Taejunomics

            政治、経済、社会、哲学、芸術、文学、スポーツ、マイクロファイナンス、教育などなど、徒然なるままに書き綴ります。 ※お初の方はカテゴリー欄の「Taejunomicsについて」、をご覧ください。
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--/--/--(--) --:--:-- | スポンサー広告 | Trackback(-) | Comment(-)
カトリーナが鳴らしたパンドラの鐘。
死者が現時点で数千人に達している、カトリーナの被害。
 日を経るごとに、事態の深刻さと、政府の無責任が、確かな証拠たちをもって明るみになってきている。 救援につくや否や睡眠をとることにした救助部隊、人々が飢えと病に苦しむすぐそばでカードに興じる軍の姿などが、もはや隠しようも無い事実を自分たちに突きつけている。

 貧困層や、被差別層が災害の際に真っ先に犠牲になるのは、今も昔も変らないことで、これは、程度の差はあれ、遺憾だが全世界で共通の事柄である。
 しかし、今回の問題は、現在も進行している同様の問題たちとある点をもって一線を画していると思う。

 それは、ここまであからさまな被害の非対称性が、先進国で起きたということである。
 差別・貧困と、災害その他による生活の破壊・死の因果関係は、発展途上国などにおいては本当にあからさまに現れる。 2日前のエントリーで書いた、友人が教えてくれたアフリカの諸国におけるODA削減の問題や、まだ記憶に新しい津波の件がいい証左である。 
 これらの国では多くの場合:
 ・政府が経済的制約その他で十分に機能できていないので
 ・国民が危機的状況におちいった際に歯止めとなる、セーフティネットが存在しないためである。  
 ※余談だが、信仰のあつい国では、途上国であっても問題はそこまで顕在化しない傾向にある。 寺院などが先立って人々の救済にあたるためである。 歴史的に、宗教は多くの場合、最後のセーフティネットの役割を果たしてきた。 ちなみに、日本でも江戸時代数多くの飢饉から平民が生存してきた背景には寺院の援助活動があった。 神(とそれに基づく博愛の精神)はやはり必要ということか?


 しかし、先進国において、災害による被害の非対称性がここまであからさまにあらわれたのは、近年、アメリカ以外に無いと思う。 例えば、日本でここ10年間起こった地震をはじめとする自然災害を考えてみるといい。 被害の甚大さは、経済的な階層間で、さほど隔たりをもっていなかった。 

 一人当たりのGNIが35000ドルの国で、今回のような事態が起こるのは、現代においてはまさに前代未聞の事なのである。 一般的に考えた場合、アメリカには政府が十分に機能できない経済的制約は存在しそうにない。 しかし、事は起きた。 だから、クルーグマンの言うように、自分たちは、世界のどの国の政府よりも厳しく、アメリカ政府を追及しなければいけないと思う。 問題を追及し、原因を究明することは、アメリカのみならず、他の民主制国家のためにもなるのだから。


 思考の枠組みから考えよう。

 一般的に考えて、「政府の失敗(govenment failure)」の理由は次のようなものだと思う:
 ①インセンティヴ(動機)の問題
 ②財政支出の手続の問題
 ③情報の不完全性
 ④集団的意思決定に固有の問題

 ②、③、④は、置いておいて、①の問題についてもっと掘り下げて考えてみようと思う。 インセンティヴの問題がとても大きいと思われるのである。

 
 政府は多くの場合、最も強い力をもつ社会組織であるため、デュープロセス(適性手続、適切な意思決定をできるための決まり事。)をしっかりとさせないと、暴走をする可能性がとても高い。 9.11以降、アメリカにおいては国民的団結の錦の御旗の下、危機管理の叫びの中デュープロセスが軽視されてきた。

 また、民主政治の性質上、政党の政権の維持のために有利な政策を採ろうとする動機ももっているし、いつ政権が交代するか分からないので、長期的な政策を採ることは難しい。 特に、拮抗した二大政党制の場合、党の政策はかなり異なったものとなる場合が多党制の場合よりも多いので、長期的な政策を採ることはよりいっそう難しくなる。

 さらに、選挙の際に大きな貢献をしてくれるロビイストの圧力も、政策に大きな影響を与えている。 ここらへんは、マイケル・ムーア氏の映画をちょっと借りて見ればとても分かりやすい(ただし、完全に真に受けないこと)。 ブッシュ大統領の経歴については、皆が知るとおり。 会ったこともないので彼が実際にはどんな人間かを知る由も無いが(もしかしたら、「ロビイストに頼らずとも、俺には自分の家業と友人たちの援けでやっていけるぜ!」と言うような、とても正義感の強い人間なのかもしれない)、それでも客観的にロビイストとの癒着は強いと考えざるを得ない。
  
