Taejunomics

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歴史哲学講義―2/2
(つづき。ちなみにこの記事は、先週末にストックしておいたものです。)

2.3.自由の実現体たる国家

世界史とは、ヘーゲルによれば、有限である認識しか持ちえない人間と、絶対的なものである一般理念との、無限なつながりによって構築されているものです。

限界を有する人間がもつ自己意識と、絶対的な一般理念の間の統一が国家です。この統一にこそ、共同体の真理が存在するとヘーゲルは考えました。

国家に存在するさまざまな規範や制度は、人々の有している共通精神を体現します。個々人は自らの認識の限界上、自らに存する共通精神を自己の中で認識することができませんが、国家を通じてそれを認識できるようになるとヘーゲルは考えました。「精神の現実性とは、人間の本質である理性的なものを対象として知ることであり、理性的なものが、客観的な、形のある存在として目の前にあることです。そのときはじめて人間は共同体を意識し、人とつながり、法と道徳にかなった国家生活を送ることになります。」

個人は共通精神の体現者である国家を通じて自由を所有し享受することになるのであり、国家は神の理念が地上に姿を現したものだとヘーゲルは考えたようです。だからと言って、彼が国家に対して無条件の称賛をしているわけではないようです。本書では、次のようなヘーゲルの言葉を見ることができます。

「個人や国家や世界支配の欠点を見つけることは、その真の内実を認識することよりも簡単です。」

これは組織や国家の性格を考える上で非常に重要な視点だと思います。組織は何らかの形で個人の権利を侵害する場合があります。これは非常に深刻な問題であり、解決をするべきものです。しかし、だからといって、組織の存在の意義や理念が存しないとは決して言えないのだと思います。



3.世界史の歩み

ここまで述べてきたように、ヘーゲルは世界の歩みを精神の自己克服の過程であると考えました。この克服は、自己否定を繰り返すものです。 自分を対象化し、自分のありかたを思考する精神が、一方で自分の限定されたありかたを破壊するとともに、他方で、精神の一般理念をとらえ、その原理に新たな定義を与えること、それが歴史の発展の過程です。

その段階として、最初には、自然のままに埋没した状態の精神があり、それが徐々に自由を限定的な形で認識し、ついには、普遍的な意味での自由を認識するに至ります。

本書は、このヘーゲルの歴史認識に基づき、精神の少年期である東洋、青年期であるギリシャ、壮年期であるローマ、老年期であるゲルマンと分けて記述を展開していきます。 

このあたりの記述においては、サイードの言うところの「オリエンタリズム」がかなり前面に出ている感があります。ヘーゲルは本書において、人間は時代を超えることができないと説いていますが、まさに本人がそれを示す形となっています。ヘーゲルほどの天才でさえこうなのですから、ある過去の人物を現代におけるものさしを用いて断ずることは、いかに容易なことでしょうか。



感想

国家の一部の側面をとりあげてそれを批判するのは簡単だとヘーゲルが話したように、そこに内在するオリエンタリズムを理由に本書を批判するのは容易です。しかし、本書から得られる洞察は非常に重要だと思います。

僕が本書から学んだ一番のことは、時代精神を意識するということです。 ある時代にはその根底を流れる精神が存在し、それは決して過去と断絶されているものではなく、自己否定を繰り返しながら連続しているものです。 ちょっとした出来事などでは変わらない時代の魂である時代精神について考え、そこから得られた知見に基づいてさまざまな事象に対する考察を行うことは、世相を理解するにおいて非常に重要なことであると改めて思いました。 

さらにヘーゲルの考察を敷衍すると、私たちの活動が真に歴史に残る意味のある事業となるかどうかは、自らの活動が時代精神を反映しているのかにかかっているのでしょう。ヘーゲルが話したように、情熱とともに活動する人々は自らが時代精神を代表していることを認識していませんし、出来ないのかもしれません。 それでも、自らの人生を賭けて行う活動を選ぶ時には、この時代精神を意識しようと思います。
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