Taejunomics

            政治、経済、社会、哲学、芸術、文学、スポーツ、マイクロファイナンス、教育などなど、徒然なるままに書き綴ります。 ※お初の方はカテゴリー欄の「Taejunomicsについて」、をご覧ください。
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マイクロファイナンスのカラクリ
今は、マイクロファイナンス機関のDue Diligence(DD、投資実行前に行う諸々の精査のこと)をしにカンボジアにきている。もともとカンボジアとベトナムの両方に行く予定だったのに、ベトナムに行けなくなり、カンボジアだけをみることに。

IMGP8211.jpg(泊めて頂いた借手のお宅にて撮影)

今朝まではカンボジアの農村で寝泊まりしながら、現地の人々と一緒に過ごす。どのマイクロファイナンス投資ファンドの人々もこういうことはしないらしいが、現場感を補うためにはこういうことはとても大切だと思って最近はずっとこのスタイル。日中は、マイクロファイナンスの支店でオペレーションを精査。


そして、今日からは本部でマネージャーらを対象としたQAセッション。

オペレーション関連のセッションでのこと。
「このマイクロファイナンス機関では、借手たちによるミーティングを行わないのか?借手ミーティングは、借手のソーシャルキャピタルの強化、効率的なオペレーション、顧客の成長を共に実現できる素晴らしい仕組みなのに行なっていないのは勿体ないのではないか。」

と聞いたところ、バングラデシュでマイクロファイナンスに20年の経験があり、現在この調査対象のマイクロファイナンス機関に技術指導で来ている人がこう答えてくれた。
「それは非常に良い質問だ。私もここに来て半年、全く同じことを考えていた。このマイクロファイナンス機関はぜひ借手ミーティングを導入するべきだ。」

マイクロファイナンスが非常に高い返済率を実現し、マイクロファイナンス機関がとても効率的なオペレーションを行なうにおいて、最も重要なファクターの一つが、この借手ミーティングだ。日本では、顧客ミーティングの存在とそのビジネス上の役割はあまり知られていないのかもしれないので、少し書いておこう。


マイクロクレジットにおいてグループ連帯保証でお金を借りるのは、もうかなり古い話で、世界的にグループローンは減少の流れにある。諸々の理由があるが、グループローンを行うと、元々グループと強い関係の無い人や、経済的に苦しい状況にある人がローンを受けられないことになり、それは適切ではないということが主な理由だ。

しかし、グループローンの建付を放棄すると、二つの課題が生じる。

第一に、ローンの実施前において、借手とマイクロファイナンス機関との間に存在する情報の非対称性を何らかのカタチで克服する必要があるという点だ。この点については、ローンの審査担当者であるローンオフィサーらの訓練によってカバーされることが多い。

第二の課題は、ローンの実施後において、どのようにグループローンを行うのと同じようなグループの規律・協力を顧客の間で創出するかという点だ。そのための道具立てとしてもう20年以上行われているのが、借手ミーティングだ。

色々な形態があるが、この顧客のミーティングは次のような性質を持っている。
・毎週や隔週くらいで開催され、その場で返済が行われる
・借手らは自分たちの仕事や返済の状況についてディスカッションを行う
・場合によっては、マイクロファイナンス機関の職員がファシリテーションをして、ビジネスのディスカッションや社会教育を行う

IMGP6522.jpg(センターミーティングの様子)

イメージは、借手達が集まって行われる自治会のようなものだ。この、一見すると何の変哲もない借手ミーティングに、マイクロファイナンスのオペレーションの鍵がある。

第一に、借手ミーティングの場で返済が行われるため、マイクロファイナンス機関の職員たちは、一人ひとりの借手を訪問せずに一箇所で返済金を回収することができる。これだけで、マイクロファイナンス機関の職員の必要とする時間を大きくセーブしてくれる。

第二に、借手らは自分たちの仕事や返済の状況についてディスカッションを行うが、この毎週のディスカッションが行われることにより、借手の間のソーシャルキャピタルが強くなり、ある借手のビジネスがうまくいかなかった時に、他の借手がこの借手を助けようとするようになる。実際、成功しているマイクロファイナンス機関では、ある借手に問題が生じても、(連帯保証すら負っていない)他の借手らがその借手を助けようとする。

第三に、このミーティングの場所において、ある借手のビジネスにおける成功経験がシェアされることにより、借手たちの間で小さなレベルではあるがビジネスイノベーションが生じる場になっている。同時に、借手に対して社会教育を行うことにより、この場が借手自身の本当の意味の自立を支援する場所としても成立している。


この借手ミーティングの仕組みは、グループローンを放棄したマイクロファイナンス機関が諸々と考えた末に考案したソーシャルイノベーションで、先進国の資金調達の仕組みにおいても(とくにP2Pファイナンスやクラウドファンディング等)、多くのインプリケーションを与えてくれる。
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