そういえば、久々のガチンコファイナンスネタ。
数週間に一度のペースで、ファイナンス理論勉強会をしています。今日は記念すべき第一回でした。
次回は、12月13日の夕方です。参加は自由ですが、唯一の参加要件は、論文を読んでくることです。(次回はこれ。)
http://faculty.chicagobooth.edu/john.cochrane/research/papers/Campbell_Cochrane_By_Force_of_Habit_(JPE).pdf
前回のエントリーからかなり時間が経ってしまいましたが、Black-Littermanの最適化について。
前回のエントリーでは、何の制約もおかずに過去の実績値その他の方法で設定したリスクとリターン等をもとにした最小分散ポートフォリオの構成比率は、かなりいびつなものになってしまうことを書きました。 たとえば、日本株+300%、アメリカ株-200%のような、投資比率が、何の制約もなしに最適化計算を行うと普通に計算結果として出てきます。
いびつな解は、リスクとリターンの設定によるものですが、この設定が問題です。リスクとリターンを任意に理屈なしに任意に設定するのは、ロジカルではなく、運用の方法として適切ではないでしょう。
そこでBlackとLittermanが考えた出発点は、マーケットポートフォリオでした。各アセットクラスの時価総額で加重平均したポートフォリオを均衡ポートフォリオと考え、そこから逆算する形で分散共分散行列を求めたわけです。
ただ、これだけでは単なる市場の後追いに過ぎず、超過リターンを得るためにはさらに一工夫が必要です。具体的には、各アセットクラスに対する(他の投資家とは異なる)シナリオ予測を織りこんでいきたいわけです。
この予測をどのようにして織り込むか、がこのBlack-Littermanモデルの肝です。
その予測を織りこんだ投資比率は、次のように表現されます。(最適化計算の後の解析解です)
W* = Weq + P’([Ω + PΣP’] ^-1) [Q/δ - PΣWeq]
ここで、
W* :予測織り込み後の投資比率
Weq:均衡点における投資比率
P:予測リターンのマトリックス
Ω:予測分散共分散行列
Σ:均衡分散共分散行列
δ:リスク回避係数
です。
(本当はもう一つ調整項のτが入り、今日のEquilibristaさんの発表で取扱われたのですが、本質をもう少し鮮明にするために捨象しています)
第二項の([Ω + PΣP’] -1) [Q/δ - PΣWeq]は、将来に対するView(これをこのエントリーでは「予測」と訳しています)を投資比率に織り込む際のウェイトになっています。
このウェイトの中身をもう少し分解してみましょう。
まず、
[Ω + PΣP’]
は、予測を織りこんだリスクになっています。具体的には、第一項が予測分散共分散行列であり、第二項が予測ベース投資比率と均衡分散共分散行列に基づいたポートフォリオのリスクになっています。
次に、
[Q/δ - PΣWeq]
は、超過リターンの形になっています。第一項が予測に基づくリターンであり、第二項がベータ調整分です。(PΣWeqが予測リターンと均衡リターンとの間の共分散をつくるわけですが、共分散こそがベータの本質です。)
すなわち、予測を投資比率に組み込む場合には、その予測に基づくリスクに対する超過リターンでウェイトをとる、というのが、このポートフォリオ設計のポイントになります。
ここで、δは、あらかじめ天下り式に決定していおいて、予測リターンと分散共分散行列はマーケットから入手できる何かの数値から自動的に計算できるようにしておけば、グローバルに最適化したポートフォリオが再現可能になります。別にむずかしい統計パッケージがなくても、誰でもエクセルとネット上の情報を使って計算することが可能です。
こういった「決め」とそれに基づいた計算は難しいことではなく、このモデルの素晴らしいところは、将来に対するViewをアセットアロケーションに応用するための手続きを示した点にあると思います。
もちろん、均衡モデルに個々人の予測を含めるというのは、代表的投資家の存在との兼ね合いで矛盾を作りだしてしまうという気味の悪さがあります。ですが、将来に対する予測というアートの側面と、その予測を実際の投資比率に織り込むための手続きというサイエンスが合体している訳で、読んでいてとてもワクワクしました。
やっぱりファイナンス理論の勉強は楽しいです。
数週間に一度のペースで、ファイナンス理論勉強会をしています。今日は記念すべき第一回でした。
次回は、12月13日の夕方です。参加は自由ですが、唯一の参加要件は、論文を読んでくることです。(次回はこれ。)
