Taejunomics

            政治、経済、社会、哲学、芸術、文学、スポーツ、マイクロファイナンス、教育などなど、徒然なるままに書き綴ります。 ※お初の方はカテゴリー欄の「Taejunomicsについて」、をご覧ください。
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ストックオプション課税について。
 訂正あり:ストックオプションに関する最高裁判例の日を間違えていました。。

 租税法の勉強を始めて1ヶ月強、そろそろ土台の知識も出来始めたかな、と感じてきたので、早速、租税法関連のエントリーを書いていくことにします。 人間、インプットした分アウトプットしてこそ、身につくものなので。

 さて、記念すべきTax関連エントリー、第一回は、ストックオプションです。

 早速オタッキーな話題で恐縮なのですが。。

 まず、ストックオプションについて、ちょっと説明をしておきます。 
 オプション、と言うのは、「選択権」のことです。 ストックは「株」のことですね。
 つまり(?)、ストックオプションと言うのは、「あらかじめ定められた期日・金額で株式を買うことができる権利」の事を言います。
 例えば、どんなに株価が上がっても、100円で株を一単位買うことができる権利、これがストックオプションです。 この場合、株が100円以上なら、権利行使をして、その株を手に入れたほうが得ですよね。  逆に、10円くらいになってしまったら、権利行使をしないで、何もしないということが可能です。 オプションは選択権であって、義務じゃないんですね。 

 さて、このストックオプション、多くの場合、従業員のやる気を出させるために給料代わりに用いられてきました。 しかし、アメリカではストックオプションの発行数はここ4年間で、30%ほど下落しています。 で、日本でも会計基準の変更に伴い、大分減りそうな予感がしています。
 
 オプションの理論に関しては、以前書いたエントリーをご参照ください。

 さて、このストックオプションの課税について、論点となるのは何点かあります。
 それらを分けて書いていくことにしましょう。

 1.給与所得か、一時所得か
 2.貰い手(従業員)はどのタイミングで課税されるのか
 3.適格ストックオプションと不適格ストックオプションの違い
 4.出し手(会社)はどのタイミングで課税されるのか
 5.結び
 
 1.給与所得か、一時所得か
 まず問題となるのは、上記のようなストックオプションを、給与と見なすのか、一時所得と見なすのか、という点です。 

 どちらにせよ課税はされるのですが、所得税法においては、所得はその性質ごとに10種類に分かれていて、その種類ごとでしか、利益と損失を足し合わせることが出来ません。 この足し合わせる事を損益通算と呼んでいます。 さらに、一時所得であると、「(得た金額-経費-50万円)÷2」だけが課税対象となるので、給与所得に比べ、とても有利なわけです。

 普通に考えるとストックオプションは給料代わりにもらっている場合が多いのだから、給与所得と考えるのが妥当そうなのですが、ストックオプションは、上で述べたとおり、そのオプションの持ち手がどのタイミングで権利行使をするかによって得られる利益の額が大きく異なってきます。 そういうちょっとギャンブル的な部分もあるので、一時所得だ、と言えなくもなさそうです。

 ある税務署の課長さんが自分の名前で本を出して、そこで「ストックオプションは一時所得だ」と書いていたので、少なくない企業は、それが一時所得だと思って、ストックオプションを発行していたそうです。 しかし、ある日、国税庁通達(省庁で働いている人に対しては拘束力を持つ命令の事です)によって、ストックオプションは「給与所得だ」とされます。

 多くの企業は、そりゃ、ビックリです。
 結果、このストックオプションがらみの裁判が100件近く、同時期に起こることになります。

 結論から言うと、ストックオプションは、給与所得ということになりました。 
 最高裁判決平成17年1月25日の判決の内容がそうなっているんですね。 判決の理由は大きく、①得られる利益が貰い手の判断によってかなり異なってくるとしても、それを理由に一時所得とはいないし、②ストックオプションが従業員の労働の対価であるということは明らかである、ということにあるようです。

 爾来、ストックオプションは、給与所得、ということになっているようです。
 
 ちなみに、OECDの見解によると、権利行使時の利益は給与所得、譲渡時の利益はキャピタルゲインとして課税すべき、と言うことになっているらしいです。




 2.貰い手(従業員)はどのタイミングで課税されるのか

 さて、ストックオプションが給与所得であるとしても、まだ問題があります。
 それは、どのタイミングで課税をするべきか、と言うことです。
 ストックオプションの性質上、課税がされるべきとされそうなタイミングは3つあります、すなわち:

①権利付与時:ストックオプションを経済的利益と考えて、もらった時点で課税する。だからもちろん、権利を行使(株券取得)した時点では非課税で、その株を譲渡して利益が出たら、その利益分(譲渡額-オプション価格-行使額)に対して課税。

