Taejunomics

            政治、経済、社会、哲学、芸術、文学、スポーツ、マイクロファイナンス、教育などなど、徒然なるままに書き綴ります。 ※お初の方はカテゴリー欄の「Taejunomicsについて」、をご覧ください。
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忘れた頃にやってきたバリュエーション。
 そういえば、ライブドアの一件で完全に忘れて、ほったらかしにしてました。。。 ちまちまと不定期でやっていきますね。

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 財務諸表を加工する過程で、ごちゃごちゃしてしまう前に、まず、全ての調整の趣旨について書いておく。 常に原点だけ抑えておけば、大きな誤りを回避することもできるので。

 さて、これから、行う財務諸表加工の趣旨は、

フリーキャッシュフロー÷(資本コスト-成長率)=企業価値

 この式を解けるようにすることである。
 (本当は、10年くらい(ベンチャーなら15年くらい?)までは1期ごとのキャッシュフローを現在価値で割り引いて、それ以降について、上の公式を使うようになるのだが、ここではそれは一応おいておきます。) 
 
 以下、
1.フリーキャッシュフロー
2.資本コスト
3.成長率

 について、概要を説明していく。 



1.フリーキャッシュフロー
 フリーキャッシュフロー(FCF)は、当該年度において、「コア事業により得た純利益から税金を差し引いたキャッシュ」から、再投資に必要とされる金額(投下資本IC, invested capitalの略)を差し引いたもの。
 この、「コア事業による純利益―税金」の事を、NOPLAT(net operating profit less adjusted tax)と呼ぶことにする。 

 
 こうすると、x期において、
 
 FCF=NOPLAT―IC

 となる。

 投資など、期末にまとめて行うわけが無いので、期首と期末の間を取ってこれらを算定することが多いようだ。

 さらに、投下資本についてもうちょっと理解を深めていこう。
 投下資本ICは、財務諸表に表示されている投資額―減価償却費である。 なぜなら、減価償却費は、実際にはまだ投資されていない費用だから。 
 
 次に、ICとNOPLATの関係について。
 x期に生じたNOPLATにたいして、IR(再investment rate)の割合だけ再投資に回すと、
 
  IC=NOPLAT×IR

   が成立する。
 
 IC=NOPLAT×IRだから、FCFは、先のFCF=NOPLAT-ICから、

 FCF=NOPLAT-(NOPLAT×IR) 

 FCF=NOPLAT(1-IR)となる。
  
 ここで、
 成長率=再投資率×投下資本に対する利益率
 g  =  IR × ROIC

 とすると、

 FCF=NOPLAT-ICは、


 FCF=NOPLAT(1-g/ROIC)

とすることができる。


 


 2.資本コスト
 少数者持分を除外すると、ほとんどの企業は、負債と株式によって資金を調達している。 この、調達にかかるコスト(≒調達分に対して、融資してくれた人々が求める見返り)を算定する必要がある。

 そのコストは、以下のように計算することになる。

 負債の割合×負債のコスト+株式の割合×株式のコスト=資本コスト

 この資本コストは、負債と株式に対して加重平均がされているので、加重平均資本コスト(WACC, weighted average cost of capital)と呼ばれる。


 さらに、負債に対する支払い(→利子払い)は、費用として、課税対象とはならない。 だから、税率をTと考えると、

 WACC=負債の割合×負債のコスト×(1-T)+株式の割合×株式のコスト

 となる。 税率については、教科書ではよく35%くらいが使われる。 実務ではどれくらいなんだろう? 税務局に問い合わせたら、すぐ分かりそうですね。 大企業の場合は、だいたい同じ値になる(はず)。


 では、WACCを構成する、各要素についてもう少し詳しく述べていこう。

1) 負債、資本の割合
2) 負債のコスト
3) 株式のコスト


1)負債、資本の割合
 割合は、時価ベースのものを使う。 決して簿価を使わないこと。 使ったら、大変なことになります。 
 というわけで、株式と負債の時価を求めていく。
 株式の時価は簡単。 ネットで探してくる。 日本の企業なら、yahoo! Financeとかで、評価対象企業の時価が出ているので、その平均値を使う。 優先株などがあれば、それも同様に。 優先株が発行されているが市場に出回っていない場合は、優先株を社債と見なして、利回りと信用格付から算定する。

