Taejunomics

            政治、経済、社会、哲学、芸術、文学、スポーツ、マイクロファイナンス、教育などなど、徒然なるままに書き綴ります。 ※お初の方はカテゴリー欄の「Taejunomicsについて」、をご覧ください。
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--/--/--(--) --:--:-- | スポンサー広告 | Trackback(-) | Comment(-)
知覚と現実のあいだ
gucchi_gg9044j-b9h.jpg僕たちは、様々なものを見たり聞いたりして、それが何であるかを理解しようとする。すなわち、知覚を通じて、現実を理解しようとする。時には、知覚が常に現実に等しいと勘違いまでする。

けれど、知覚と現実の関係は、実はかなり危ういものだ。眼に見えているものや、聞こえていることが現実だとは限らない。偽物の金の冠や、録音しているだけの鳥の声を考えてみるといい。また、寝ている間に見る夢も、知覚されているが現実には存在しないものだ。幻覚も同じだ。

こういった人間の直感的な認識があまりあてにならないものだとしたら、どうやって人間は知覚と現実が同じものであることに、より確信を持てるようになるのだろうか。これは、取るに足らない思弁ではなく、多くの人間にとってかなり深刻な問題だ。たとえば、ある人が本当に信じられると確信を得られるためには、どうすればいいだろう、という問いは普遍的なものだと思う。


この知覚と現実の間のギャップを埋める方法は、様々な知覚を整合的に理解することだ。

例えば、目の前にある物体が本当に金の冠であれば、固有の質量を持っているはずだ。もし、目の前にある金の冠が偽物であるにもかかわらず、質量が金と同じであるのであれば(もし質量の法則が正しければ)、世の中にある全ての金細工が偽物かもしれないということになる。すなわち、金の質量に対する知覚がすべて整合的でなくなるわけだ。

一つ一つの知覚が現実と違う可能性は否定できない。しかし、多くの知覚が全て誤りである可能性は、一つ一つの知覚が誤りである可能性よりはるかに低いだろう。ならば、多くの知覚を関連付けて一つの体系にしていくことにより、認識と現実のギャップは少しずつ埋められていくことになる。

ここでの関連付けのルールには論理規則などがある。これは、1+1=2というルールや、A=B,B=CならばA=Cといったルールのことだ。このルールそのものの正しさすら、最初は保証されていない。1+1=2だからといって、98+102=200だとはいえないのかもしれない。このルールの正しさそのものも、様々な事象と整合的であることから保証されることになる。また、このルールが一度確立されると、そのルールに基づいて現在生じている事象を説明できるのみならず、まだ経験されたことがない(=ア・プリオリな)現実までも予測できるようになる。天動説や、人工衛星の発射などがその例だ。

こうして、完全には正しいことが保証されない知覚は、相互に関連付けられることによってその正しさがより強く信じられるようになり、関連付けのルールそのものも、様々な事象と整合的であることにより確信がもてるものになる。自分が何かを知覚しているということ以上に、何も確かなものがない世界においても、人は自らの知覚と現実が一致するであろうということにより強い確信が抱けるようになる。


知覚と現実の一致を確信するための方法は、現実に僕達が直面している諸問題に対しても貴重な示唆を与えてくれる。

知覚される側に対する示唆は、首尾一貫することの大切さだ。全てのアクションが一つの原理原則によって貫徹されていてこそ、相手がそのアクションから受け取る知覚が整合的なものになり、信頼されることになる。

知覚する側に対する示唆は、物事を多面的にとらえることの大切さだ。人や組織の性質は意外と複雑であり、たった一つの事象からその性質を理解しようとすると間違える可能性がある。様々な観点からその人や組織をみて、その結果として確信できることは何か、ということを考えることにより、こういった誤りを回避できる可能性が高まる。


今日のEntryの大部分は、バートランド・ラッセルのThe Problems of Philosophyより。本書は、今年読んだ本のベスト3に入りそうな一冊。


Comment
≪この記事へのコメント≫
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2011/03/09(水) 09:20:12 | | #[ 編集]
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
Secret: 管理者にだけ表示を許可する
 
Trackback
この記事のトラックバックURL
≪この記事へのトラックバック≫
Designed by aykm.
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。