Taejunomics

            政治、経済、社会、哲学、芸術、文学、スポーツ、マイクロファイナンス、教育などなど、徒然なるままに書き綴ります。 ※お初の方はカテゴリー欄の「Taejunomicsについて」、をご覧ください。
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高校無償化と朝鮮学校
朝鮮学校の高校無償化外しについて、個人的なまとめをかねて書いておきます。

人間にバイアスはつきものですが、可能な限りそれを廃し、ファクトだけで詰めているつもりです。朝鮮問題について、事実と普遍性を基に信じることを書くと、ある時は同じ境遇の人から裏切り者といわれ、ある時は逆の立場の人からスパイと非難されることがあります。正直言ってしんどいし、黙っていた方が楽なのですが、僕は自分の信ずることをいつも話せるようにしたいと思っています。尊敬するサイードが終生そうだったように。


経緯
新政権発足後、外国人学校も含め高校無償化する方向で調整がされ、予算の試算もされていた。その後、拉致問題担当相が朝鮮学校を外すことを文科相に要請される。そして、鳩山首相も除外する方向で考えている、と報道される。その後、各種メディア、政党の間で諸説起こる。


拉致問題との関係
拉致問題の未解決を論拠にした場合はまた違うことになりますが、関係はないと首相らが話しているので、ここでは考慮しないことにします。


教育内容を確認出来ないから助成から外すべきか
教科書や教師の授業プランを開示したり、公開授業である程度は分かるのではないかと思います。



そもそも外国人学校を入れるのは憲法違反では
国に対し、助成を受けている者としての説明責任を果たすのであれば、憲法違反とは言えないのではないかと理解しています。最近ネットで見かけた議論を踏まえて書きます。 長くなるので、順を追っていきます。


1.条約と憲法では憲法が優先する

まず、日本は民族的マイノリティが自らの文化を継承する権利が否定されないことを、自由権規約(第27条)や子どもの権利条約(第30条)を批准しています。これを根拠にしている議論が結構あるようですが、条約と憲法がある場合、日本では憲法が優先するという説が受け入れられています。(安全保障や、降伏などについてはまた別の議論あり) よって、条約の批准は努力規定にこそなれ、強制力は持っていないと理解するべきだと考えます。


2.憲法に定める権利規定の主語が「国民」であっても外国人は権利主体に含まれる、というのが通説

憲法14条は法の下の平等、26条は教育を受ける権利を説いていますが、この主語は「すべて国民は」です。国民とは何か、というと、日本人の全体として捉える全国民主体説と、有権者の総体説があります。どちらにせよ、外国人は含まれていません。

ただ、上記は単に国民とは何か、という議論で、権利主体に外国人が含まれるかという点については別の議論があります。

外国人を憲法第三章の権利主体として認めるべきか、という論点については、従来は否定説が有力だったものの、現在は判例・通説ともに肯定説となっています。これは、権利の性質上明らかに日本国民にのみ適用されるべきものを除き、外国人に対しても日本国民と同等の権利を認める、というものです。 

ちなみに、憲法制定過程で使われていたのは英語で、英語版憲法において権利の主体として使われている単語はPeopleです。


3.助成が行われた場合、政府に対し一定の義務を負う。それは企業が債権者に負うものに似ている

ネットで出回っている議論が、この助成活動は89条に違反する、というものです。

憲法89条にはこうあります。「公金その他の公の財産は、宗教上の組織もしくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。」 その趣旨は、政教分離、教育等の私的事業の自主性の確保、公費濫用防止などが考えられています。

僕の調べたところによると、私学への助成は憲法89条違反とはならないようです。89条にある「公の支配」についての多数説は、憲法14条、23条、25条、26条などを総合的にみて公の支配がなされているか考える必要がある、というものです。私立学校への助成については、私立学校振興助成法などの監督の程度で公の支配の要件を満たしているため合憲と解釈されています。

