Taejunomics

            政治、経済、社会、哲学、芸術、文学、スポーツ、マイクロファイナンス、教育などなど、徒然なるままに書き綴ります。 ※お初の方はカテゴリー欄の「Taejunomicsについて」、をご覧ください。
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師想曲 in 朝鮮学校 2
 小学の恩師からは心を。
 中学の恩師からは精神を。
 高校の恩師からは意志を。
 そして、大学の恩師からは智を。

 振り返ってみると、僕は恩師たちから本当に多くの大切なものを受け取っている。 この贈り物を、次の代の人たちに渡せるのだろうか、と、時々考えることがある。 このブログが役に立てば、多幸だと思う。


 僕の専攻は日本国憲法。
 選択した理由の7割くらいは、教授にある。 日本人ではじめて平和的生存権を提唱した人で、齢は70をすでに超えていた。 専攻は憲法と教育法。 細身ながら豪放磊落で、酒とタバコを愛し、「ビールは僕にとっての清涼飲料水」、「君達を煙に巻くためにタバコをすうんだよ」が決まり文句だった。 いまだに、居酒屋などに行けば、ビールをジョッキでどんどん平らげていく。
 彼の学問的成果からすれば、学閥を作ることは十分可能だったのに、そういうことを一切しない人だった。 僕が最も尊敬する知識人の一人だ。 僕の風変わりな卒論を絶賛してくれた人でもある。
 そんな彼の講義はものすごくオープンなもので、学生に話す機会を多く与えてくれた。 内容も、憲法そのものの話と言うよりは、憲法学において重要な「智」について語っているものが多かった。 そういう講義が大好きな僕は、毎回彼に議論を吹っかけていた。 ほぼ毎回コテンパンにやられていたのは言うまでもない。 ごくたまに彼の言葉が詰まろうものなら、鬼の首をとったような気分になっていた。 この過程で、自分がどれだけ知的に成長したか測り知れない。 
 今でもぱっと思い出す彼の語録を挙げてみると:
 ・人は分けることによって分かる。
 ・常に反対の場合を考える。
 ・人は意味を問う生き物。
 ・くそとみそを一緒にするな。
 ・言葉は魂のきれはし。 言葉の持つ力に敏感にならないといけない。
 ・条文解釈で重要なのは、「何が書かれているのか」よりも「何が書かれていないのか」。
 ・ゼミは知の共有の場。 講義を休むのはいいが、ゼミを休むのは義務違反。 一人で議論を独占するのも義務違反。
 ・難しい言葉をしゃべるのは、本当は分かっていないから。


 などなど、平易な言葉のうちに、素晴らしい含蓄がこもっていた。

 憲法が生活単位で組み込まれている人で、日常生活のどんなものを譬えにしても、憲法の議論をすることが出来る人だった。 個人的に何度も飲みにいったりして、戦争に行ったときの話や、その後に自分が平和的生存権を提唱するに至った流れや、家族の事などを色々と聞かせてくれた。

 彼が話していた内容を書こう。 (テクニカルな話を可能な限り削除して書いています。) 


「北欧、例えばスェーデンでは、日本人の子供が一人学校に来ると、その一人のためだけに日本語を使える人を学校でつけるんだよね。 そのお金は国が負担するんです。 僕は、これを聞いたときに本当にビックリしたんだよ。 人権先進国と呼ばれる北欧でこういうことをしていることから、僕達は教育とは何かを知ることが出来るんですね。 (興味がある人は、岩波新書赤の「スェーデンの挑戦」という本を読んでみてください)
 教育を受ける権利は、基本的人権であって、政治的な理由で否定されてはいけないものなんです。 こどもの権利条約にも、この事は書かれていますね。  何条?  はい、六法開いて。 

 僕は70年代とかに何回か学者の訪問団として、朝鮮民主主義人民共和国に行ったことがあるんだけれど、『子供は国の王様』って言っているあの国では、教育は大学まで完全に無償なんだね。 これは素晴らしいことなんだよ。 僕は、運よく実家にお金があって帝大(今で言う国立大学)に通えたんだけれど、お金がなくて学べない人がいっぱいいたからね。 
 それと、確かに、人民は金日成さんを崇拝していたね。 でも僕は、あの国で過ごしながら「ああ、これは金日成さんの人民崇拝の裏返しなんだな」という風に理解したんだよ。  (こういったポジティヴな見方は、70年代までは知識人たちの間で結構共通のものだったらしい。)

