Taejunomics

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ファイナンス理論からの10のメッセージ2:リスク・リターン・効用
 「不入虎穴、不得虎子」 後漢書-班超伝

 ファイナンス理論からのメッセージ第二回は、リスク・リターンと効用についてです。
 
 ファイナンス理論の基本を知るためには、一番重要なところといっても過言ではないかもしれません。 ちょっと説明が長くなってしまいますが、ファイナンス理論にあまり馴染みが無い人は、じっくりと読んでみてください。

 Exceprt: ファイナンス理論の基本2大原理は、リスクとリターン。 この二つが与えられた時、効用関数を介して、価格付けがされる。 特定のリスクとリターンはトレードオフの関係にある。


1.リターン
 1)意味
 2)なぜ率で表示するのか
 3)期待収益率ってなに?

2.リスク
 1)意味
 2)表現の仕方

3.リスク・リターンと効用
 1)問題はリスクとリターン
 2)効用と効用関数
 3)確実性等価
 4)効用関数と価格
 5)ハイリスク・ハイリターン 
 
4.含意


 1.リターン

 1)意味
 リターンというのは、投資の見返り、すなわち、収益のことです。 英語の辞書の一番上に出てくる、「帰る」という意味で使っているわけではありません。 



 2)なぜ率で表示するのか

 ファイナンスでは、多くの場合収益を「率」で表示します。 リターンという言葉も、多くの場合、rate of returnの略として用いられています。 なぜ率表示するのかというと、二つくらい理由がありそうです:

 ①投資効率を知ることが出来る
 たとえば、同じ1万円の収益でも、100円をつぎ込んで得られた場合(万馬券が当たった場合ですね)と、5千円をつぎ込んで得られた場合(2倍の馬券を5千円分購入)とでは、全然意味合いが違うわけです。 もちろん、率ベースでなく、額ベースで表示する必要も時にはありますけれどね。


 ②計算に便利
 額ベースで計算をすると、世の中の全ての投資が相当なばらつきを示してしまうことになります。 たとえば、ある個人投資家のリターン(収益)はプラスマイナス100万円で推移しているのに対し、ある機関投資家(投資信託とかですね)のそれは、プラスマイナス何百億円で動いたりするわけです。
 しかし、率ベースにすると、その散らばりをだいぶ抑えられることになります。 これは、投資のパフォーマンスを比較する際にとても便利なのですよね。 後に説明する、リスクの度合いについて判断する際にもとても重要となってきます。
 そして、もう一つ。 株価などはマイナスの値をとることができないのに対し(たとえば株価マイナス100円なんてないわけです)、リターンはマイナスの値をとりうるんですね。 (たとえば、100円で買った株の価格が10円下がり90円になったら、リターンはマイナス10%です。 さらに、対数というもので収益率を表示すると、マイナス無限にもなりえます。 この性質は、ここでは説明しませんが、ランダムウォークを考える場合に、とても重要なものとなってきます。 )
  


 3)期待収益率ってなに?

 『期待収益率』という言葉があります。 これも、独特の用語です。 『期待』という言葉は、統計学で使われているのですが、「平均的に取りうる値」のことを『期待値』と言うんです。
 たとえば、半分の確率で50%、もう半分の確率で150%のリターンを得られる投資の期待収益率は、100%となります。
 そんなの当然のことで、全然難しくないんですよね。 ですが、専門用語的な言葉遣いをされると、何か高尚で難解な概念のように思われてしまうのは、不思議ですね。

 


 
2.リスク

1)意味
 ファイナンス理論においては、リスク(日本語に訳すと「危険」)という言葉について、ちょっと独特の定義をしています。 

 第一回でも少し述べましたが、リスクというのは、「収益(率)が変動する割合」のことを指しています。 たとえば、ある1億円の投資について

 50%の確率で:+5%のリターン=元手1億円に加え500万円の純利益
 30%の確率で:+3%のリターン=300万円の純利益
 20%の確率で:+2%のリターン=200万円の純利益