この私立学校振興助成法に明記されている所轄庁の権限は次のようなものです。
・会計の調査権限
・過剰入学についての是正命令
・予算が助成の目的に対して不適当な場合の是正命令
・役員が法令の規定に基づく所轄庁の処分・寄附行為に違反した場合の、役員解職勧告

これらは当然のことで、公費が投入された場合に、それがちゃんと使われているのかを監督する、というものです。なので、もし政府が外国人学校に対して助成をすると一旦決めるのであれば、それはそれでアリなのではないかと思います。

判断の是非は有権者が決めることだと思います。憲法14条や26条にあるのは、「権利を否定されない」というものであって、学ぶ権利を積極的に支援する根拠になるかどうかは、僕は分かりません。



朝鮮学校ってどんなところ?
このあたりはほとんど分からない人がいると思うので、気楽に質問ください。可能な限り答えます。



この手のことを書くといつも、匿名性ゆえの残念なコメントがくるので、自分の本名とメールアドレスを記入の上でコメント・質問してください。見落としている点についての指摘も歓迎します。


主な参考文献
・辻村みよ子、憲法、日本評論社
・野中俊彦ほか、憲法、有斐閣

Comment
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2010/03/09(火) 02:50:55 | | #[ 編集]
Re: 考えさせられました
コメント有難うございました。

はい、そもそも論として反対ということについては、それはそれで十分尊重するに足る意思決定だと思います。 価値判断が含まれる内容なので、なんとも言えません。

それはそれで、ロジックで詰められるものは詰めていく、というのが真摯な議論の仕方であって、それは怠らないようにこれからも頑張ろうと思っています。
2010/03/09(火) 03:36:05 | URL | Taejun #-[ 編集]
こんにちは。

論点2については、「すべて国民は」「何人も」という文言にかかわらず、人権は性質上可能な限り外国人にも適用されるという性質説が現在の判例・通説になっているというのはおっしゃる通りです。
この考え方では人権は大きく言って、性質上外国人に保障されない人権、性質上外国人に保障される人権、性質上外国人に保障されるものの外国人であるがゆえの制約がある人権に分けられます。
そして、26条等の社会権は3つめのグループであり、外国人にも保障されるが、国の財政的裏付けが必要であることから日本国民を優先して取り扱ってもよいというのが通説ないし多数説ではないかと思います。
そうすると、この通説を前提とする限り、26条からは朝鮮学校を無償化の対象に含めてはいけないとの結論も、含めなければいけないとの結論も必然的には出てきません。

付言すれば、公権力が教育を受ける権利について必ずしも外国人を日本人と同等に扱わなくても違憲ではないという上記の見解は、私人が教育を受ける権利の重要性を説いて外国人にも保障を求めることの正当性を否定するものではありません。


論点3については、地方自治体が、朝鮮学校と同じく「各種学校」である幼児教室に助成金を支出することはは89条に反しないという判例があり、参考になるのではないかと思います。
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=01&hanreiNo=20276&hanreiKbn=02
http://d.hatena.ne.jp/iteau/20100217/p1
2010/03/09(火) 20:53:24 | URL | ssuguru #-[ 編集]
Re: タイトルなし
有難うございます。

>この通説を前提とする限り、26条からは朝鮮学校を無償化の対象に含めてはいけないとの結論も、含めなければいけないとの結論も必然的には出てきません。
>
> 付言すれば、公権力が教育を受ける権利について必ずしも外国人を日本人と同等に扱わなくても違憲ではないという上記の見解は、私人が教育を受ける権利の重要性を説いて外国人にも保障を求めることの正当性を否定するものではありません。

はい、そう理解しています。だから、違憲ではなく、決めの問題だと書いた次第です。


>
> 論点3については、地方自治体が、朝鮮学校と同じく「各種学校」である幼児教室に助成金を支出することはは89条に反しないという判例があり、参考になるのではないかと思います。
> http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=01&hanreiNo=20276&hanreiKbn=02
> http://d.hatena.ne.jp/iteau/20100217/p1