②権利行使時:権利行使によって得られた利益を経済的利益と見なす。 よって、ストックオプションをもらった時点では非課税。 権利行使時、譲渡時にそれぞれ課税する。 

③譲渡時:譲渡したときにいっぺんに課税する。

 これらの分類のポイントは、「ストックオプションによる経済的利益とはなんぞや」という点にありそうですね。

 さて、もちろんと言うか、①~③にはそれぞれ批判があります。
 
 ①権利付与時説に対して:権利付与時に課税するためにはその権利額について価格算定をしないといけないが、ファイナンス理論の教科書に出てくるようなオプションならまだしも、現実のストックオプションには譲渡制限やらがついているし、ストックオプションのための市場も未整備なので、算定は難しい。 それに、権利付与された時点では、実際に経済的な利益は生じていないのだから(まさか、権利は食えませんからねえ)、その段階で課税するのはおかしい。


 ②権利行使時説に対して:権利行使によって得られた利益には、給与の分と、持ち主の権利行使タイミングのうまさ、などが繁栄されていて、経済的利益の性質がわかりにくい。 だから、所得の分類がむずかしくなってしまう。


 ③譲渡時説に対して:少なくとも権利行使時に利益は得ているのだから、その譲渡してやっと課税するのはおかしい。 政策上の理由ならありだけれども。

 
 で、こういう批判の中でベストをさがすのが法律学のわけでして^^;、現状では後で述べますが②と③が採用されています。

 ちなみにアメリカでは、そのストックオプションに関して市場が存在するのなら、付与時に課税し、ないのならば、権利行使時に課税する、と言うことになっているようです。




 3.適格ストックオプションと不適格ストックオプションの違い

 さて、上で述べた、ストックオプションの貰い手が課税されるタイミングは、そのストックオプションが適格か不適格かによって異なってきます。
 法律、特に経済関係の法律では適格・不適格が議論になるのですが、ここでは、適格→何らかの措置を受けること、程度に考えて置いてください。

 ストックオプションが適格だった場合、そのストックオプションは譲渡時のみに課税されます。 権利行使による課税は繰り延べられることになります。 基本的に、課税は繰り延べられた方が有利です。 大きな理由の一つは、現在の100円のほうが将来の100円よりも価値がある、と経済学では考えるからです。(ぱっと考えが浮かばない人は、100年前の1万円と今の1万円を考えてみてください。)

 で、その適格ストックオプションといわれるためには、様々な条件があります。 主に:
 ・2~10年の間に権利を行使しないといけない
 ・権利行使総額が年に1200万円(なんか中途半端な額ですよね)を超えない
 ・ストックオプションの行使価格は、そのオプションをもらった時点での株価より高くないといけない
 ・譲渡制限がある

 というところです。
 一般的に企業内で用いられるオプションは、この適格ストックオプションになる場合が多いのだと思います。




 4.出し手(会社)はどのタイミングで課税されるのか
 一番の問題となるのは、会計上の扱いと税務上のあつかいが異なっていることです。 
 会計においては、ストックオプション付与時にブラック・ショールズ式や2項モデルなどを用いてプライシング(価格算定)をして、その後、その価格を変更しません。 そして、付与した後に過ぎた期間に合わせて、時間が経つ毎に、その分を報酬費用として販売及び一般管理費に計上します。
 
 それに対し、税法では、ちょっと違います。 タイミングごとに見てみましょう。

 考え方のコツは、「ストックオプションの貰い手が課税された時点で、発行した会社の課税関係も発生する」、ということです。


 1)付与時
付与時には会社に対して課税関係は生じません。 ストックオプションは、それをもらった人が給与所得として課税されるまで、損金参入が繰り延べられます。 つまり、ストックオプションをもらった従業員が課税されない限り、企業は、発行したストックオプションを経費として落として税金を減らす、と言うことが出来ないんですね。


 2)役務提供時(平たく言うと、従業員が働いているとき)
  不適格ストックオプションだと、その権利行使日の事業年度において、ストックオプションの適正な評価額分が、損金として参入されます。 期間を分けて計上する会計に比べ、税法では一時期にドーンと課税するわけですね。
  また、適格ストックオプションの場合には、損金には参入がされません。 上で述べたように、適格ストックオプションの貰い手は、譲渡時にのみ課税されるからですね。


 3)株式発行時
 においても、やはり、権利行使においては課税は行われません。 ストックオプションは、法律上は「新株予約権」という分類に属しているのですが、これは資本取引とみなされるので課税されないんですね。