 が予想される時、この投資家さんはどの状況でも利益を得られることになっています。 ですが、このような状況においても、ファイナンス理論的にはリスクは存在するわけです。 (ちなみに、下落のリスクのみを指す場合には、『ダウンサイドリスク」という言葉を使います)

 なんでこんなばらつきでさえもリスクなのでしょうか。 上で書いた期待収益率について考えてみるとその意味合いが分かってくるかもしれません。 上の投資の期待収益率は、3.8%ですよね(50%×5%+30%×3%+20%×2%)。

 ということは、平均的に3.8%のリターンを見込める投資なのに、2%や3%しかもらえない状況がありうるわけです。 だから、上のような変動についても、リスクといって問題は無いのだと思います。

 
2)表現の仕方
 リスクは、上での述べたように、予測できる収益率のぶれ、すなわち、期待収益率を基準とした際の、将来のリターンのばらつきを意味します。 これを数字で表すためには、標準偏差や分散という数学的な考え方を用います。 (分散は、それぞれのありえる値と期待値の差を二乗して、それに確率をかけて足し合わせると出ます。 標準偏差は分散の平方根です。 EXCELを用いれば、Varという関数で分散を、Stdevという関数で標準偏差を計算できます。)

 



3.リスク・リターンと効用
 
1)問題はリスクとリターン

 ファイナンス理論においては、多くの場合、ものの価値について、リスクとリターンを用いて判断をします。

 よく考えてみると、これってすごいことなんですよね。 ある資産の価値について判断するのに、たった二つの数値だけ分かればいい、と言っているんです。 もうちょっとざっくりと言ってしまうと:

 「全ての価格付けの問題は、リスクとリターンの問題に帰着する」

 ということなんですね。 この発想から多くのファイナンス理論は端を発しているので、これを定式化したマーコヴィッツさんがノーベル賞を受賞したのは当たり前のことかもしれません。


 このような仕組みについて分かっていると、下のような話がどれだけ胡散臭いか分かることが出来ます。 さて、下の人の話の問題点はどこにあるのでしょう?

 「お客さん、このプロジェクトに出資しませんか? なんと、平均的に、年30%の利益が出てくるんですよ。 普通に国債を買ったって2%くらいなんだから、断然こっちのほうがいいですよ!」

 
 問題点は、そうです、この人はリスクについて何の言及もしていないことにあります。 もし、このプロジェクトが無限責任で、場合によっては破産するくらいの損失をたたき出すとしたら、あなたはこのプロジェクトにお金をつぎ込むでしょうか? 

 世の中には、この類のことがものすごく多いのですよね。 リスクについて、明示的に表示がされていない場合が。 リスクと言うのは、多くの場合マイナス要因でしかないので、それを明示的に示さないことは、売る側の人々にとっては都合がいいわけです。 ですが、買う側の僕たちは、常にこのことを意識しておく必要があると思います。





2)効用と効用関数

 一般的な人(決して皆とは言っていません)は、高いリスクより低いリスクを、また、低いリターンよりは高いリターンを好みます。 ある投資案件について、同じリターンならより低いリスクの投資を、同じリスクならよりリターンの高い投資を望むわけですね。

 じゃあ、リスクはより低いけれども、期待リターンはより高い投資がある場合はどうでしょう? 
 たとえば、こんな状況です:

 投資案A: 100%の確率でリターン5%
 投資案B: 50%の確率でリターン18%、50%の確率でリターン3%

 答えは、、、場合によりけりです。 その人の選り好みによります。 もっと言うと、そのリターンとリスクを考慮している人が、どちらの投資からより高い満足を得られるかによって決まります。 
 これまたあたり前のことですよね。 投資から得られる満足度がより高い投資を選ぶ。 経済学などでは、この満足度のことを、効用といいます。 そして、ある物事から平均的に得られる効用を、期待効用といいます(思い出してください。 平均的な値のことを期待値と言いましたよね)。 
 
