Taejunomics

            政治、経済、社会、哲学、芸術、文学、スポーツ、マイクロファイナンス、教育などなど、徒然なるままに書き綴ります。 ※お初の方はカテゴリー欄の「Taejunomicsについて」、をご覧ください。
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ファイナンス理論からの10のメッセージ3:割引率。
 正直爺さんの言うことと、狼少年の言うこと、どちらを割り引いて聞きますか?

 ということで、ファイナンス理論からの10のメッセージ第3回。 今日のテーマは、割引率です。

 1.なんで割り引くのか
 2.どれくらい割り引くのか
 3.どうやって割り引くのか




1.なんで割り引くのか

 一年後に入って来るであろう1100円を、例えば、現在に換算するとします。 この1100円は、現在において1000円だったとします。 このように、「将来のキャッシュフローの価値を、現在の価値に換算する事」を、割引といいます。 割り引かれた後の1000円の事を、現在価値、または、割引現在価値、または、割引後現在価値、と呼びます。
 
 なんで割り引くのでしょうか? ぱっと考えても、二つのことが考えられます。


1)放っておいても、現在の1000円の価値は増えるから。
 例えば、どこかの口座に入れておけば、利子がついて、少なくとも今の1000円よりは高い金額になっているのだから、将来のお金を現在に戻すとき割り引くのは当然と考えるのですね。
 こういった考え方は、経済学で言う機会費用という概念につながるものでもあります。 
 リスクを一切(もしくはほとんど)負わなくても、ある程度の収益率は望むことが出来ます。 例えば、上の例で言う、銀行預金などでしょうか(特に少額なら銀行が破綻しても預金は保証されていますし)。 このような、「リスクがなくても望める収益率」の事を、安全利子率といいます。 
 安全利子率は、様々な要因によって決定されていますが、究極的には、その社会の生産能力(正確に言うと、資本の限界生産性)や人々の効用に依存していると言われています。



 2)将来のことは不確実だから
 上で述べたのは、安全利子率でしたが、実際の投資には多くの場合リスクが存在しています。 将来、もしかしたら、1円も得られないようなことがありうるわけで、そう考えるのなら、将来の1000円よりも、現在の1000円の方により価値があるわけです。 だったら、将来の確定していないお金の流れ(キャッシュフロー)は、割り引いて考えるべきですよね。
 また、世の中には、ある程度までにハイリスク、ハイリターンの関係が成立しているはずなのですから、リスクが高い投資においては、必然的に収益率が高くなります。 だったら、リスクの高い投資のほうを、より多く割り引くべきですよね。 このように、安全利子率を超過して、背負ったリスクの分要求される割引額(率)の事を、リスク・プレミアムと呼びます。
 




2.どれくらい割り引くのか

 割引に使う比率の事を、割引率と言います。 例えば、割引率が年に10%なら、1100円の一年後のキャッシュについては、1100÷(1+0.1)=1000円に割り戻す事になります。

 割引率は、期待収益率と表裏一体の関係にあります。 どういうことかと言うと、

 期待収益率:現在の投資から、将来のリターンについて考えるときに使う率
   割引率:将来のキャッシュフローを、現在に割り戻すときに使う率
 
 なのです。 これまでの説明で、期待収益率と割引率はどちらもリスクと比例する関係にある事を確認してきたので、よく理解していただけると思います。 じゃあ、リスクとリターンの比例関係がどの程度かという問に対する答えは、何を通じて決定されるのでしたっけ? 

 さて、冒頭の、正直爺さんと、狼少年の言うことを、どれだけ割り引いて考えるのか、という問に戻って見ましょう。

 他人の言うことですから、どんな場合であっても、多少は割り引かなければいけないでしょう。 だからといって、正直爺さんと狼少年のいう事を、同程度で割り引くことはあまり無いと思います。 僕だったら、嘘と本当の変動の激しい(=ファイナンス理論的に言うと、リスクの高い)狼少年の言うことについては、かなり割り引いて考えることでしょう。
 
 大切なのは、この常識です。 異なったものを、等しく割り引くことなんて、ほとんどの場合ありえないわけです。 ですが、現実の世界では、多くの人々が、それぞれ勝手に割引率をつけて、勝手にキャッシュフローを割り引いています。 そういう人たちに騙されないでくださいね。


 
 3.どうやって割り引くのか

 よく知られているものには、三つくらいがありそうです。
 
 1)割る
 2)引く
 3)引いて割る

 、、、「まんまやんか」って怒らないでくださいね。 ちゃんと説明します。 

 1)割る
 さっきのちょっとした数字の例では、これを用いています。 例えば、割引率を10%として、1100円を、1+10%(=1.1)で割って、1000円とした方法です。

 2)引く
 1100円について、安全利子率分とリスクの対価の分として、100円をそのまま引いて、1000円を現在価値とする方法です。


 3)引いて割る
 1100円について、リスクの対価の分を引いて、それを安全利子率で割る方法です。 たとえば、安全利子率が5%でリスクの対価が50円なら、

 1100-リスクの対価=1050

 この1050円を(1+5%)で割り引いて、結果は、1000円。

 ※さてもう一つ問題。このときの1050円(リスクの対価を差し引いた、もともと不確実なキャッシュフロー)は、何と呼ぶのでしょう? 
 