 5.結び
 それにしても、予想通りと言うか、法律関係のエントリーはボリュームがありますねえ^^; というより、ただ単に僕の要約能力が低いだけかもしれませんが。。 わかりやすさと文の短さは一定程度トレードオフの関係にあるのかもしれませんね。
 最近はさらに、給与でない形態のストックオプションも数多くあるので、それに対する話も書こうと思っていたのですが、そろそろ眠いし、読んでくれている方はもっと眠いかもしれないので、ここいらで終わろうと思っています。
 読んでくださった皆さん、ありがとうございました。 コメント、大歓迎です。
Comment
≪この記事へのコメント≫
Taxの世界へようこそ(笑)
租税法の世界は理論面と技術的な実務面の組み合わせがダイナミックに交錯する世界で非常に面白いので頑張ってください。
少し頭の体操ということでいうと・・・
①職務対価という面だけでみると「給与所得」は理論的に妥当と思えるかも知れませんが、長期間にわたる労働のゲインが一時期に実現するという意味では退職給与や不動産キャピタルゲインなどと同じく累進緩和措置をとることには一定の合理性もあるんですよね。
解釈論としては、現行の所得類型をベースにどれに一番フィットするかを考える必要があるのですが、そもそも目的や制度設計の観点から見て妥当かどうかという検証も合わせて考えると面白いことが見えてくると思います。
②付与時課税があれば、当然行使時課税はないという整理をされていますが、理論的には、付与時以後の「行使」も全て証券の「交換」と見て所得(キャピタルゲイン)が実現すると見る方が自然な面があります。現行法がそうなっていないのは、かなりテクニカルな取得価額に対する条文操作に頼っていたはずなので、これも現行法でそうであるということと、理論的にそうあるべきかというのは必ずしも一致しませんよね。
③取引における出し手(会社)と受け手(従業員)の課税処理の均衡というのは、必ずしも自明ではなく、理論的には、全てを資本取引として課税しないという選択肢もあり得ると思いませんか?
実は、こういう場合、税法というのは往々にして、法律上は単一の行為である「エクイティの付与」を「相当額の現金の交付」+「その現金による払込」という複数段階の行為と見なして課税関係を構築していることがあるんですよね。この辺りの税法による法律行為の再構築が、多くの税務訴訟における課税側と私人側の見解の相違の根底にあるということも考えながら読むと面白いかも知れません。
既に立法的に問題が解決されてしまっているところもあるんですが、平成2年頃の商事法務誌上で行われた商法の竹内先生と税法の金子先生の論争などは、多分Taejunさんなら興味を持たれるんじゃないかと思います。
以上、長々とすみません。
2006/05/23(火) 03:31:37 | URL | 47th #cyygG8p6[ 編集]
僕はアカデミックな議論はできません。
しかし、M&Aの際にSOを譲渡する場合、キャピタルゲイン課税ではなく通常の給与所得として課税されるケースが多いです。

どちらにしてもキャピタルゲイン課税にする場合は、実務的には監査法人からのオピニオンレターを取得しておくべきでしょう。

SO付与時に課税が発生するような、有利発行を伴うSOは少なくても上場会社ではあまり見たことがありません。
非上場会社の場合でも、市場価格のない株式のSO発行が有利発行に当たるか否かの判断は税務署ではできないんじゃないでしょうか。

>ちなみに、OECDの見解によると、権利行使時の利益は給与所得、譲渡時の利益はキャピタルゲインとして課税すべき、と言うことになっているらしいです。
2006/05/24(水) 17:22:34 | URL | MI #-[ 編集]
 MIさん、お久しぶりです。 お仕事は順調ですか?

 僕の説明がまずかったようで、申し訳ございません。 実務上SO受取人への課税は、権利行使時OR譲渡時ということで一括されているのですが、説としては3通りあるということを伝えるつもりだったんです。

 将来は、かならず会計士や弁護士さんの協力をうけることになると思うのですが、少なくとも、その話を理解できて突っ込めるレベルにはなりたいと思っています。


 近いうちに、飲みに行きましょうね!

 
2006/05/25(木) 00:34:18 | URL | Taejun #-[ 編集]
こんにちは。
だいぶ前に「自白の心理学」を教えていただいた税理士の柳澤賢仁です。

ごぶさたしてます。
相変わらずお勉強熱心なご様子・・・。
刺激を受けます。

ストックオプションの条文はものすごく読みにくくなかったですか?
私は、蛍光ペンを5色くらい使ってやっと意味がわかったというような記憶があります・・・。

私は財政学からこの世界に入ったので、租税法の勉強はどちらかというと実務で身に付けました。

一口にゼイキンといっても租税法やファイナンスや財政学など、いろいろな見地から考察できるのが、この世界の面白いところかもしれませんね。

ふと立ち寄ったら税金の話をされていたので、コメントさせていただきました。
2006/06/05(月) 11:35:54 | URL | 所長 #oM6tt0T6[ 編集]
 所長さん、お久しぶりです。 ご無沙汰しております。
  
 租税法の条文、読みにくいですね^^; カッコの多いこと多いこと。 将来のためにも馴れておかないといけないので、コツコツと六法と睨めっこしています。

 これからもどうぞよろしくお願いします。
2006/06/07(水) 00:36:18 | URL | Taejun #-[ 編集]
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