは先進国では相対的に低い。たとえばイギリスでは1000万円相当が充てられている。これは、養護施設に通う子供たちが引け目を感じたりせず、大切にされているという感を持てるように(これが人格形成には非常に重要)、との趣旨からである。

児童養護施設の財政状況は非常に厳しい。職員の人件費については、学童(小学生以上)に対しては6人に1人、小学生未満4歳以上なら4人に一人、3歳以下なら2人に1人分として計算された分しか出ない。その比率で職員を雇うと、職員一人の負担が非常に大きくなる。行政が進学保証をしてくれれば、より可能性が広がる可能性がある。習い事の支援もできない。

夢を語るのが職員の仕事だが、この負担状況の中ではそれも難しい(一緒に生活をしている親が、なかなか子供に頻繁に夢を語るのが難しいのと似ているのかもしれない)。 なので、夢を語る、何か新しい視点を開く、という点については、外部の人が来てくれるととても助かる。



5.出所後の子供たちの生活の苦しさ

退所する子供は、家庭に戻ったり、自分で仕事をしはじめる。子供たちも生きるのに精一杯。20万円が卒施設時にもらえるが、それじゃ足りない。中卒・高卒が多く、生活水準は非常に苦しい。

中学生以上の子供は、政府のお金で塾に通うことができるにもかかわらず、大学に通う子供は全体の2,3割。大学進学するケースのほとんどは、親が学費を出してくれる場合。

子供達には、自分自身を否定的にとらえてしまい、諦めがちになってしまう心理的傾向がある。それが高校中退をしてしまう大きな理由の一つ。強い内面を育てるのが施設の課題。成功体験の積み重ねが重要だと考え、子供が何かできたときに積極的に褒めるように心がけている。

多くの感情の土台となるものに愛着がある。それが土台となって、さびしい、悲しい、などの感情が発達していく。施設に来る子供たちの中には、愛着という感情が足りない場合が多い。感情がゆがんでしまったり、諦めがちになってしまう。

子供たちが変わるためには、最低その育った環境と同じくらいの年月が必要。最初入ってくるときは緊張しているので「いい子」でいる場合が多いが、少し経つと地が出てくる。なので、事前にアセスメントをしていくことにより、子供たちの間での問題を少し下げることができる。




6.自分たちができること

一度関わったからには、これからも継続的に活動をしていこうと思い、約束をして帰ってきました。ちょうど自分が書いた本があるので、それを用いて子供たちに生きるために必要なファイナンス理論的な知恵を伝えようと思っています。何回かのセッションに分けて伝えていこうと考えています。

園の職員の人たちが話していたのは、きっかけ作り。子供たちが興味を持って熱中できることを見つけ、同時に人と人とのつながりを実感することができ、何かを成し遂げる成功体験を勝ち取っていくことができるのなら、それは生きる力につながります。きっかけを作るためのマッチングのシステムを全国に作っていくのは、一つの方向性なのかもしれないと感じました。

ただ、こういうミクロの問題も重要ですが、全国に3万人の子供がいる児童養護施設の現状は、システマティックな問題という側面があり、制度的な解決が達成されるための土台作りが非常に重要だと感じました。僕たちが何を出来るのか、すればよいのか、まだ見極められていませんが、日本においてほとんど注目をされていないこの問題について、より多くの人に認知してもらう活動は非常に重要だと感じています。

教育プロジェクトも、少し前に進んできた気がします。 これから、自分たちが何をすれば一番価値のある仕事ができるのか、これから地道に児童養護施設に通いながら、勉強しながら、考えていこうと思います。

貴重なきっかけをくださった、後藤さん、堀さん、そして職員のみなさん、有難うございました。



Comment
≪この記事へのコメント≫
初めまして。
いつもブログを拝見しております。

私も児童擁護施設に関しては深くコミットしたいと考えていたのでコメントさせて頂きます。気になった点としては、国に頼る施設ではないと運営はできないのか?ということです。資金不足、人員不足という現状では新しい事をしようにもできない。現状維持ですら厳しい。つまり、国以外から資金を調達できないかと。

そこで、社会起業というものが流布してますが、ビジネスモデルを組み入れることはできないのでしょうか。お金があれば本質である退所後の自立へ直結するとは思いませんが、可能性は高まると思います。このブログでも仰ってる外部からの教育などを子どもたちに提供することもできる。もし、ある程度仕組みができれば、起業も視野に入る。などなど

ということを、この記事を読みながら考えていたのですが、無知なため、もしかすると実行してるところもあるかもしれませんが、是非、慎さんの意見やアイディアが聞けたらと思います。
2009/10/08(木) 23:03:09 | URL | you #-[ 編集]
youさん

コメント有難うございます。
マイクロファイナンスと同じような要領で、ビジネスベースで何とかできるかな、と思ったのですが、難しい気がします。

相手が大人なら、多くの場合自分の力で自分の人生を切り開くことができるし、その労働力をお金に換えることもできると思うのですが、子供にはそういう提供できる価値があまり無いと思うんですよね。。 もしビジネスベースでやっていくと、子供が見世物になってしまうような感じもして。。

ちなみに、宗教系の施設は、結構資金的に余裕があるみたいです。









2009/10/10(土) 19:36:03 | URL | Taejun #-[ 編集]
Taejunさん

お返事有難う御座います。
仰る通り、ビジネスとなると子供をという考えになり、本人にしては社会経験にもなるかもしれませんが、「見世物」になる気が僕もします。できれば避けたい方法です。

やはり間接的にビジネスモデルを形成するか、子供が見世物にならない工夫をするか、ともあれ、考え続けたいと思います。

それと、宗教系の施設は資金的に余裕があるということですが、知りませんでした。その辺りも視野に入れて拡大できるビジネスモデルを模索したいと思います。

貴重なご意見有難うございました。

あ、余談ですが、このブログで知った山口絵里子さんに会ってきました。慎さんが前に書いていた通り、スタッフのモチベが高かったですね。人を巻き込む力がある人として参考にしたい方です。
2009/10/10(土) 23:02:28 | URL | you #-[ 編集]
Re: タイトルなし
youさん

私もまだ考え中なので、自分の結論に確信を持っているわけではないのですが、現時点では、なかなか難しいのではないかな、と考えている次第です。 これは、貧困についての考えでもおんなじなのですが、まず無償の援助が必要な人たちというのは存在していて、重要なのはその援助をする際に相手の自立心を損なわないことなのだと思います。
これからもよろしくお願いします!
2009/10/11(日) 11:03:21 | URL | Taejun #ZMelWszU[ 編集]
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