Taejunomics

            政治、経済、社会、哲学、芸術、文学、スポーツ、マイクロファイナンス、教育などなど、徒然なるままに書き綴ります。 ※お初の方はカテゴリー欄の「Taejunomicsについて」、をご覧ください。
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ファイナンス理論からの10のメッセージ4:共分散。
 干天の慈雨、という言葉があります。 日照りに困っているときに降る時の雨から転じて、人が困窮しているときに助けてくれる人をさす言葉です。
 全く違う二人がカップルになることがよくあります。 
 みんなと違う事をする人を採用したがる会社があります。
 ファイナンス理論を勉強した人は、これらのことについて、ある種の理論的な説明を出来るようになるかもしれません。

 というわけで、ファイナンス理論からの10のメッセージ、今回は、共分散についてです。

1.分散と標準偏差って何?
2.共分散について考えてみる

 要旨:分散と標準偏差は、リスクの指標。 ある種のリスクは、色々な資産を組み合わせると消すことが出来る。 その理由は、資産の収益は同じ方向に動かないから。 資産が異なる動きをする性質は、相関係数や共分散というもので表現される。 相関・共分散は、ファイナンス理論を理解するのにもっとも重要な考え方。


1.分散と標準偏差って何?

 共分散について話す前に、分散と標準偏差について書いておきます。 これも、名前はかたそうなのですが、別に難しい概念ではありません。

 分散も標準偏差も、「ある不確実な事象の散らばりの尺度」です。 ファイナンス理論ではこれらがリスクの尺度であることは説明しました。 分散は、エクセルでVAR、標準偏差は、STDEVという関数で求めることが出来ます。 こういう計算が簡単に機械で出来る世の中なので、具体的にどう計算するのか、と言うのはここでは触れません。
 
 ただ、分散と標準偏差の関係は覚えておいたほうが良さそうです。
 標準偏差の2乗=分散 です。 

 標準偏差・分散のイメージが湧きにくいかもしれませんね。
 
 生活で使うレベルの知識(?)で言うと:

 不確実なものといえども、95%強の確率で、±「2×標準偏差」の間に定まる。

 これだけ覚えておけば十分です。 具体例を考えて見ましょう。
 

 阪神の年間勝率は平均して5割、標準偏差1割とします。 巨人の年間勝率は平均して5割、標準偏差0.5割とします。
 この場合、95%の確率で、
 阪神の勝率は、3割から7割の間
 巨人の勝率は、4割から6割の間

 

 となるのです(あくまでも問題の設定が正しいとしたらですよ)。 勝率は0から10割の間しかとらないし、勝率が正規分布するのか問題があるのですが、まあ、イメージという事で。


 さて、これで分散と標準偏差についてはイメージが出来たとして(?)、次に移りましょう。



2.共分散について考えてみる

 今までは、一つの資産だけを考えてきました。
 この次からは、二つ以上の資産を考えて見ます。 さしあたり、二つを考えます。

 あなたが、二つの資産、ソニーの株と土地を買うとします。 このような、資産の組み合わせを、ファイナンス理論では、「書類かばん」、あ、間違えました、「ポートフォリオ」、と呼びます。 けど、ポートフォリオの訳は、書類かばんで合っています。 イメージとしては、株だとかの権利書が入ったかばんですね。 「ポートフォリオ選択」とかいうとすごそうに聞こえますが、やっていることは、何を買うのか考えることに過ぎません。


 ここで、ソニーの株の収益率の標準偏差が10%、土地のそれが3%だとして、両方に1000万円ずつつぎ込むとします。 このとき、ポートフォリオ全体で見たときの収益率の標準偏差はいくつになるでしょうか?

 3%+10%で13%という人がいるかもしれませんが、これはヘンですね。 何がおかしいかって、こうやって足し算してしまうと、例えば、100円ずつ色んな資産を買ったら、標準偏差がものすごく大きくなってしまうからです。
 
 じゃあ、二つの資産に同じ金額をつぎ込んだのだから、(3%+10%)÷2=6.5%、という人がいるかもしれません。

 けれど、これも、ほとんどの場合正しくありません。 
 
 なぜでしょうか?


 それぞれの収益がこんな状態にあるときを考えて見ましょう(簡単のための数値を使っているので、この例で計算しても標準偏差は10%になりません。念のため)。

      状態A    状態B   状態C
 ソニー  150万円  ―10万円   80万円
 土地   -20万円  160万円   40万円     

 個別の資産を見ると、収益は場合によってかなりばらついていますよね。 ですが、ポートフォリオ単位でみるとどうなるでしょう。

           状態A    状態B   状態C
 ポートフォリオ  130万円  150万円  120万円
      
  
 と、かなりばらつきが抑えられています。 このことからも、ポートフォリオの標準偏差は、単純に足して2で割ったようなものにはならないことは明らかです。

 こうなる理由は、そうです、ソニーと土地の収益が一緒の方向に動いていないからです。 だから、上の例で言うと、土地の個別収益のパフォーマンスはソニーより平均して良いわけではないのに、土地を買うことに意義が生じてくるわけです。 
 
 同じ方向に動かない資産を組み合わせることによって、全体のリスクを下げることが出来るんですね。 これは、ものすごく、ものすごく、ものすごく重要なことです。 ファイナンス理論の真髄のひとつだと思います。

 今なら、僕がこれまでのエントリーで、「リスクとリターンは、『多くの場合』比例する」と書いてきた理由を分かっていただけると思います。 全体としてのリスクを下げてくれる資産(すなわち、他のものとの相関が低い資産)であれば、その個別的なリスクが高くて、リターンがあまり高くなくても、人々は、その資産を受け入れるのです。 結果、高(個別)リスク・低リターンという資産も存在しうることになります。


