Taejunomics

            政治、経済、社会、哲学、芸術、文学、スポーツ、マイクロファイナンス、教育などなど、徒然なるままに書き綴ります。 ※お初の方はカテゴリー欄の「Taejunomicsについて」、をご覧ください。
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情報の非対称性から考えるメインバンク・システム。
 47thさんがメインバンク・システム論について書かれていたので、触発されて書いてみます。


 僕が経済について興味を抱いた頃には、メインバンク・システムについては囂々たる非難以外あまり聞くことが出来なかったのですが、それでも、このシステムには、何らかの利点があったため続いてきたんだろうな、と、感じていたのを覚えています。

 このエントリーでは、メインバンク・システムの持つ情報生産における効率性について書いてみようと思います。

1.情報の非対称性とエージェンシー理論
2.メインバンク・システムと情報の非対称性によるコスト低減
3.メインバンク・システムが日本にマッチしていたと考えられる理由
4.結びに

1.情報の非対称性とエージェンシー理論

 ファイナンスの学問において情報の非対称性というと、真っ先に思い浮かべるのは、エージェンシー理論です。
 とても平たく説明してみます:
 お金を貸している人(債権者)/出している人(株主)と借りている人(企業)の間には、持っている情報に格差があるため、企業経営者がしばしば投資家に損害を与えるような行動をとることが疑われます。 例えば、ビジネスの論理に沿わないM&A、経営陣の交代を難しくするような経営戦略を採る事などを挙げられます。
 このような行いを制限するために、投資家は様々な手段を講じます。 経営者の監視を外部機関に依頼したり、債務制限条項を盛り込んだりすることが挙げられます。 これによるコストを、モニタリング・コストと呼びます。 
 このモニタリング・コストを削減するために、経営者は自らが投資家の意向に沿った行動をを保証する為に何らかのアクションを行うことになります。 このことによるコストが、エージェンシーコストです。

 企業価値を最大限にするためには、これらのコストを最小限に抑える必要があります。 

 コストを抑えるための手段の一つとして、最適な資本構成(株式資本と負債の構成)を考えることが挙げられます。 こういった事をエージェンシー理論では考えることになります。



2.メインバンク・システムと情報の非対称性によるコスト低減

1)情報生産のインセンティヴ
 メインバンクの特徴は、多くの場合:
・ 最大株主であること
・ 最大債権者であること
・ よって、代表的な利害関係者であること
 の3点と呼べるでしょう。
 
 銀行には当然ながら、企業がエージェンシー関係においてかけるであろうコストを最小限にするインセンティヴが働くことになります。


2)情報生産能力 
 インセンティヴが働くのみならず、メインバンク・システム下における銀行は、企業に関して、人材派遣や長期的関係の維持などを通じ、とても精度の高い情報を保有していたと考えられます。 また、培ってきたノウハウにより、当時の日本においては、どの期間よりも情報の生産能力が高い機関であったとも考えられます。

 これらが作用することによって、企業経営におけるエージェンシーコストが削減されていたと考えられます。 
 それに、利害関係者があまり増えないことも、情報の効率的な生産に役立ち、コストを未然に防いでいたと思われます。
 ただ、僕はメインバンク・システムの盛行期にはランドセルを背負うか背負わないかくらいの年だったので、実感はほとんどありません。。



3.メインバンク・システムが日本にマッチしていたと考えられる理由
 
 単純なところで考えられるのは、つい最近まで、日本の発行市場の未成熟だったことが挙げられそうです。 そのような状況下、企業にとっては、発行市場において資金ファイナンスするよりも、メインバンクをもちそこから資金を調達する方が、必要なコストは低かったのだと考えられます。

 もうひとつ、考えられることとしては、これは、かなり思いつきなのですが、文化的な側面なのでしょうか。 イメージとして、市場型デットファイナンス(社債発行)においては企業と投資家との間にクールな関係があって、相対型デットファイナンス(銀行借入)においては、よりホットな関係があったのかなと思っています。 時に理屈を超えた義理人情が通じそうな関係です(ちょびっとの身近な事実に基づいた想像です)。
 相対型のデットファイナンスは、戦後復興を遂げてきた日本の文化とかなりの親和性があったのではないか、と、これは、妄想に過ぎないのですが感じるときがあります。 


4.結び
 ここまでメイン・バンクシステムの情報生産における効率性について、つらつらと書いたわけですが、総体としてのメインバンク・システムに諸手を挙げて賛成を唱えるわけではありません。
 株の持合などにより、緊密な関係を深めることは、情報の生産においては効率的だったのかもしれませんが、ともすると、経営に対するチェック機能が低下する要因にもなったと考えられます。
 戦後復興期のように、足並みをそろえて必死に成長をしていかなければならなかった時期には、それは問題として顕在化しなかったと思うのですが、経済全体がある程度裕福になるにつれて、足並みをそろえる必要もなくなって、結果、チェック機能の弱さが露呈するようになった。 

 
 システムというのは、子供の靴のようなものなのかと思ったりします。
 子供はその身体や経済状況にあった靴を履くものです。
 成長するにつれて、靴をどんどん変えていく必要はある。
 けれど、靴自体の本来的な機能は、ずっと変らない。
 速く走れることであったり、身体を怪我からまもることであったり。
 足の大きさと目的にあった靴を選んでいくべきなのですよね。
Comment
≪この記事へのコメント≫
TBありがとうございます
個人的にはメインバンクの情報生産機能というのには、いくつかの理由から、かなり懐疑的なのですが、情報の非対称性そのものが解消されなくても、リピート・プレイヤーの関係においてエイジェンシー問題が軽減されていたというのは十分にあり得るのだろうと思います。
ただ、個別の議論もさることながら、最後の子供の靴のたとえについては、全く同感です。老舗の靴や海外ブランドの靴を親のメンツのために履かせても子供のためにはなるとは限りませんよね^^
2006/02/11(土) 08:06:26 | URL | 47th #cyygG8p6[ 編集]
はじめまして
47thさんところ経由で来ました。(たぶん届いていると思うんですが)TBさせていただきました。私は経済学は全く素人なので色々と教えてください。
2006/02/11(土) 08:50:37 | URL | neon98 #zD1wxAVg[ 編集]
 47thさん、コメント有難うございます。
 >個人的にはメインバンクの情報生産機能というのには、いくつかの理由から、かなり懐疑的なのですが、
 そうなのですか。 そのうち、時間があるときにでもその理由についてのエントリーを書いてくださったら嬉しいです^^

 同感してくださって光栄です。
 実情にあったシステムを選ぶべきですよね。
 これからもよろしくお願いします。


 neon98さん、コメント有難うございます。
 LLM留学日誌は、ちょっと前から読ませていただいていました。
 TB、届いていないみたいですが、これからもよろしくお願いします。
 
2006/02/11(土) 09:29:34 | URL | Taejun #-[ 編集]
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