Taejunomics

            政治、経済、社会、哲学、芸術、文学、スポーツ、マイクロファイナンス、教育などなど、徒然なるままに書き綴ります。 ※お初の方はカテゴリー欄の「Taejunomicsについて」、をご覧ください。
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ねじまき鳥クロニクル。
 この忙しい時期にも関わらず、長編小説を読んでいました。

 村上春樹の、ねじまき鳥クロニクル。 全三巻。

 内容は、かなり支離滅裂なのですが、(著者を代弁しているであろう)主人公曰く、


 今回の一連の出来事はひどく込み入っていて、色んな人物が登場して、不思議なことが次から次へと起こって、頭から順番に考えていくとわけがわからない。でも少しはなれて遠くから見れば、話の筋ははっきりしている。それは君が僕の側の世界から、綿谷ノボルの側の世界に移ったということだ。大事なのはそのシフトなんだ。


 
 という事のようです。 


 それにしても、文学のロジックって、すごいですね。 一件支離滅裂な小説の中には、厳然たる文学的ロジックが存在しているわけです。 それがなければただのまとまりのない話で終わった物語が、この通底するロジックのために、物語としてのまとまりを持っているのですね。 一つ一つの、何の関係もなさそうな事柄が、象徴としての意味合いを帯びているのです。 水、井戸、バット、想像すること、セックス、ねじまき鳥、名前、あざ、暗闇、などなど。

 ただ、全体的に遠くから見るとロジックは存在していますが、実際に読んでいるときには何がなんだかよくわかりませんでした。 そう、ナスカの地上絵のように。
 こういう物語を読者に飽きさせることなく、最後まで読みきらせるのは至難の事で、これは、著者の能力のなせる業なのでしょうね。


 現代小説、久しぶりに読みました。 初めての村上春樹だったのですが、面白かったです。 現代小説は、描写、特に人間描写において古典に比べ弱かったので(偉そうでごめんなさい)、あまり好きではなかったのですが、彼の本は楽しく読めそうです。 ドストエフスキーの小説をあらたか読みつくしてしまい、何を読むか迷っていたのですが、当分は村上春樹を読むことになりそうです。


 以下、この人すごいな、と感じた表現。
 
 「何故ならば啓示と恩寵が失われたときに、私の人生もまた失われていたのです。 かつて私の中にあった生命あるものは、それゆえに何かしらの価値を有していたものは、もう一つ残らず死に絶えておりました。あの激しい光の中で、それらは焼かれて灰になってしまっていたのです。おそらく、その啓示なり恩寵なりの発する熱が、私という人間の生命の核を焼ききっていたのです。」 (文脈を知りたい方は、第二巻のP74参照)


 「でもクローゼットの扉を開ける度に、いやおうなく僕はクミコの不在に思い当たることになった。そこに並んだ洋服は、かつて存在したものの致命的な抜け殻の群れだった。」 (第三巻P28)

 「もちろん金に名前はない。もし金に名前があったなら、それはすでに金ではない。金と言うものを真に意味づけるのは、その暗い夜の様な無名性であり、息を呑むばかりに圧倒的な互換性なのだ。」 (第三巻P49)


 「おそらくそのせいで、彼らが声明と言う名で呼ばれている暫定的な状況に最終的に別れを告げるまでに、必要以上に長い時間がかかった。」 (第三巻P128)

 「運命の力は普段は通奏低音のように静かに、単調に彼の人生の光景の縁を彩るだけだった。・・・運命は何があっても必ずその取り分を取っていくし、その取り分を手に入れるまでどこにも行かないのだ。」(第三巻P318)
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2006/11/19(日) 03:04:25 | | #[ 編集]
実は村上春樹マニアな私です。今の気分では、ねじまきが一番好きです。
ねじまきは学部時代に確か15回くらい読みました。
RadioheadのThomも村上ファンだそうで、Kid Aはねじまきがテーマだったらしいです。

しばらく読んでいないので忘れましたが、確かテーマは暴力とカオスだったような気がします。
女神転生というゲーム風にたとえると、カオス(CHAOS)に属するキャラがボリスや主人公の妻の兄(名前が思い出せません)、ニュートラル(NEWTRAL)が主人公、ロー(LAW)がナツメグ一派、本田さん、加納(姉:占い師の方)です。
ねじまき鳥の鳴き声は暴力やカオスを伝えるシグナルみたいなもので、主人公の妻も加納(妹)もカオス側にシフトしていきました。

村上春樹でこの作品はちょっと例外的で、主人公が直面する満たされなさに立ち向かおうとする姿勢が目立ちます。私はこれがかなり好きです。
2006/11/19(日) 18:50:52 | URL | チキンワイヤー #-[ 編集]
鍵コメさん、

了解。 連絡するよ。 けど、休日も最近はお酒を飲んでられなくなっている・・・


チキンワイヤーさん、そうなんですね! 女神転生、懐かしい…
主人公かっこいいですよね。 かなり倒錯した感じと強い気持ちが同居していて、人間として好感が持てます。
2006/11/20(月) 01:00:24 | URL | Taejun #-[ 編集]
初めまして。村上春樹で検索してて辿り着きました。通りすがりでコメントを残していく失礼をお許し下さい。

管理人さんが、「現代小説が、描写、特に人間描写において古典に比べ弱」いと思われるのであれば、是非、安部公房の作品を読まれてみては如何でしょうか?彼が持つ圧倒的な人間や物事への観察眼と異常なまでに精緻な表現力には、何度読んでも驚きを禁じえません。

よろしければ、お試し下さい。
2006/11/21(火) 02:01:30 | URL | 安部公房ファン #-[ 編集]
 はじめまして。
 安部公房は、好きな友人に勧められて、砂の女だけは読んだことがあります。 結局砂の家を抜け出さなかった主人公から見えてくる人間実存のあり方に、はっとさせられますよね。

 おすすめの作品ありますか? ぜひ読んでみたいと思います。 
2006/11/21(火) 13:00:20 | URL | Taejun #-[ 編集]
『他人の顔』『箱男』等が、私の好きな作品でありオススメしたいところです。

現実と理想、実存と虚構、自己と他者といった表と裏の錯綜を巧みに描くことで、人間実存の脆さ(と、救い)を明らかにするというテーマはこの作家が一貫して持ってるものだと思いますが、その設定と過程の描写が上記2作品は秀逸です。

また安部公房の魅力の一つは、何とはなしに見過ごしている事柄を、ハッとさせられる表現で抉り出す部分にあると思います。以下、私がいいなぁと思った表現。

「光というやつは、自身透明であっても、照らし出す対象物を、ことごとく不透明に変えてしまうものらしいのだ」(他人の顔)

「人間というヤツは、他人の目を借りることでしか、自分を確認することも出来ないものらしい」(同)

「美とは、おそらく、破壊されることを拒んでいる、その抵抗感の強さのことなのだろう。再現することの困難さが、美の度合いの尺度なのである。」(同)


厚かましく長々とコメントしてしまいました。このブログ、とても面白く、また考えさせられますね。過去ログを拝見させて頂きましたが、とても刺激を受けました。
それでは。
2006/11/22(水) 13:52:55 | URL | 安部公房ファン #-[ 編集]
 ありがとうございます! 早速購入して読みますね。 楽しみです^^
 
 ブログについて褒めていただけるとうれしいです。 もし良かったら他の方にも勧めてみてくださるとうれしいです。

 文系ネタはたまにちゃんと書いているので、今後ともどうぞ宜しくお願いします。


 
2006/11/23(木) 15:49:21 | URL | Taejun #-[ 編集]
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