おお、そうなのですね。知らなかったので助かります。有難うございました。
2010/03/10(水) 08:49:52 | URL | Taejun #-[ 編集]
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2010/03/14(日) 20:00:54 | | #[ 編集]
憲法上の争点について
はじめまして。
憲法は詳しいわけではないのですが、少しだけ。

1 憲法26条は、今回あまり争点にならないような気がします。
「政府の方針では、インターナショナルスクール、中華学校、韓国学校など各種学校に該当する他の外国人学校は無償化制度が適用される。」(ソースは朝日新聞)とのことですので。後述しますが、メイン論点は、「韓国学校等が良くて朝鮮学校がダメな合理的理由はあるのか」という所ではないかと。
 また、朝鮮学園は日本の法律に基づく準学校法人であって外国法人ではありませんから、人権享有主体との関係では、「外国人の人権」の議論がストレートにはあてはまらないような気がします。

 なお、外国人の生存権はじめ社会権が「その帰属する国家によって第一次的に保障されるべきである」という「帰属国家責任論」じたい、今日では疑問視されています。この説を提唱したのは宮沢俊義ですが、終戦直後の古い古い説です。プログラム規定説の時代の説になります。最高裁はこれを維持しているようですが、ヨーロッパにおいてはこんな説は一顧だにされないそうです。
 たとえば、ブラジルに移住して貧困にあえいだ邦人に日本国家が手をさしのべたという事実はありません。ドミニカ移民に至っては、国による棄民政策に等しいとして、国家賠償が認められていることも有名です(判例タイムズ1218号106頁)。
 要するに、「その帰属する国家による社会保障」なんて、絵に描いた餅にすぎません。日本ができていないことを、どうして他国に要求できましょう。というわけで、今日ではこの「帰属国家責任論」は積極的支持を受けている説ではありません。
 朝鮮人の場合、その「帰属国家」ってどこだ?という問題もありますね。外国人登録における「朝鮮」は国家を示すものではなく、あくまで「記号」だそうなので。

 年金については問題は解決していないののの、生活保護は古くから外国籍の方にも認められています。問題の外縁も不明確です。というわけで、社会権はあまり今回の問題の切り札にならない気がします。

2 憲法89条について
 政府じたいが、朝鮮学校以外の外国人学校に無償化制度を適用する方針だということですから、これも問題にする必要はないのではないでしょうか。

3 問題にすべきは、憲法14条、人種差別撤廃条約違反だと思われます。
 「省令には「母国の教育法制の中で、高校に相当する学校だと位置づけられていること」「外交ルートを通じてそれを本国に問い合わせることが可能であること」という内容の規定を設ける案も出ている。」そうですが(朝日新聞)、仮にこのような規定ができたり、あるいはそのような運用がなされた場合、それは合理的区別なのでしょうか。また、合理的であるかどうかを判断する基準はどの程度厳格であるべきでしょうか。ここが法的にはメインの争点ではないかと思います。
 この要件は、どう見ても朝鮮学校を外す「ためにする」要件にしか見えません。この要件、あるいは同類の議論の合理性を疑うべきであると考えます。
2010/03/15(月) 13:03:51 | URL | 京都の弁護士 #JalddpaA[ 編集]
京都の弁護士さん

有難うございます。レス遅れてしまってすみません。じっくり読んでいたら、遅れてしまいました。

はい、1、2、3ともに同じ認識でいます。
外国人学校を一律で無償化にするのに、「教育内容が分からない」という理由で朝鮮学校だけを外すのは、筋が通っていないと思います。他の学校についても全く同様のことなので。
政治的理由というのであれば、まだ言わんとしていることは(反論しようと思うものの)理解出来ますが、政治的理由とは言っていないわけですし。

これからもどうぞ宜しくお願い致します。

2010/03/18(木) 00:40:28 | URL | Taejun #-[ 編集]
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2010/03/18(木) 17:41:12 | | #[ 編集]
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2010/03/24(水) 16:13:20 | | #[ 編集]
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