 日本政府の朝鮮学校に対しての政策は、基本的人権の侵害と言えるのかな? 何度も言っているように、分けることによって分かるんだよ。 侵害には、積極的な意味での侵害と消極的な意味での侵害の二種類がありますね。 今、朝鮮学校に対して、私立学校よりも助成金の額がはるかに少ないことについては、積極的とはいえないまでも、消極的な意味で基本的人権の侵害と言えますね。」 


 教育を受けるということの本質を、基本的人権と見なすのか、国家の政治の手段と見なすのか、これが、朝鮮学校の権利に関して考えるときに重要な焦点となると僕は感じている。 日本は、こどもの権利条約を批准している。 けれど、実際問題においては、スェーデンのような国の例は稀で、大体の場合は、その教育の性質が国家の利害に合致するかどうかによって助成の如何が決められているのが現実だと思う。 ただ、それでも私立学校レベルの助成ならばするべきではないのか、と僕は考えている。 あまり知られていないかもしれないけれど、朝鮮学校のカリキュラムは、日本学校のそれに、ハングルと歴史を付け足す形で組まれている。

 朝鮮学校への助成について議論する際に、「在日コリアン形成の歴史的特殊性」について語られることが多い。 僕は、この議論はもっと発展させるべきだと思っている。  コミュニティで多数の学校を形成するくらい多くの人々が外国に移住しているときには、多くの場合、程度の違いはあれ今も昔も根底には貧困や支配などの問題がある。  もっと深い構造的な問題から議論を出発させるべきではないか、と僕は感じている。

 この頃、日本において人権・権利の問題が語られるときに、人権と権利の区別、事情を鑑みて制限すべきかすべきでないかなどの区別が、非常に曖昧だと感じずにはいられない。 「分けることによって分かる」ことの重要性を改めて感じさせられている今日この頃だ。
Comment
≪この記事へのコメント≫
でも彼エロイよ…
2006/01/14(土) 00:55:26 | URL | 文哲 #-[ 編集]
そのエロさも全部ひっくるめて善人。
酒が強くて女好き。あの歳でこれ以上カッコイイ肩書きは無いよな。
2006/01/14(土) 14:10:23 | URL | いるぎょ #-[ 編集]
 ムンチョル、
 まー、健康的ってことだ。 ゼミ最後の飲み会は、、うーむ。


 いるぎょ、
 懐かしい。 その「善人」って用語法。
 本当に仙人みたいなじい様だよね。
2006/01/14(土) 23:13:40 | URL | Taejunomics管理人 #-[ 編集]
I-RIASさん、
 コメントありがとうございます。

 僕なりに考えている事を書いてみますね。
 といっても、この考えていることは、当時の教授にかなり影響を受けているのですけれど。。
 再コメントもよろしくお願いします。
 
 平和的生存権について。 根拠条文は前文です。 ちなみに、前文の法的規範性についても論争のある問題だったりします。それでも載せますね。
 「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」
 これは、ガンジーてきな非暴力主義に根付いた、平和に生きる権利であると考えられます。 I-RIASさんの仰るような奴隷の平和とは違うものだと、彼は主張していました(私が昔授業中にあなたと同じ質問をしたんです)。 よかったら、彼の著書をコピーしていつかお渡しします。
 
 
> 「子どもは王様」というけれど、あの国では
エリート以外は 餓死 拷問 生まれたときから
人として扱われない・・・状態です。
其のエリート達すら 体制によって全てが雁字搦めな

 私がいつも感じているところなのですが、経験から、真実はいつも微妙なところにあるのだと思っています。 両サイドの謂いの中間点のような場所にあった場合が多いようです。
 私も「絶対に違う」とは言えません。 私が過去にピョンヤンに行ったことがあっても、全てを見れるわけではありませんから。 ただそうでないと信じたいですね。

  
 >スウェーデンの教育がそうだとして(手順氏のブログではじめて知った程度の知識なので)、それは スウェーデンの法律・カリキュラムに乗っ取った公立学校の話・・ですよね。それでしたら それは普通に評価すべきものだと感じます。

 ここで彼が一番語りたかったことは、そういう教育を日本で行っていたのなら、朝鮮学校自体存在しなかったのではないか、と言う点でした。 事実、子を朝鮮学校に通わせる親の動機に関して「ハングルを習わせておきたい」というのが一番大きな部分を占めています。



 >しかし、朝鮮学校は 私立というより民説民営のフリースクールの状態でしょうか? 