 辛い時の手助けは、それが僅かなものであっても嬉しいのです。 日照りの雨はありがたいのです。 周りと違う事をしようとする人間には、価値があるのです。 全くタイプの違う人々が恋人になることには、はっきりとした合理性があるかもしれないのです。 兄弟が皆違う職業を選択することも、、、


 っと、アツくなりすぎて、肝心の相関と共分散の関係について、書くのを忘れていました。 ごめんなさい。

 相関の度合いは、相関係数というものを用いて表現します。 これは、-1から1の間をとります。 例えば、AとBの相関係数が1と言うことは、AとBは全くおなじ方向に動くということです。 これは、エクセルで、CORRELという関数を用いて求めることが出来ます。


 そして共分散、これは、次のように求められます。

 AとBの共分散=「AとBの相関」×「Aの標準偏差」×「Bの標準偏差」

 です。 共分散は、エクセルで、COVARを用いて計算できます。 二つの資産を見たときの散らばりの尺度ですね。



 繰り返しになりますが、この共分散の考え方は、ファイナンスの最重要原理の一つです。 なぜなら、この考えは、「ある種のリスクは色々な資産を組み合わせることによって無くすが出来る」事を意味しているからです。
 というと、無くすことの出来るリスクと、それが出来ないリスクがあるとすると、両者について、どのように考えればいいのでしょう。 また、消すことが出来ないリスクとは、いったいどんなリスクなのでしょう。 
 
 シャープ先生がノーベル経済学賞をとった業績である、資本資産価格理論(CAPM、Capital Asset Pricing Model)のエッセンスも、まさにここにあります。 CAPMがどのようなものかは、次回。

 突っ込みはもちろん、質問コメント、大歓迎です^^
Comment
≪この記事へのコメント≫
言っていることはあってると思います。

Normal Distributionの仮定がこの議論の大前提だということが極めて重要ですね。この仮定が崩れれば、信頼区間を計算することは最悪無意味になります。
プロ野球の歴史が何年あるかわかりませんが、Law of Large Numbers(大数の法則)で正規分布に近似できるほどのサンプル数があるかどうかは疑問です。Bootstrapなどでresamplingすることもありかもしれませんが、そこまで話は複雑ではないです。
勝率は他のチームに影響されるため、他に良い例があるかと思われます。
わかりやすい例としては、ある学年(私の小学校は180人、中学は260人、高校は360人くらい)の身長・体重などはおそらく典型的な正規分布になると思われます。

実際にこのようなことをやるとしたら、エクセルや専門統計パッケージで計算すると思いますが、まずはグラフとか散布図を書いて、歪みや尖りなどを調べるのが重要です。信頼区間の議論の以前の話として、前処理がいい加減な場合はその後の手法もいかがわしくなりがちです。プログラムを書けば誰でも結果は出てくるので、世の中胡散臭い結果が氾濫していると思います。
アカデミックな観点から言えば、ファイナンスのデータでも正規分布に従うということをまずは疑ってみるべきです。
正規性の検定は不勉強でわかりません、すみません。

このトピックは学部で初めて学習する統計学の授業で必ず出てきます。まずは手計算でできる程度の練習問題を解いてみることが重要です。

CAPMはよく知らないので楽しみにしております。
2007/01/05(金) 20:47:56 | URL | チキンワイヤー #-[ 編集]
正規性の仮定って本当に重要ですよね。。
 いつもコメント有難うございます。

 ファイナンス理論のほとんどは、「○○は正規分布に従う」という仮定の上に成り立っている事を忘れてはいけないのでしょうね。 中には、すこし仮定を緩めて、楕円分布などまでを許容する場合もあるみたいですが。 

 あの例を使った例は、単純な面白さ追求でして。 大して面白くないのなら、申し訳ありません・・・ 

 CAPMは面白いですよ! お待ちくださいね^^
2007/01/06(土) 20:05:46 | URL | Taejun #-[ 編集]
楕円分布は知りません!

私もいまだ勉強中の身ですが、世間の人は分析のアウトプットばかりに注目するあまり、その前提や手法の理解がおろそかになってしまいがちだと思います。それは学術の世界でもあてはまることかもしれません。

まあ身長や体重ではあまりインパクトがないですかね。興味をそそる題材は難しいですが、例えばある企業の株価のデータが正規分布に従えば、上記のような95%信頼区間を推定することは可能です。
プロ野球の話で補足すると、標準偏差は散らばりとかばらつきを示す指標なので、阪神の勝率は巨人のそれに比べてより不確実、不安定だということです。つまり、阪神の方が5割の勝率になる確率が低くなります。
回帰モデルのt検定などでも現れますが、標準編差が大きいということは、それだけその推定結果(ここでは勝率という平均)が信頼できないものになります。従って、信頼区間も幅広くなり、予測の精度も落ちるわけです。
2007/01/08(月) 16:12:30 | URL | チキンワイヤー #-[ 編集]
僕もテクニカルな定義を知っているわけではないのですが、
楕円分布族は、正規分布も含めた、それに近い分布のことのようです。

正規分布を仮定せずに、楕円分布を仮定したとしても、リスク回避的な投資家の行動は、平均分散選好によって説明できることが、(たしか)トービンらによって証明されているようです。


精度のお話、有難うございます。 さすが専攻ですね。 僕のeconometricsの知識はあやふやなので、これからもご指摘いただけると幸いです。

2007/01/08(月) 21:23:51 | URL | Taejun #-[ 編集]
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