 負債の場合は:
 ・短期借入金~借入金額そのものを用いる
 ・社債   ~ネットで探す。 また、市場がある程度効率的なら、格付&利回りが分かれば価格は割り出せる。
 ・長期借入金~可能ならば、利回りと、その企業の債券の格付を探して、それを元に時価評価する。
 ・転換社債 ~社債部分は、上の方法で算定。 転換権部分は、ブラック・ショールズのオプション評価式を使って割り出す場合が多いようだ。 ブラック・ショールズ式は、パソコンで書き表すのが著しく困難。 このサイトでも見てください。http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%83%E3%82%AF-%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%82%BA%E6%96%B9%E7%A8%8B%E5%BC%8F

 こうして、株式と負債の時価総額を割り出して、お互いの比率を知る。

 こうやって、時価ベースで比率を見ただけでは十分じゃない。
  
 なぜなら、現在採られている資本の構成が一時的なものかもしれないため。
 
 だから、同じ産業に属する類似企業の資本構成をいくつか見て、その企業の資本の比率が業界の平均に近づいていくかどうかを考える必要がある。 もっと可能ならば、その会社の情報を新聞やIRなどで入手して、それも判断材料とする。 できれば、インタビューも(だけど、個人投資家に腹を割って話す経営者はまずいないと思われます。。)
 
 こうして、算定に用いる資本構成を推定する。
 面倒くさい作業だが、とても重要なこと。 資本構成は、加重平均資本コストに大きな影響を与えるので、資本構成の推定を誤ると、これまでの計算が水の泡になる。
 
 もちろん、上の事柄を行ったからと言って、寸分のくるいもない資本構成を推定するのは不可能。 慎重な手続によって行うべきことは、エラーを可能な限り小さくすることなのだ。
  
 ※ちなみに、バイアウトファンドなら、この推定はある程度楽かもしれない。 買収をすることにより、資本構成をファンドの意志で決定することも可能だから(と、あるファンドのディレクターは言っていた)。 ただ、バイアウトは不確定要素が多いのでこういったDCF法そのものをあまり用いないようだ。 (EBITDA倍率、市場の成長性、市場における競争環境、マネジメントのパフォーマンスなどから投資の決定をする場合が多い。)



2)負債のコスト
 主なものは以下の通り:
 ・社債~有名企業ならば、社債の格付がBBB格以上の投資適格であるので、それに見合った利回りに、さらに期間を鑑みて若干の調整を行えばよし。 社債の格付がBBB格未満の場合は、かなり難しくなる。 表示されている利回りの信頼性が低くなるからだ。
 ・銀行借入~銀行が貸し出したときの金利を用いる。
 ・リース~リースも負債として算定する。 実質的には借入とたいして変らないから。 リースの対象の金額とリース料から利回りを算定する。


3)株式のコスト
 WACCの算定において、一番難しいのはこれ。
 実務ではCAPMが使われることが多いらしい。 
 CAPMにおいては、

 資本コスト=安全利子率+β(マーケットの期待収益率―安全利子率)
 
 「マーケットの期待収益率―安全利子率」は、マーケットプレミアムと呼ばれる。
 β(ベータ)は、その株式のマーケットプレミアムに対する感応度。

 これらをどうやって算定するかというと:
 ・安全利子率~長期の国債の利回りを用いるのがいいと思われている。 日本だったら20年もの。 理由は、日本においては、ここ数年間超低金利政策が行われていて、10年物くらいだと低すぎるものになってしまうことにある。

 ・マーケットの期待収益率~東証一部上場企業の株価指数であるTOPIXを用いて市場の期待収益率を算定するのが一般的。 こうすると6~8%となる。 ただし、サバイバーズバイアス(survivor’s bias、上のやり方だと市場に生き残っている企業しか推定の対象とならないので、実際の値より高い値になってしまうことにより生じるバイアス)を加味する必要がある。 だいたい2%くらい差し引いて、マーケットの期待収益を求めることにする。 そうすると、市場の期待収益率は、4~6%となる。

