池田先生のアセットプライシングは、毎回目からうろこが落ちる授業です(ただし、理解が遅い僕は、たいていの場合、授業後自習している時に目からうろこが落ちる)。
指数型の効用関数は、確率分布に対する投資家のさまざまな選好を内示的に表現しているのですね。 最近、授業で一番感動したことでした。
(以下、その説明。 興味の無い方は飛ばしてしまってください。)
指数型の効用関数は、確率分布に対する投資家のさまざまな選好を内示的に表現しているのですね。 最近、授業で一番感動したことでした。
(以下、その説明。 興味の無い方は飛ばしてしまってください。)
やることの要約:効用関数をいじってテーラー展開すると、上で述べたことが明らかになる。
効用というのは、満足度のことです。
指数関数型効用は、たとえば、
U(W)=-exp(-cW)
とあらわされます。 効用関数が指数(exp(x)は、eのx乗と同じ意味)になっているから指数型効用関数。 ここで、Wは確率変数、cは絶対的リスク回避度です。
この曲線は、エクセルなどで描くと、Wが増すほどU(W)は大きくなりつつも、その割合が小さくなる曲線となります。 ここから、富が増えたときに、人の効用は増大はするのですが、その割合は少しずつ小さくなっていくことが分かります。
ここまでは、一般的にFinancial economicsを勉強している人なら知っていること。
問題はこの先です。
さて、この効用関数の期待値をとり、ちょっといじってテーラー展開してみます。
U(W)=-exp(-cW)=-exp(-cw+cμ-cμ) ←方にcμを足して引いただけ。μは、Wの期待値です。
=-exp(-cμ) exp(-c(w-μ)) (さらに展開)
E[U(W)]=-exp(-cμ) E[exp(-c(w-μ))] (確率変数はWだけなので。)
さて、ここで、exp(-c(w-μ))をテーラー展開(ゼロの周りなので、マクローリン展開というのが正しいですね)。
すると、
exp(-c(w-μ))=1-c(w-μ)+ 1/2(c^2)((w-μ)^2)- 1/6(c^3)((w-μ)^3)+1/24(c^4)((w-μ)^4)・・・
となります。 期待値をとると:
E[exp(-c(w-μ))]
=1-E[c(w-μ)]+ 1/2 E[ (c^2)((w-μ)^2)]- E[1/6(c^3)((w-μ)^3)]+ E[1/24(c^4)((w-μ)^4)]・・・
となります。 これに-exp(-cμ)をかけると、E[U(W)]になるわけですが、-exp(-cμ)は定数になるので置いておけます。 重要なのは、テーラー展開した部分。
テーラー展開した部分、よく見ると、1以外はすべて、確率変数Wの中心(μ)まわりの積率になっているんですね。 ひとつひとつみると、
−E[c(w-μ)]
→平均値と関係の有る部分
+1/2 E[ (c^2)((w-μ)^2)]
→分散と関係のある部分
−E[1/6(c^3)((w-μ)^3)]
→歪度と関係の有る部分(プラスであればプラスにゆがんでいる)
+E[1/24(c^4)((w-μ)^4)]
→尖度(3なら正規分布、3より大きいとよりとがっていて裾が正規分布より厚い)
となっています。
効用関数全体の符号がマイナスだったことを思い出すと(U(W)=-exp(-cW)が元の形でした)、
指数型効用関数は、
平均が高いほど、効用アップ
財のとる値のちらばりが高いほど、効用ダウン
財のとる値の分布がプラスに傾いていれば効用アップ
分布の離れた値が出る確率が大きければ効用ダウン
という、一般的な投資家の選好を見事に現しているのです。
長い間ファイナンス理論の勉強をしてきた方には当たり前のことかもしれませんが、まだ初学者に半分足をつっこんでいるような状態にある僕としては、ものすごい驚きだったんですよね、これ。
「考えた人、すごいなぁ」、と思う反面、指数型で表現してしまうと、分布の特性に対する選好について、有る程度固定的な選好の度合いが与えられてしまうので、もう一声、と考えてしまうわがままな僕がいたりいなかったり。
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