Taejunomics

            政治、経済、社会、哲学、芸術、文学、スポーツ、マイクロファイナンス、教育などなど、徒然なるままに書き綴ります。 ※お初の方はカテゴリー欄の「Taejunomicsについて」、をご覧ください。
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自白の心理学:今後のライブドア報道その他をよりよく見るために。
 「一日に何回更新してるんだ?」と思われるかもしれませんが、それでも、書くべきと考えた問題は、全て書きたいと思っているので。

 堀江氏らが逮捕され、取調べを受けている一方で、重要な判決があった。 ライブドアの一件を含む、今後のメディアの報道に対して、大きなインプリケーションがあると思うので、覚えている限りで書いておく。 

 1.偽の自白のタイプ
 2.「自白」が作られる環境
 3.容疑をかけられた時はどうするべきか?
 4.結びに

 
 男児連れ去り・誘拐殺人で無罪判決(読売)
 
 愛知県豊川市のゲームセンター駐車場で2002年7月、同市平尾町の会社員村瀬純さん(28)の長男、翔ちゃん(当時1歳10か月)が連れ去られ、殺害された事件で、殺人と未成年者略取罪に問われた元トラック運転手河瀬雅樹被告(38)の判決が24日、名古屋地裁であった。

 伊藤新一郎裁判長は、河瀬被告に無罪を言い渡した。

 
 
 無罪判決の主な理由は、証拠が容疑者の自白以外になく、その任意性・信用性が疑わしかったこと。
 
 以下、順を追って説明していきます。



1.偽の自白のタイプ

 「は? 本人が『やりました』と言ったのならそれで十分じゃない!?」
 というのが、一般的な考え方だろう。 ところが、人間は不思議な心理的生き物で、時に嘘の自白を作り上げてしまう。

 嘘の自白には、大きく3つのタイプがある:

 ・身代わりの自白
 ~自分以外の大切な人がやったと思い込み、偽の自白をつくるケース。 時に、名声を目的として行う場合も多い。

 ・自己同化の自白
 ~周囲の誰もが信じず、かつ、自分の記憶に対して絶対的な自信を持てないようになり、最後には、自分がやったのではないか、と、思い込んでしまい行う自白。 

 ・迎合型の自白
 ~自分はやっていないという考えはしっかりとしているが、取調べのきつさに耐え切れず、行ってしまう自白。

 特に、冤罪の場合には、後者の2つの自白がなされる場合がかなり多い。 



2.「自白」が作られる環境
 
 取調べのための拘留期間は、最長で23日。
 拘留所に入るとき、容疑者は、男女関係なく、一度全裸にされ、身体検査をされ、その後、冷暖房もない独房と取調室を行き来する生活をするようになる。 常に監視の下に置かれ、取調室においては、容疑を強く抱いている取調官からきつい取調べを受ける。
 そんな23日は、気の遠くなるほど、長い期間である。
 かてて加えて、23日というのは、1件につきの期間であって、別件での容疑があれば、46日間拘留することが可能となる。 次々と別件を挙げられたら、容疑者にとっては、無限な時間に感じるかもしれない。 ユダヤ人強制収容所を体験した心理学者、V.E.フランクルなどが体験談とともに話しているように、「先行きが見えなくなると、どんなに屈強な人でももろく崩れる」ものである。

 こんな状況下で、安定した精神状態を保つのは、本当に難しいこと。 

 もともと、人間の記憶というのは曖昧なもので、動揺させるのは容易なもの。 上のような精神状態にある人間の記憶を揺るがすのは、いともたやすい。
 取調官たちは、
 「家に子供がいるんだろう。 全部話せば、すぐにでも釈放なんだから、早く話してみたらどうだ。」
 「親に連絡したんだが、親も泣いていたぞ。 ちゃんと話して、心をきれいにしようじゃないか。」
 「今話さなかったら、後で、もっと罪が重くなるぞ。」
 と、畳み掛ける。

 取調官は、2人いて、多くの場合、片方が強圧的なら、もう片方は懐柔的。 両者が交互にたたみかけ、弱っている容疑者の精神をどんどん揺さぶっていく。

 黙秘権がある。 この黙秘権は、取調べの前にしっかりと伝えられることになっている(はず)。
 けれど、考えてみるといい。
 自分は無実だと考えている人としては、「なぜ、黙っていないといけないんだ。 自分の口で、自分の無実を晴らせるのに。」、と、考えるのが普通の心理であろう。 
 けれど、こうして、むきになればなるほど、自分の記憶に確証をもてなくなったときに、人間はあっさり崩れるようになる。

 こうして、いつの間にか、すでに作られてあった草案と共に、やっていないのだから覚えてもいない「自白調書」が作られていく。


 いったん作られてしまうと、自白調書は裁判において強い力を持つようになる。 
 あとで、正常な精神状態に戻って「しまった!」と思っても、後のまつりなのである。


 
3.容疑者となったときにとるべき対策

 第一に、すぐに弁護士に連絡すること。
 第二に、下手に弁解しようとせず、黙秘を通すこと。 「私は、偽の自白が作られていく心理過程について知っています。 だから、黙秘することにします。」、と、話す。 そして、弁護士が来るのを待つ。
    
