Taejunomics

            政治、経済、社会、哲学、芸術、文学、スポーツ、マイクロファイナンス、教育などなど、徒然なるままに書き綴ります。 ※お初の方はカテゴリー欄の「Taejunomicsについて」、をご覧ください。
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日本でマイクロファイナンスができない理由
(追記アリ:2010年6月13日)

日本でもマイクロファイナンスをするべきという人がいます。

でも、僕は日本の都市部でマイクロファイナンスが出来るとは思いません。貧困層向けのファイナンスはあるでしょうけれど、それにマイクロファイナンスの名称がつくのか疑問が残ります。


金融の視点からみたマイクロファイナンスの真髄は、コミュニティの結束力を顧客の信用力に転換する仕組みにあります(オペレーションの作り込み等もあるのですがここでは割愛)。


R0014712.jpgマイクロファイナンスでは第一に、顧客選定の段階でコミュニティの結束力が審査コストの低下に転化されています。

共同体が強く残っている開発途上国の農村部や町において、周りの人に認められた人がマイクロファイナンス機関からお金を借りることができます。グループでお金を借りる場合は当然ですが、個人で借りる場合にも村長さんなどが保証人として立つ場合が多く、何らかの形でコミュニティによる借手選出の過程を経ています。

金融機関が顧客の情報を完全に知り得ない限り、よい借手を探すことには費用がかかります。しかし、マイクロファイナンスにおいては、この借手探しのコストは地元のコミュニティが負担しているわけです。(よい借手探しは、いつもその人と顔を突き合わせているコミュニティの人々にとってはあまり高い費用を要するものではない一方で、金融機関にとってはかなり高くつくこともポイントです)


第二に、コミュニティの結束力は、貸手である金融機関のモニタリングの費用の低下に転化されています。

誰もがお金を返せなくなって地元のコミュニティからのけものにされるのは嫌なので、借手は一生懸命に働くことになります。金融機関が本来するべきモニタリングのコストが、これまたコミュニティによって負担されているわけです。



このように、コミュニティの結束力が、金融機関が本来負担していたコストを下げるために、通常のファイナンスよりもよい条件での金融サービスの提供が可能になるわけです。貧困層への金融サービス、主に貸出しはたくさんありますが、それらサービスには、上記のような形のコスト削減の仕組みがあるとはあまり思えません。日本のようにコミュニティの力がほとんどなくなってしまった国で、マイクロファイナンスが出来るのか、甚だ疑問です。


日本では講や無尽、朝鮮半島では契というものがありました。マイクロファイナンスの仕組みは決して新しいものではなく、経済が一定の発展段階に達したときに生じる金融の仕組みです。個人的には、これは、経済発展とコミュニティの結束力との間の関係に由来するものだと思っています。経済発展によってもたらされる富によって、個人は身近な人々との関係を弱めても生きていけるようになります。結果、コミュニティは弱くなる。

念のためですが、僕は日本の貧困層に対するファイナンスの仕組みをつくることはとても重要だし意味があると思っています。ただ、それをマイクロファイナンスと呼べるとは思えません。マイクロファイナンスとは違う、より発展した形の資金調達の仕組みが出来るのではないかな、と思っています。



(追記)
ここではMFの特徴として、その情報の非対称に起因するコストを削減する仕組みを考えています。これこそが、MFが比較的低利で金融サービスを提供出来る理論的源泉と思われるからです。MF=小口の金融サービスの提供なら、先進国でも色々出来ると思います。

その後Twitterで知ったのですが、まだ地方にはかなり強固なコミュニティが存在していて、お金が返済できない場合、かなり厳しい制裁があるとのこと。もちろん、イスラム圏の女性ほどに移動の自由は制限されていませんが、それでも住み慣れた土地を離れ見知らぬ場所に住むコストは相当なもので、コミュニティによる制裁がかなり利いてくるかもしれません。なので、本文では、「都市部で」と制限をつけました。








Comment
≪この記事へのコメント≫
15年ほど前の話ですが、山梨県では普通に無尽が機能していました。
知り合いには、甲府のような中心都市で、大手の会社員といった比較的都市的な生活をしてる人も多かったのですが、それでも成人のほぼ100%がどこかの無尽に入っていました。

現在では多少状況は違っていると思いますが、コミュニティが未だ信用力や与信力を担うに足る結束力を有する地域というのは案外残っているのではないでしょうか。
2010/06/10(木) 22:01:27 | URL | Shin #-[ 編集]
Re: タイトルなし
有難うございます。そうなのですね。
とても興味があるのですが、その無尽銀行ではどのようなかたちで借入がされていたのでしょうか?何らかの形でコミュニティの拘束力を使ったものだったのか、もしくは無尽銀行とはいえ、普通の銀行借り入れと同じものになっていたのか。 もしご存知でしたら。

仰る通り、地方は都市部より人と人のつながりがまだ強く残っている感を受けています。
2010/06/12(土) 06:17:18 | URL | Taejun #-[ 編集]
私自身は地方回りで赴任した東京人なので、内情に詳しいわけではありませんが(無尽という言葉すら知りませんでした)、判る範囲で。伝聞の世界で得た情報ですから、間違った認識もあるかもしれません。

