Taejunomics

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マラリアを撲滅する蚊帳
今回のLiving in Peaceの勉強会には、住友化学の水野達男さんにお越しいただき、マラリアを撲滅するための蚊帳、オリセットネットのお話を伺いました。とても興味深かったので、下記にまとめておきます。



マラリアは、地球で最も多くの人を殺している病気の一つです。年間3億人以上が感染し、100万人が死亡していますが、そのうち90万人以上は体力の低い5歳未満です。また、罹患する患者の90パーセントはアフリカに住んでいます。

発熱や頭痛がそのおもな症状(中国の歴史小説によく出てくる瘧(おこり)もマラリアです)で、かかった人は仕事に出れないため、貧しい人の収入にとって大打撃となります。さらに、治っても時間がたつとまた罹る病気であり、開発途上国において人びとが貧困から抜け出すための大きな障害の一つとなっています。ある調査によると、マラリアによるアフリカの経済損失はGDP換算で年間に1兆2千億円とも言われています。

感染症の8割は蚊によるものだと言われていますが、マラリアも同じです。マラリアは、ハマダラカという蚊に刺されることにより感染します。蚊は水たまりさえあれば、1週間で卵から成虫になるので、雨季にはものすごいスピードで蚊が繁殖します。ケニアの調査では人は何もせずに1日寝ると、110回蚊に刺されるそうです。そのうち7~8%はマラリアのウィルスを有しています。



R0014978.jpgオリセットネットは、マラリア撲滅のために住友化学が開発した蚊帳です。マラリアを媒介するハマダラカは夜行性のため、蚊帳は強力な予防手段となります。

網には防虫剤が漬け込まれていて、蚊はこの蚊帳に触れると数分以内に死にます。殺虫剤は、除虫菊を用いた天然のものがベースになっていて、昆虫には効きますが、人間に対する有害性はありません。また、ネットに成分が織り込まれているため、蚊帳を洗っても成分は無くならず、防虫効果は5年間持続するといわれています。

このオリセットネットを集中的に配布した地域では、マラリアの感染率は元の50%から10%にまで低下したそうです。


この蚊帳は現地において生産されています。マラリアの撲滅と雇用の創出の二つを一緒に行っているわけです。第一号の工場は、タンザニアのアルーシャにつくられました。第1号、第2号工場二つの生産能力は1年当たり1500万張です。2009年3月における、世界全体のオリセットネット生産力は3,800万張ですが、2009年の12月には5,200万張、2010年末には6,000万張になる見込みだそうです。


R0014977.jpgアフリカでは生活習慣として、仕事をして貯蓄をする文化があまり根付いていないため、工場経営において大変なことは多いそうです。一夫多妻制の国においては、子育てをしないといけない母親には働き者が多いですが、男性には怠けものが多く、工場の悩みになっているそうです。生産が今後拡大していくためには、工場で働く人々への教育が不可欠だと考えられています。

マラリアはミレニアム開発目標の中でもっともゴールに近い分野の一つです。その理由は、目的を達成するための手段が明確だからです。今、住友化学は、2億5千万張のオリセットネットを世界に配ることを目標としています。 


住友化学は営利目的でこれを行っています。これは事業が持続可能なものとするためには非常に重要なことです。 BOP(Bottom of the Pyramid、1日5ドル以下で生活している40億人の人々のこと)ビジネスにおいて成功するために必要なものは、品質、低価格、Availabilityです。

品質は効果的であり、必要最低限の機能が備わったシンプルなものである必要があります。開発途上国で瞬く間に浸透しているシンプルな携帯電話はこの典型です。

価格については、現在5ドルのものを3.5ドルにするようにしています。現地調達のシステムを作ることが重要な鍵となります。現在は、オリセットネットの原料の一部は日本から調達されていますが、これを完全に現地化することを目指しています。

ちなみに、一つの蚊帳を売るまでのコストは10ドルとされています。そのうち、蚊帳代が5ドル、物流が2ドル、そしてマラリアの教育が3ドル(マラリアの原因が蚊だと知っている人は、アフリカにはまだ4割しかいないそうです)。


実際に製品を手に取ってもらうためのマーケティングも非常に重要です。販売網の仕組みは非常に重要です。現在、住友化学は病院の隣にオリセットネット販売店を設けるようにしています。病院に行って、蚊帳の必要性を感じても、人はすぐにそれを忘れてしまうからだそうです。



話を聞いていて、改めて日本のものづくりの素晴らしさと技術の偉大さを感じました。 素晴らしい技術は、営利を達成するとともに、経済開発を推進する大きな力となりえます。 僕たちも、こういったイノベーションを作りたいといつも思っています。


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