http://faculty.chicagobooth.edu/john.cochrane/research/papers/Campbell_Cochrane_By_Force_of_Habit_(JPE).pdf
前回のエントリーからかなり時間が経ってしまいましたが、Black-Littermanの最適化について。
前回のエントリーでは、何の制約もおかずに過去の実績値その他の方法で設定したリスクとリターン等をもとにした最小分散ポートフォリオの構成比率は、かなりいびつなものになってしまうことを書きました。 たとえば、日本株+300%、アメリカ株-200%のような、投資比率が、何の制約もなしに最適化計算を行うと普通に計算結果として出てきます。
いびつな解は、リスクとリターンの設定によるものですが、この設定が問題です。リスクとリターンを任意に理屈なしに任意に設定するのは、ロジカルではなく、運用の方法として適切ではないでしょう。
そこでBlackとLittermanが考えた出発点は、マーケットポートフォリオでした。各アセットクラスの時価総額で加重平均したポートフォリオを均衡ポートフォリオと考え、そこから逆算する形で分散共分散行列を求めたわけです。
ただ、これだけでは単なる市場の後追いに過ぎず、超過リターンを得るためにはさらに一工夫が必要です。具体的には、各アセットクラスに対する(他の投資家とは異なる)シナリオ予測を織りこんでいきたいわけです。
この予測をどのようにして織り込むか、がこのBlack-Littermanモデルの肝です。
その予測を織りこんだ投資比率は、次のように表現されます。(最適化計算の後の解析解です)
W* = Weq + P’([Ω + PΣP’] ^-1) [Q/δ - PΣWeq]
ここで、
W* :予測織り込み後の投資比率
Weq:均衡点における投資比率
P:予測リターンのマトリックス
Ω:予測分散共分散行列
Σ:均衡分散共分散行列
δ:リスク回避係数
です。
(本当はもう一つ調整項のτが入り、今日のEquilibristaさんの発表で取扱われたのですが、本質をもう少し鮮明にするために捨象しています)
第二項の([Ω + PΣP’] -1) [Q/δ - PΣWeq]は、将来に対するView(これをこのエントリーでは「予測」と訳しています)を投資比率に織り込む際のウェイトになっています。
このウェイトの中身をもう少し分解してみましょう。
まず、
[Ω + PΣP’]
は、予測を織りこんだリスクになっています。具体的には、第一項が予測分散共分散行列であり、第二項が予測ベース投資比率と均衡分散共分散行列に基づいたポートフォリオのリスクになっています。
次に、
[Q/δ - PΣWeq]
は、超過リターンの形になっています。第一項が予測に基づくリターンであり、第二項がベータ調整分です。(PΣWeqが予測リターンと均衡リターンとの間の共分散をつくるわけですが、共分散こそがベータの本質です。)
すなわち、予測を投資比率に組み込む場合には、その予測に基づくリスクに対する超過リターンでウェイトをとる、というのが、このポートフォリオ設計のポイントになります。
ここで、δは、あらかじめ天下り式に決定していおいて、予測リターンと分散共分散行列はマーケットから入手できる何かの数値から自動的に計算できるようにしておけば、グローバルに最適化したポートフォリオが再現可能になります。別にむずかしい統計パッケージがなくても、誰でもエクセルとネット上の情報を使って計算することが可能です。
こういった「決め」とそれに基づいた計算は難しいことではなく、このモデルの素晴らしいところは、将来に対するViewをアセットアロケーションに応用するための手続きを示した点にあると思います。
もちろん、均衡モデルに個々人の予測を含めるというのは、代表的投資家の存在との兼ね合いで矛盾を作りだしてしまうという気味の悪さがあります。ですが、将来に対する予測というアートの側面と、その予測を実際の投資比率に織り込むための手続きというサイエンスが合体している訳で、読んでいてとてもワクワクしました。
やっぱりファイナンス理論の勉強は楽しいです。
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私的で熱狂的な勉強会を @TaejunShin @takashifc らと、繰り広げた休日はもう普通じゃなくエキサイティングで、徹底した論理のトンネルをくぐった向こう側に、隠れていた現実を見つける喜びは、いつでも他の何にも替え難いものです。今回のテーマは、Black-Littermanモデル
2009/11/26(木) 11:55:51 | 投資の消費性について
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