Taejunomics

            政治、経済、社会、哲学、芸術、文学、スポーツ、マイクロファイナンス、教育などなど、徒然なるままに書き綴ります。 ※お初の方はカテゴリー欄の「Taejunomicsについて」、をご覧ください。
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欠けた前歯の思い出:上。
 (久しぶりの思い出ネタ。)


 僕の前歯は欠けていて、人口の歯と接着剤でくっつけられている。 
 あれが2001年の事だと思うと信じられない。 六年前の僕は、言いようの無いけだるさを感じていた。 それは決して、つけたての接着剤の気色悪さのせいだけではない。
 
 
 話は約1年前に遡る。 

 僕の通っていた学校には寮があって、基本的に学生はそこで集団生活をする。
 生活についてはいくつかの規律があった。 朝は6時50分に朝礼、外出して帰りが遅くなるときには許可が必要、などなど。 普通の寮よりは厳しいけれど、お寺の坊主に比べたらはるかにゆるい、そういった生活だった。

 当たり前の事だけれど、世の中には、規則を守る人と守らない人がいる。 お互いは対立する。 僕は、守らなければいけないと考える人間だった。 そういった生活の規則の一つ一つが正しいかどうかなんて、僕には分からなかった。 今になっても分からない。 
 ただ、僕が抱いていたのは、ある社会集団内のルールというのは、設定されたのなら、それがどんなにくだらないことでも守らなければいけないという確信だった。 そのルールを無くそうと行動を起こすことと、ルールを破ることとは、全く別物だと考えていた。 今になっても変わらない。
 
 学部が一つの生活単位のようになっていて、僕のそれは50人。

 誓って言えることは、最初から最後までこの生活ルールを原則的に守ってきたのは、僕一人だと言う事。 こんなことをやって意味があるのかと自問自答をしながらも、僕はそのルールが守られるように力を尽くした。 そして、2年以上後の話になるのだけれど、周りが自主的にルールを守るようになってからは身を引いた。 僕の出る幕ではないと思ったからだ。 「周りが調子に乗ってきたら誰だって英雄になれる。周りが何もできないときに一人でも黙々とやり続けるのが偉い奴だ。」と話し続けてきた父のおかげかも知れない。 もちろん、周りが調子づいてきたときに俄かに調子づく人たちへの反感と多少の僻みもあったのだけれど。
 

 朝礼が6時50分からなので、早朝6時40分くらいから、たった一人で数十人を起こすという難作業をする。 起きるつもりのない人間を一人起こすだけで大変なのに、何十人なんて、気の遠くなる話だ。 煙たがられるし、悪態もつかれる(相手からすれば当然だ)。 そんな気の遠くなる、限りなく孤独でみじめな朝を、僕は何回経験したことか。 もちろん、朝の朝礼は一日の一コマに過ぎない。 一日中、そういった、みじめな努力をする破目になる出来事に遭遇するのだ。 今の仕事はつらくて有名なのだけれど、このつらさに比べたら、10分の1程度にもならない。

 日々、朝ごとに煙たがられることもきつかったのだけれど、一番精神的にきつかったのは、約束が守られないこと。 「明日からは俺もちゃんと起きて君を手伝うよ」と話す人も、たいてい数週間で元に戻った。 人間が精神的ダメージを相対論として判断するというのは、間違いの無い真理だと思う。

 これを、どこにでもあるような、寮のくだらないルールを守ろうとした事から生じたお笑い話と考える人もいるだろう。 確かにそうかもしれない。 だけど、世の中には、こういった、本当に正しいのかどうかを話し始めたら相当な議論になるようなものが少なくないと思う。 自分の歩いている人生が正しいかどうかすら、僕たちには分からないのだ。 僕たちに出来ることは、正しいと信じた事を断固として行うことだけなのだ。  


 2年間。 本当に気の遠くなるような二年間だった。 この経験が僕にさした翳の大きさは計り知れない。 もちろん、僕がその後にとった、種々の捻じ曲がった行いは、全ての僕の心の未熟さに帰せられるべきものなのだけれど。


 そんな2年間の、一番象徴的な出来事は、1年目の終りに起こった。 欠けた歯は、死ぬ前まで僕に一つの事を思い出させるのだろう。 人を信じることの大変さと素晴らしさを。
 
 
 
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2007/03/30(金) 19:55:12 | | #[ 編集]
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