Taejunomics

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570億。。 
 税法の勉強をしているからか、今まではアンテナが張られていなかったニュースにもふと目が行きます。


---日経ネットより---
 武田薬品、海外に1200億円所得移転・大阪国税局指摘
 武田薬品工業は28日、医薬品取引を巡り、2005年3月期までの6年間に約1223億円の法人所得を米国の合弁会社に移転したと大阪国税局から指摘されたと発表した。

 移転価格税制に基づく指摘で、追徴税額は地方税を含め約570億円。同税制で指摘された額として過去最高。

 同社は追徴課税を不服として異議を申し立てる方針。武田の吉田豊次取締役らは、単独で販売価格を決定できないことや、合弁会社を共同で設立した会社が昨年、販売価格が高すぎるとして訴訟を起こしたことを挙げ、「ビジネスの実態を踏まえずに処分したことは到底納得できない」と争う姿勢を示した。

 同社は正当性が認められ、追徴税額は返還されるものとみなし、業績は修正しない。追徴分は貸借対照表には固定資産の「長期仮払税金」として計上する。

 武田によると、米アボット・ラボラトリーズと設立した合弁会社に抗潰瘍(かいよう)薬「プレバシッド」を販売しているが、同国税局は武田の利益配分が不当に低く、所得を合弁会社に移したと認定した。 (23:08)

------

 いやあ、おっそろしい。。 
 近年の日本での追徴課税の最高額は、製薬会社グラクソに対する200億円だったと記憶しているですが、今回のそれは、それをはるかに上回ります。

 
 国際的な租税回避に対応する税制としては、大きく二つがあります。
 一つは、タックスヘイブン税制。 外国子会社合算税制ってやつです。
 もう一つは、移転価格税制。 今回のものはこれにあたります。



 移転価格税制はどういうものか、概略を説明します。
 

-----------------

 あなたはある会社の経営者。 自社の収益はかなりのものになりそうで、どうにかその収益全部に法人税(日本では実効税率40%強)がかかるのを免れたい。
 課税が無い海外に子会社を置いて、そこに利益を留保すれば、その子会社には原理的には課税が及ばないので免れることが出来るのですが、それはもろにタックスヘイブン税制に引っかかって、「海外子会社の利益が国内の利益と合算されて課税」されちゃいます。
 
 じゃあ、海外の関連会社に利益を留保しておけばどうか。 
 このときに引っかかるのが、移転価格税制です。



 製造に150円かかって、本来200円で売るべきものを、100円で、関連会社に売っていたとします。 関連会社は、それを200円で、他の会社に売ります。
 この場合、お互いの利益は
 ・自社:-50円/一単位
 ・関連会社:100円/一単位

 となり、自社はこの損失を他の収益と相殺して、法人税を免れ、本来利益に値する部分は、関連会社に留保されることになります。

 移転価格税制は、こういう場合に、「移転価格を本来の価格として」課税することになります。
 すなわち、この場合だと:

 ・自社:50円/一単位

 の利益があったものとして、課税をする事になります。


---------------------

 
 と、まあ、概要はこんなところで。


 この場合の、国外関連者にあたるものは、租税特別措置法66条の4-1と、措令3条の12-1で定められています。 すなわち:

 ①親子会社-一方の法人が他の法人の50%以上の株式を保有

 ②兄弟会社-二つの法人が同一の者によって50%以上の株式を保有されている(この名称、ジェンダー的に問題ですね。。)

 ③実質支配関係にあるもの
  ・他方の法人の役員の半分以上または代表権を有する役員が、もう一方の役員もしくは使用人を兼ねているか、過去にそうであった場合
  ・他方の法人がその事業活動の相当部分をその一方の法人との取引に依存して行っている場合
  ・他方の法人がその事業活動に必要とされる資金の相当部分を一方の法人からの借り入れにより、または一方の法人の補償を受けて調達している場合

 に、二つの法人のいずれか一方が、もう片方の法人に対し事業の方針の一部または全部を決定できる関係にあるものの事です。

 ④内国法人と外国法人との間に、③の実質支配関係と①の特殊関係との連鎖の関係または実質支配関係のみの連鎖の関係がある場合の外国法人

 ⑤内国法人と外国法人とが、同一のものによって実質支配関係と特殊関係または実質支配関係のみによる直接の関係または連鎖の関係がある場合の外国法人



 と、①と②までは結構はっきりわかるのですが、③から⑤までは、かなり微妙なところになるんじゃないかな、と思います。

 今回は、タケダが、合弁会社について「事業の方針を実質的に決定できたか」が争点となりそうですね。

 タケダのHPを見ると、

 当社は、
・ 当社には、TAP社に所得を移転する意図、動機が全く存在しないこと
・ 当該取引価格は、米国における合弁パートナーたる第三者の同意なしには決定し得なかった
もので、その実質において独立企業間価格であり、移転価格税制が適用されるべきものでは
ないこと
・ 当社およびTAP社間の利益配分は適正であり、当局が算定した当社およびTAP社間の利益配分
額は、合理的とは考えられないこと
から、今回の更正処分は、全く納得しがたいものと考えております。


 と、真っ向勝負の構え。 当たり前ですね。。 570億円をタダで取られるのは、さすがにきついですし、勝訴した場合、還付する金額には、結構いい利子(年率4%だったはずです)がついて帰ってくるので。

 どこかの新聞で、その合弁会社が以前タケダに対して商品価格が高すぎるとして訴訟を起こしたことも、タケダ側の主張としていたのですが、ガセネタでしょうかね。。

 
 
 
 判決は当分先の話なので、ゆっくりと見ていこうと思います。
Comment
≪この記事へのコメント≫
最高額といえば
10年前になりますが、日本の税法至上最高額の追徴といえば、興銀の住専向債権放棄に関する損失の否認事件です。否認対象が約3800億、追徴税額が1500億以上ぐらいはあったかと。
一審で納税者勝訴、控訴審で国税逆転勝訴、最高裁で納税者逆転勝訴(http://blog.drecom.jp/fallin_attorney/monthly/200412/)という、なかなか劇的な展開を迎えたりしました。
事実関係と理論面の両面で極めて興味深い事件だと思いますんで、そのうち是非検討されてみて下さい。
と、自分の弁護士1年目の生活の半分を奪った案件なので言ってみたりする。
2006/06/29(木) 22:46:43 | URL | 47th #cyygG8p6[ 編集]
 あ、これ、授業で軽くだけ触れられました^^;
 47thさんも関わっていたんですね。。

 とても画期的な判決とされている、ということだけは聞いています。 少なくとも一学期は租税法のゼミに入る予定なので、その時に勉強してみようと思います。

 ファイナンスを学びに入ったのに、税法にはまっていて(自習時間の半分くらいが税法)、ちょっと不思議な感じです。(笑)
2006/06/29(木) 23:29:10 | URL | Taejun #-[ 編集]
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