 というように、3種類があるわけですが、結論は、同じです。 現在価値が1000円になるようにしています。 さらに、リスク中立確率を使うといった方法もあり、それはどちらかと言うと3)に属するのですが、ここでは割愛します。

 というわけで、ここまでが、割引率のお話でした。


 頭の体操という事で、問題です(これの方が、知識のシェアに良さそうな感じがしたので、これからは問題をつけていきますね)
 

 練習問題

・(本文より)リスクとリターンは比例関係にあるが、ファイナンス理論においてその程度を決定する要因はなんでしょう?

・(本文より)リスクの対価分を差し引いた、もともと不確実なキャッシュフローの呼び名はなんでしょう?

・上の話を総合すると、収益率・割引率は二つの部分に分けることができる。 その二つとはなんでしょう?

・金融機関では、相手によって貸し出しの利子率が異なっています。 これは、ファイナンス理論で言うと、どのように説明できるでしょう?

・ここに100万円があります。 その100万円を、期待収益率が年10%の安全な資産に投資した場合と年20%のリスクのある資産に投資した場合、それぞれの予想キャッシュフローの割引現在価値はいくらになるでしょう?


 考えてみよう

・安全利子率は年率5%とします。 ここに、いつまでも年に絶対1円を支払ってくれる資産があるとすると、この資産はいくらでしょうか? インフレなどは考えないでください。

・割引率が負の値をとることはあり得るのでしょうか? 理由をつけて考えてみてください。 これもインフレなどは考えないこととします。

・ファイナンス以外での、身近な割引について、考えてみてください(例えば、本文の正直爺さんと狼少年)

・世界が50年後に無くなってしまうとします。 この場合、割引率はどうなるでしょうか? 理由をつけて考えてみてください。
Comment
≪この記事へのコメント≫
ちょっと疑問なのですが、“リスクとリターンは比例関係にある”というのは、「正の相関がある」という意味でしょうか? それとも、CAPMのように「1次関数の関係が成り立つ」という意味なのでしょうか?

今の段階では、前者で捉えると、問題の解答は

(1) 需要と供給の関係。特に、需要側の効用関数から決まる、効用一定が定める曲線が右上がりなところなのではないでしょうか。

(2) 確定的なキャッシュフロー? 

(3) 安全利子率とリスクプレミアム

(4) 債務不履行になるリスクが、貸出先にあります。そのリスクプレミアムの部分が貸出金利の差になるのかも。

(5) 問題の正確な意味がわからないのですが、「元本のr%を配当に回す単利商品」ということですと、それぞれのキャッシュフローは (-100, 100*r, 100*r, 100*r, ・・・)

この割引現在価値は、-100+ 100*r/r=0なので、いずれのキャッシュフローの割引現在価値も0になると思います。
2006/12/23(土) 13:34:06 | URL | Henry #ZBTNIsEw[ 編集]
 Henryさん、こんばんは。

 リスクとリターンに正の相関があるかと言うと、「多くの場合には」Yesです。 ですが、必ずしもそうではないのですね。
 というのも、中には、個別的には証券のボラティリティ(リスク)が高くても、それが保有ポートフォリオに対し負の相関を持っている場合には、その証券のボラティリティの高さはかえってありがたい性質のもののため、市場においては、高く評価されます。 結果、そのような証券においては、ハイリスクローリターンが成立するのです。

 つまり、単なるリスクでなく、そのリスクの性質によって、ハイリスク・ハイリターンになるか、ハイリスク・ローリターンになるのかが決まってくるのですね。 その考え方の延長が、CAPMです。 CAPMにおいては、各証券の価格は、市場ポートフォリオとの相関の指標であるベータについて一次的な線形関数が成り立ちますすが、これは、リスクのうち根源的なリスク(ハイリスク・ハイリターンとなるリスク)は、市場リスクであるという考え方から成り立っています。

1)はそうです。 効用関数の形状によって、リスクとリターンの関係が決まってきます。

2)は、確定的なキャッシュフローでも正しいのですが、学者さんたちは確実性等価と呼ぶみたいです。

3)そのとおりです。 

4)そうです。 借り手のデフォルトリスクに対してプレミアムを求めるため、貸出金利に変化がでてくるのですね。


5)そうです。 NPVでも将来キャッシュフローの現在価値でもよいのですが、どの投資プロジェクトに資金をつぎ込んでも、その現在価値は等しくなるのですね。 これって、個人的には、結構わかっていない人が多いと思います。。


答えを下さる方がいて、ほっとしました^^; これからもよろしくお願いします。
2006/12/24(日) 20:10:51 | URL | Taejun #-[ 編集]
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