 
 ・β(ベータ)~有名なのは、Barra社が算定したベータ。 のっていない場合、もしくは、鵜呑みにしたくない場合は、過去の株式のリターンから回帰分析する手法がとられる。 一般的な回帰分析式、r=α+βR+e を用いてβを求める。 ブルームバーグとか、ヤフーファイナンスとかが役に立つ。 ここで、rはその企業の株式の収益率、Rはマーケットの収益率、eは誤差項。

 推定ベータ=説明変数と被説明変数との間の標本共分散÷説明変数の標本分散
 (ファイナンス理論に証券iのベータは、
 β=相関係数×iの標準偏差÷マーケットの標準偏差。
 混同に注意。)

  
 ちなみに、決定係数は、ベータ推定値の二乗×説明変数の標本分散÷被説明変数の標本分散


 短期的な回帰式によるベータは極端な値になりうるので、回帰式によって求められたベータに以下のように調整を加えることもある。

 調整β=回帰式によるβ×0.66+0.33

 である。


 対象が非公開企業の場合は回帰式も使うことが難しかったりする。 
 そのため、
 1.企業がすべて株式により資金調達されていると仮定する
 2.業界全般のパフォーマンスを調べ、それにより仮定に基づいた株式のベータを求める。 このベータをアンレバード・ベータ(負債によるレバレッジがかかっていないベータという意味)と呼ぶ。

 アンレバード・ベータをβU、本来のベータをβLとすると、

 βL=βU+βU×負債の割合(1-T) 

 が成立する。

 一回ベータをアンレバーして、業界平均のアンレバーベータと同様の値をとらせ、その後、またその企業の財務構成にあわせてレバーをかける。 そうして、βLを算定することになる(公開企業を対象にしても同様の事を行う場合もある。)

 けれど、非公開企業から開示される情報量は限られているので、デューディリジェンスの段階にならないと、ここら辺を割り出すのは難しいのかもしれない。(実務に触れたことが無いので分からない)


 こうしてベータも求めることにより、ようやく
 
 WACC=株式の割合×株式のコスト+負債の割合×負債のコスト(1-T)

 の式全てを満たすことが出来る事を確認できる。



3.成長率
 ようやく最後。
 
 原則として、NOPLATの長期成長率によって算定する。 
 企業の:
 ・これまでの業績
 ・業界の成長性
 ・企業のおかれている競争環境
 ・技術革新の可能性
 ・マネジメントの能力
 ・資本調達計画の信頼性
 を主に鑑みて決めることになる。
 言うは易し、推定するは難し。
 一番、アートが要請される局面ですね。

 ちなみに、佐山展生氏は、「90%は人、特に経営者で決まる」と言っています。 ほんまかいな。
 

 ふう、長い・・・

 また、不定期で更新していきます。 
Comment
≪この記事へのコメント≫
非常に分かり易いバリュエーション講座だと思います。
あとは実践ですが、実際のバリュエーションではイレギュラーなことが沢山発生します。

例えば、本文中に税金に関する記載がありました。
35%とありましたが、通常は法人税と地方税を合わせて39-40%くらいが妥当な線でしょう。
しかし、実際に有価証券報告書を特定の企業から取ってみて下さい。
本当に支払い税金/利益は4割ですか??

繰延税金資産という項目がBSに乗っている場合、税金の支払額は額に応じて免除されます。
実際には繰延税金資産の適用は5年以内(要確認)だったと思うので、いくらがいつ発生しているのかを確認した上で支払い税金計算に反映させる必要があります。

このプロセスを踏まずにプロジェクションを引くと、想定される企業価値はだいぶ乖離するでしょう。

バリュエーションには様々な落とし穴があります。
1件1件、常にカスタムメイドを心がけましょう。
2006/02/03(金) 15:38:42 | URL | MI #-[ 編集]
 MIさん、先日もありがとうございました^^
 カスタムメイド、しっかりと心がけて、ビジネスの論理に沿ったものにしようと思います。 よろしくお願いします。
2006/02/04(土) 07:20:32 | URL | Taejun #-[ 編集]
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