 とまあ、ブッシュ政権にはそのシステム上回避することが出来ない政府の失敗の要素があるわけである。 けれど、このシステマティックな要素は、ブッシュ政権のみならず歴代の政権に多くの場合共通の問題である。 システマティックではない要素を考えてみないといけない;それは、言わずもがな、9.11だと思う。 9.11は、システム的に存在してきた問題を、一気に顕在化させたと思う。

 
 ここまで書いて、今回の問題は起こるべくして起こった、というよりもむしろ、もともと起きていた問題で、カトリーナの被害がそれを人々に知らせるパンドラの鐘となったのだと感じる。 
 そして、この鐘の音が、アメリカのみならず、他の、自分たちがまだ知らない、助けを求める声すらかき消されてしまう国々にまで響き渡るよう、自分は今学び働いているのだと、常に考えていたい。 


 ※パンドラの鐘は、野田秀樹氏の演劇名。 なかなか興味深いので、一度見てみてください。
Comment
≪この記事へのコメント≫
慎さん

興味深く読ませて貰いました。「パンドラの鐘」には深く共感します。慎さんの指摘どおり政府の対応の遅れへの憤慨や、犠牲になった方々への遺憾を感じざるを得ません。当事者の方々はそれらの責任の追及が議論の中心になるのはいつでも同じだと思います。ただ、第三者として、私は個人的に今回のカトリーナは異常気象に起因するもので、その異常気象の原因となる温暖化を加速させているのは紛れもないアメリカ自身であり、今回はそれに対する自然界からの警鐘であると思うのです。今後ともカトリーナ級、それ以上のハリケーンは何度も来るでしょう。その際に今回の惨事の経験を活かしどう対応するかということの議論と並行して温暖化ガス削減へ向けた本格的な取り組みを早急に開始すべきだと思いました。どうしたらアメリカ人がこの問題に気づくかを目下模索中です。それでは。
2005/09/06(火) 00:49:44 | URL | 哲朗 #-[ 編集]
大変興味深く読ませていただきました。
まだまだ、この問題は続くでしょうし、色々な観点から分析がなされ、議論がなされると思います。一義的な答えはでないのでしょうが、そうやって問題を見据えることが一番大事なんでしょうね。
日本が、この一件から学ぶことは大きいと思うのですが、台風14号の大きさを表すためにカタリーナを引き合いに出しているのを見ると、何だか強い違和感を覚えたりします。
2005/09/07(水) 05:49:41 | URL | 47th #-[ 編集]
>哲郎さん
 コメントありがとうございます。
 なるほど。 確かに、環境問題からのアプローチもとても重要ですよね。 京都議定書の件をはじめとして、これを契機にアメリカで環境問題に関する議論がより強くが巻き起ってくれればいいと思っています。
 これに関してDCで何か動きがあったら、教えてくださいね。

 >47thさん
 ありがとうございます。 これからも、注視して行きたいと思っています。
 確かに、日本の台風14号とカトリーナの比較には、色々な点で「?」を感じられます。 規模そのものはいいとして、問題の背景にあることが、根深い部分で相違していると思いますね。
 これからもまたよろしくお願いします。
2005/09/07(水) 08:42:21 | URL | taejunomics管理人 #-[ 編集]
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
Secret: 管理者にだけ表示を許可する
 
Trackback
この記事のトラックバックURL
≪この記事へのトラックバック≫
イラクの公共事業で悪名高いハリーバートン社が海軍から仕事を受け、ハリケーンの被害を受けたミシシッピー州周辺の修復工事をスタートさせる事となった。9月1日付けのヒューストン・クロニクル紙の記事によると、ニューオーリンズの治安回復後に、同社が復興作業を仕切る
2005/09/05(月) 00:15:56 | IPSO FACTO
 ハリケーン「カトリーナ」の被害が凄まじい。様々な意味で、このことは、我々日本人にとって他人事ではないわけで、いろいろなことを思った。 「カトリーナ」の上陸時の勢力は
2005/09/05(月) 21:32:42 | ナガスクジラの夢
>「(原爆が投下された)六十年前のヒロシマのようだ」。http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20050903/mng_____tokuho__000.shtml(東京新聞)先月末に襲った大型ハリケーン「カトリーナ」による被害を目の当たりにした米ミシシッピ州知事は、こう感想を漏らしたそうな。
2005/09/06(火) 04:51:17 | 路上日記@天六
Nice to meet you.      このぺーじも、みなさんのコメントやトラックバックにより、   必要に応じて記事内容を更新してゆきます。   なお、トラックバック送信に何らかの誤りが生じた場合、   とっとと削除してください。           
2005/12/03(土) 21:26:36 | ”Mind Resolve”
Nice to meet you.              このページは みなさんのコメントやトラックバックにより、      必要に応じて記事内容を更新してゆきます。      特に、先のハリケーン被害における?ニューオーリンズ関係の      積極的なご意見を反映
2005/12/18(日) 16:10:22 | ”Mind Resolve”
Designed by aykm.
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。