 自白調書がもし作られてしまっても、まだ望みはある。

 A.無知の暴露を探すこと。
 自白を決定的なものにする要素の一つが、「秘密の暴露」である。 犯罪を行ったものにしか知りえない情報がある。例えば、犯行時、現場の天気や、とまっていた車など。 それが、自白調書に記載されていると、自白調書の信憑性が一気に高まる。 けれど、この秘密の暴露すら、時には、取調官と共に作り上げられてしまうことがある。
 そういったときに、必要なのは、無知の暴露。
 犯罪を犯したのならば知っているはずの情報を知らないという事を、弁護士と共に見つけること。 それにより、調書の信憑性を下げることが可能となる。

 B.自白調書の不整合を探すこと。
 作り上げたものには限界がある。 どこかに不整合な点が見つかるはず。 それを探す。 

 
 4.結びに
 僕が事実の認識に対してあまりに保守的だという批判があるかもしれない。 けれど、冤罪や、「権力とメディアが結託して作り上げる言説が、事実へと変っていく」現在の状況を見ていると、これくらい保守的なほうがいいと僕は考えている。

 今後のライブドアの報道についてもそうだし、もし、これを読んでくれている人が、いつか容疑をかけられたときのために、エントリーを書こうと思いました。

 
 何かの援けになれば幸いです。
  


 参考書:
 浜田寿美男、「自白の心理学」(岩波新書・赤)
 嘘の自白がどのように作り上げられていくのか、その心理過程を克明に描いています。
Comment
≪この記事へのコメント≫
こんちは。ずぼらな性格の余り、とらばは
使ってなかったんですが、今回ばかりは
打たせてもらいました。
いつも勉強になります。ありがとうございます。
2006/01/24(火) 20:43:51 | URL | taka #-[ 編集]
最近のニュース、今度あったときに簡単に教えて。
2006/01/24(火) 23:44:28 | URL | 文哲 #-[ 編集]
takaさん、コメントありがとうございます。
 記事、大変参考になりました。 ある分野の専門家の視点は、いつも本当に勉強になります。
 
 これからもよろしくお願いします。
2006/01/24(火) 23:45:22 | URL | Taejun #-[ 編集]
 文哲、オーライ。 
 何人かから同じ趣旨のメールが来てるから、図を使ってまた記事も書こうと思う。 
 パワーポイントの再インストールも完了したし。
2006/01/24(火) 23:47:17 | URL | Taejun #-[ 編集]
同感です。
悪くはないとは言いませんが、確定を出すにはまだ早いと感じています。
今回はどうしてこうも流れていってしまったんでしょうか。。。
極端から極端に振れて、中庸がないような気がします。
二者択一すら提示されていないのかもしれません。

(誠に勝手ながらリンクを張らせていただきました、ご報告まで)
2006/01/25(水) 03:20:40 | URL | grande #-[ 編集]
 grandeさん、コメントありがとうございます。
 どうも、日本のみならず東アジアの国々には、中庸を採ると言う見方に乏しいと感じています。 こういった事を防ぐために適正手続があるはずなのですが・・・

 リンク、歓迎いたします。ありがとうございます。
2006/01/25(水) 08:57:35 | URL | Taejun #-[ 編集]
とてもわかりやすかったです。
勉強になりました。
若いのにすごいですねー!
2006/01/30(月) 19:10:30 | URL | 所長 #-[ 編集]
 所長さん、TBありがとうございました。 
 こちらからもさせていただきます。

 お仕事頑張ってください! 目標、達成できたらいいですね。
2006/01/31(火) 00:56:45 | URL | Taejun #-[ 編集]
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ライブドアのホリエモンこと堀江社長は自分と同じ33歳である。だからどうした、ということなのだが、32、3歳という年齢は微妙だ、ということを日ごろ考える。20代ほどがむしゃら
2006/01/24(火) 20:39:29 | ヘルス・コミュニケーション日記
昨日のエントリーに対して、予想以上に多くの方々からコメントとトラックバックを頂き、本当にありがとうございました。このまま私自身は何かを付け加えない方が美しいかなとも思いつつ、皆さんからのコメントやエントリーを拝見していて、思い浮かんだことを書きとどめてお
2006/01/25(水) 07:07:21 | ふぉーりん・あとにーの憂鬱
自白の心理学この本が最近すごく売れているようだ。ライブドアショックの影響かなーなんて考えてみるが考えすぎかな。以前書いたように、私は税理士として税務調査と心理学の関係に興味がある。自白調書って何なんだ!?と思って調べていたら、この本に行き....
2006/01/30(月) 19:18:59 | 所長日記 -柳澤賢仁税理士事務所-
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