・無尽メンバーは毎月いくら、というような形で積み立てる。山梨中央銀行とかJAとかの共同口座に振り込み。
・お金がいる時は「積立てた額の○倍まで」とかの限度で無尽口座から引き出せる。返済はほぼ無利子。返済期間はどんな感じなのか聞いたことがありませんでしたが。
・旅行行くから!とか気軽な理由で借りられるようです。せいぜいが教育資金とかまで。住宅ローンのような長期の大物は無理なようです。
・マイクロファイナンスのような組織だった代物ではありません。江戸時代のお伊勢講の発展のようなご近所共同体のイメージです。
・完全に地域コミュニティに密着していて、どんなに大きくても「○○中学同窓生無尽」とか、そんなものっぽいです。「メンバー全員顔見知り」に近い世界が大前提のようです。
・無尽が根付いているので、例えば、高校卒業時に「○○高校××年度3年5組無尽」とか小規模な新規の無尽がぽんぽん立ち上がっちゃう、というようなイメージです。
・たぶん最終的な「貸し出し許可」を行う世話役がいるはずだと思うのですが、詳しいことは判りません。定款的なものがどうなっていたのかも・・・外来者で出て行くこと確定の自分には、いくら仲良くなっても無尽のお誘いとか一切なく、お呼びじゃなかったわけで。

消費者金融がサラ金、と呼ばれていた時代の話ですが、こんな環境では消費者金融はさぞ進出しにくかったことでしょうw
2010/06/12(土) 08:08:28 | URL | Shin #8niM9o/w[ 編集]
有難うございます。
まさにROSCA
http://en.wikipedia.org/wiki/Rotating_Savings_and_Credit_Association
と同じような仕組ですね。東京では本当に想像もつかないです。。
2010/06/14(月) 00:13:27 | URL | Taejun #-[ 編集]
なるほど無尽は日本版ROSCAですね。
ちょっと調べてみたところ、全県レベルで無尽が根付いているのは沖縄と山梨くらいなようです。
ただ、地域レベルでは江戸以来の無尽が根付いている場所は相当多く、山梨県の人口流動性が特別低い、というわけでもないですから、むしろ「三大都市圏以外の日本の大部分(人口では少数派ですが)ではバングラの農村に匹敵する(いいすぎ?)地域コミュニティの結束が残っている、と考えた方が事実に近いのかもしれません。
2010/06/14(月) 07:17:30 | URL | Shin #8niM9o/w[ 編集]
有難うございました。とても興味があるので、今度自分で現地に行って調べてみようと思います。

これからもどうぞ宜しくお願い致します。
2010/06/16(水) 07:20:50 | URL | Taejun #-[ 編集]
今の世の中「連帯保証人にだけはなっちゃいけない」といわれます。
また返済できないことはすなわち自己破産であると思えば、リスクの大きさも想像がつきます。
どちらを考えても、日本ではMFは難しいでしょうね。


2010/06/20(日) 04:11:47 | URL | smz #-[ 編集]
有難うございます。仰る通り、そういった心理的な壁も少し浸透しにくい理由としてあるのかもしれないですね。
2010/06/23(水) 09:38:30 | URL | Taejun #-[ 編集]
無尽について
甲府近郊在住です。今でも無尽はあります。小規模なものがほとんど。近所、同級生、趣味など枠組みは様々。積み立てて旅行代やイベント(BBQや新年会など)に充てます。個人的な貸出しも、事情によってはあるはずです。
2011/05/10(火) 10:49:55 | URL | 8arue2 #-[ 編集]
Re: 無尽について
ありがとうございます!
レスが遅れてごめんなさい。とても勉強になります。まだ地域によっては普通の仕組みとして残っているんですね。有難うございます!
2011/05/16(月) 00:54:37 | URL | 慎 泰俊 (Taejun Shin) #-[ 編集]
すごく気になるテーマであり純粋に気になったことがあったので、だいぶ前の記事ですがコメントさせて頂きます。

「金融の視点からみたマイクロファイナンスの真髄は、コミュニティの結束力を顧客の信用力に転換する仕組みにあります」
という記述がありました。
ということは、慎さんはACCION USAやstreet UK、ADIEなどの小口融資提供サービスは、個人ローンである故マイクロファイナンスとは定義できないとお考えでしょうか。
途上国のマイクロファイナンスのように収入増加の可能性を重視した審査を行ったり、事業・就業のフォローアップを行ったり、比較的短期の返済頻度をとったり、完済するとより高い額の現金にアクセスできるシステムをつくったりしても、
個人ローンであればマイクロファイナンスとは言えないとお考えでしょうか。

2012/06/04(月) 23:12:23 | URL | せいわ #-[ 編集]
Re: タイトルなし
レス遅れてしまってすみません!
色々な方策があると思います。そのあたり、拙著「ソーシャルファイナンス革命」に書かせて頂きました。
とはいえ、概して先進国での従来型のマイクロファイナンスのサービスは苦戦しているところが多いと感じています。
2012/07/19(木) 09:40:22 | URL | 慎 泰俊 (Taejun Shin) #-[ 編集]
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2010/06/10(木) 14:34:16 | 投資の消費性について
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