 私が勉強不足で、I-RIASさんに聞いてみたいのですが、私立学校の定義について教えていただけますでしょうか?
2006/01/17(火) 08:44:34 | URL | Taejunomics管理人 #-[ 編集]
こんばんわ
 私の中で 一度決めた事に対し
どうもルールを侵している・・・と感じたので
勝手な事を書いてすみませんが 自分のコメントを
削除した次第です。申し訳ない。

お返事に割いた時間に応えるためにも 返答は
致しますので しばしお待ちください。
2006/01/17(火) 21:11:48 | URL | I-RIAS #goNXVBho[ 編集]
 そうですか。
 本当に武士道を地で行ってられますね。

 もし、ブログのほうにコメントがしにくい場合は、メールをいただければと思います。
 
2006/01/17(火) 22:27:03 | URL | Taejunomics管理人 #-[ 編集]
はじめまして
>それでも私立学校レベルの助成ならばするべきではないのか、と僕は考えている。

http://www.geocities.jp/kosakaeiji/171014gaikokujinnhojokinn2.htm
朝鮮学校にも補助金が出ていますね。しかし私立の「学校」に補助金は出ているのでしょうか?
具体的な助成金額について調べてみたのですが・・・。

なお、朝鮮学校が「学校」と認められないのは、教育基本法の基準に準拠できないからであって、民族学校だからではありませんが・・・。
2006/01/26(木) 13:21:08 | URL | 河田少年 #PgXQQ0.I[ 編集]
 河田少年さん、コメントありがとうございます。
 資料、とても参考になります。これからもよろしくお願いします。

>私立の「学校」に補助金は出ているのでしょうか?
 と、言いますと、どういう意味でしょうか?

 
 >なお、朝鮮学校が「学校」と認められないのは、教育基本法の基準に準拠できないからであって

 仰るとおりです。 その基準の根底の論理について考えてみるべきだと感じています。 エントリーの言い回しが下手だったせいで、変に誤解を与えているのかもしれません。 もしそうだったら、申し訳ございません。
2006/01/26(木) 13:35:41 | URL | Taejun #-[ 編集]
>と、言いますと、どういう意味でしょうか?

実は、この手の議論を他所のブログでもやったのですが、「差別論者」の提示する「助成金額」を調べてみると、公立学校の生徒一人当たりの金額だったりします。

公立と私立で助成金額が違うのは当然だと僕は思っているので・・・。

すいません、言葉足らずで。
2006/01/26(木) 13:41:15 | URL | 河田少年 #PgXQQ0.I[ 編集]
 そうだったのですか。 「差別論者」という言い方にはちょっと異論がありますがそれはさておき、
 公立学校と同程度のものを求めるのは、さすがに無理があるのではないかな、と思っています。 効率と私立で助成金額が違うのは当然、という謂いにも全く同感です。
2006/01/26(木) 14:19:37 | URL | Taejun #-[ 編集]
この件については・・
実は、僕も調べていて良くわからないのですが、23区が朝鮮学校に出している助成金額が、私立学校のそれより少ないと、具体的な金額を示して反駁された方が一人も居られないのですよ。

本当に「差別」なんでしょうか・・・。
2006/01/26(木) 16:07:57 | URL | 河田少年 #-[ 編集]
 そうなんですか。 何か分かったことがあったら教えてくださいね。
2006/01/26(木) 16:27:22 | URL | Taejun #-[ 編集]
いまさらですが
一応・・・いまさらで申し訳ない。

<私立学校の定義
私立学校法
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S24/S24HO270.html
朝鮮学校は、日本の法では、各種学校という立場にあるようです。
正規の学校ではなく、ナショナルスクールとしての立場というのが
的確だと想われます。
2006/03/01(水) 18:17:23 | URL | I-RIAS #-[ 編集]
 律儀にありがとうございます。
 これからもよろしくお願いしますね^^
2006/03/02(木) 00:21:47 | URL | Taejun #-[ 編集]
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