 「じゃあ、その満足度ってどうやって決まるの?」、という問いに答えるために作られた数学的仕組みが、効用関数です。 効用関数は、より高い効用に対して、より高い数字を返す関数の総称です。 

 たとえば、上の投資案を効用関数に当てはめると

 投資案Aの期待効用:40
 投資案Bの期待効用;50

 と言う風に数字が出てきて、結果として、この人は投資案Bを選ぶことになります。

 効用関数は、人によってまちまちです。 いろんな形の効用関数があります。 これは、一般的な言葉で表すと、蓼食う虫も好き好き、十人十色、ということです。 




3)確実性等価

 さて、効用関数が分かると、こんな質問に対する答えがわかるようになります。
 
 50%の確率で1200万円返ってきて、50%の確率で900万円しか返ってこないプロジェクトがあるとします。 あなたにとって、これと同じくらいの価値をもつ、確実なプロジェクトの価格はいくらですか?

 答えは、そうです、効用関数を使って、このプロジェクトと同じ効用をもたらしてくれるプロジェクトを割り出せばいいのです。
 
 たとえば僕だったら、この投資には、1000万円の確実な投資と同じ価値をつけます。 それは、ファイナンス理論的に言うと、僕の効用関数からチキチキチーンとはじき出されるのですね。 

 この1000万円のことを、「このプロジェクトの確実性等価」と呼びます。 「このリスクのある投資、リスクが無いのならいくらですか?」という問に対する答えが、確実性等価なんですね。 
 
 


4)効用関数と価格

 効用関数を使えば、リスクとリターンを分かっている場合に、ものの価格を決めることが出来ます。 より具体的には、「一般的な投資家」というものを想定して、その効用関数をもとに、価格付けをするわけです。 (このような価格付けの方法を「絶対的価格付け」、と言います。 反対語は相対的価格付け、なのですが、これについては、後の回で書くことにします。 )


 ちなみに、天候デリバティヴだとかの金融商品を作る際には、売り手が勝手に効用用関数を作って、それをもとに価格を決めています。 エンロンなどがこういうことをしていたのですが、これがどれだけ危なっかしいことかは推してはかれますよね。
 もし怪しげな金融商品のセールスを受けて、それを買いたくなかったら、まず、「この商品のプライシングにはどのような効用関数を使っているのでしょうか?」と聞いてみましょう。 これでたいていの場合は撃退できるはずです。
 

 
 
5)ハイリスク・ハイリターン

 ハイリスク・ハイリターンという言葉があります。 「リターンが高ければ、その分リスクも高いものだ」という意味ですね。 これは、少し不正確です。 より正確には、こう書くべきですね:

 「リターンが高ければ、その分ある種のリスクも高くなる。」

 その「ある種のリスク」については、後の資本資産価格理論の部分で書こうと思います。



4.含意

 リスクとリターン。 
 物事について判断する際に、常にこの二つを意識することは、とても重要なことだと思います。 特に、人は、見たいものを見る生き物ですから、ある事について、リターンの側面だけを見てしまいがちです。 ですが、より賢く生きるためには、リターンのみならずリスクも考慮しなければいけないんですよね。 特に、高いリターンを望む場合には、その分リスクも高いわけですから。

 人生についてだってそうです。 なにかの事業を成し遂げるためには、必ずリスクを負わないといけない。 望むものが大きいほど、リスクは大きくなるわけです(後の回で述べますが、ある種のリスクはなくすことが出来ますが)。 給料取りとして生きることと、起業して経営者として生きるのとではとるリスクの量が全然違っているのです。 その分、起業家のリターンが大きいことは当たり前のことなのですよね。 
 
 
 もし今まで、リターンの側面からしか物事を判断していなかったのなら、リスクの側面にも注意をしてみてください。 いいことがあるはずですよ^^



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