Taejunomics

            政治、経済、社会、哲学、芸術、文学、スポーツ、マイクロファイナンス、教育などなど、徒然なるままに書き綴ります。 ※お初の方はカテゴリー欄の「Taejunomicsについて」、をご覧ください。
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捨て猫物語。
 mati.jpg

初夏とは思えないほど、陽射しの強い日だった。
 うだるような暑さの中、サッカーの練習を終えた僕は、上野を歩いていた。 何故かは、よく、覚えていない。
 
 上野に行った時にいつも歩くガード下に、子猫がいた。 生まれて2,3ヶ月くらいだろうか。 白い身体に茶と黒のまだら模様。 瞳に虚ろな光をたたえ、長い間降らなかった雨のせいか、いつもより薄汚れた排水溝の上にうずくまっていた。 

 猫は人間より暑いのだろうなあ、と、気楽に考えながら、僕はその場を通り過ぎる。

 2時間くらいして、また、そのガード下を通った。

 猫は相変わらず、まんじりともしないでいた。 埃とも泥ともつかない薄黒いものがこびりついている排水溝の上に。

 
 何かおかしい、という感じを受けた僕は、その猫に近づいた。 逃げられるかと思ったが、逃げもしなかった。
 相変わらず、瞳にこもっているのは、鈍い光。 よく見たら、白い毛の付け根の部分には、濃茶の小さな斑点がいっぱいついている。 風邪をひいているのか、鼻水と目やにが顔いっぱい。 缶詰を買ってきて鼻先で開けてみても、顔を向けようともしない。
 
 周りを見渡しても、親猫らしき姿は見当たらなかった。 
 

 捨てられたのかな。
 
 その場に打ち捨てていくのは、あまりにも忍びなかった。 エナメルバックに入っていたサッカーの練習着を手元のビニール袋に全部移し変えて、代わりに、猫が入った。 いつもは重かったエナメルバックが、とても軽くて、持っていた袋がもっと重たかった。 

 僕の住んでいるところには、ペットは住めない。 だから、親には内緒。
 家に置いていけるわけも無いので、翌日は学校にも連れて行った。 授業中は、学校の時計台の下に隠しておいて、休み時間ごとに様子を見に行っていた。 相変わらず、何も食べようとしない。

 クラスの友達に打ち明けて、昼休みに、学校の近くの獣医に行く。

 獣医さんは、開口一番、
 「ああ、これは大分やられてるね。 ほっといたら死んでるところだったよ。」
 
 やっぱり、捨てられたんだ。
 
 「この、毛の根元に、こげ茶の斑点あるでしょ? これ、何か分かる? 全部、ノミの糞なんだよ。 ノミが猫の血を吸って、それを糞にして出すから、こんな黒い斑点がつくんだ。 ほら、よく、見てごらん。」

 といって、毛を掻き分ける獣医さん。

 見ると、信じられないほどの大量のノミがうごめいていた。 背中の辺りは、隙間も無いくらい、びっしりノミで埋まっている。 全身に粟がたつのを覚えた。
 
 「風邪か何かで弱っていたところに、こうやってノミがついちゃって、もう、大分抵抗力が弱まってるねえ。」

 「先生、助かるんですか?」

 「うーん。 難しい問題だね。 ところで、これは、捨て猫?」

 「多分、いえ、、 そうです。 捨て猫です。」

 「まず、こんな質問をするのは悪いんだけれど、いくらかけられる?」

 「かけられる?」

 「おかね。 しっかりと治療をするんなら、色々とお金が必要なんだ。 ノミを取ったり、その後の抗生物質をあげたり。」
 
 「いくらでも。」

 「そうか。 わかりました。 じゃあ、とりあえず、この、ノミを全部殺さないとね。」

 といって、獣医さんは、助手から薬液を受け取り、子猫の全身にかけた。 力ない鳴き声をあげる。 獣医さんは、手際よく、ノミを全部取っていった。
 
 「はい。おしまい。 だけど、さっきも言ったように、大分弱っているから、まだ全然安心は出来ない。 今日が峠だろうね。 まず、この薬を上げて。 つぎに、猫に食べ物をあげるように。 なるべくやわらかいものを。 自分で噛み砕いてからあげるといいよ。」

 「それでも食べなかったら?」

 「このスポイドをあげよう。 これにいったん餌を吸い込ませて、猫の口に入れてあげるといい。 嫌がっても、無理にでもあげないといけないよ。」  
 
 
 治療代をまけてくれた獣医さんに見送られながら、僕と友人二人は病院を後にした。 

 しかし、よりによって、その日は、生徒会の合宿の日。 夜から、郊外にある区営の宿で、キャンプやら会議やらをする事になっている。 僕は、生徒会長。 休むわけにはいかなかった。

 学校は、授業が終わったらすぐに早退させてもらった。 合宿を行う宿には、自分一人で時間内には合流しますから、という約束を生徒会の友人や先生たちにして。 そして、カバンの中には、ノミがとれてちょっとは楽になったのか、耳を欹てたらやっと聞こえるくらいの微かな寝息をたてる、ちいさないのち。
Comment
≪この記事へのコメント≫
捨て猫は捨てられた猫…

うちの愛犬も今病気で入院してるんだ(´д`)


捨てられるって人間にしかない考え方だと思った

2005/12/04(日) 00:44:16 | URL | りん #-[ 編集]
 そうなんだ。  愛犬、よくなったらいいね。 


 「捨てられるって人間にしかない考え方」

 確かに。 なんで、人間だけ、そういう考え方を持つのか、考えを突き詰めていくと何か大切なことに気付くことができそう。
2005/12/04(日) 20:20:46 | URL | Taejunomics管理人 #-[ 編集]
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