Taejunomics

            政治、経済、社会、哲学、芸術、文学、スポーツ、マイクロファイナンス、教育などなど、徒然なるままに書き綴ります。 ※お初の方はカテゴリー欄の「Taejunomicsについて」、をご覧ください。
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欠けた前歯の思い出:中。
 
 
 最近仲良くなった人は、僕に、「きっと裕福な家で素直な子に育てられたのだろうね」、といった事をよく言う。 事実は、まったくと言っていいほど正反対だ。 家は決して裕福ではなかったし、僕はすごく性格が捻じ曲がった人間だった。

 周りの子供たちが皆持っているおもちゃも持っていなかった。 それで話題についていけなかったことも嫌な思い出だったけれど、それ以外にも、もっと根本的な、今もあまり言えない様な出来事が色々とあって、それらが僕に与えた影響は大きい。 人間、環境を乗り越える存在だというけれど、子供に関しては、それはあまりにも希望的な観測だと思う。

 人が他人についてどういった態度を取るか、という事は、その人の心のありようの鏡だと思う。 僕は他人を馬鹿にして、他人を信じない、そんな子供だった。 どこか、世の中に対して斜に構えたところがあって、常に何かに不満を持っていた。
 
 そんな僕が人を信じるきっかけとなったのは、高校の頃だった。 生徒会長として学校の悪習をなくすための行動は、ひどい仕打ちをした先輩達への全くの反骨心を動機としていたのだけれど、その過程で人を信じることと他人と力を合わせて物事を解決していくことの大切さを、文字通り身をもって学んだ。 

 人間が一人で出来ることには限りがあって、何かを成し遂げるためには、他人と力を合わせないといけない。 その団結の力を強くするためには、当然だけれど、自分以外の人を信頼しないといけない。 僕は信頼の大切さを、アイパー頭でやくざみたいな服装をして、煙草をふかしてパチンコをしながら、僕を援けてくれた多くの同級生達から学んだ。 人を信頼するという事は、僕にとってもう揺らぎの無いものになったかと、そのときは思っていた。

 だけど、大学の頃に、またこの思いは揺さぶられた。 


 前置きがすごく長くなってしまった。 前の話の続きをしよう。


 
 正しいのかそうでないのか、自分ですら確信を抱けていない寮の生活規則が守られるように、当時からすれば文字通り徒労ともいえる日々を送り始めて、10ヶ月が経とうとしていた頃、僕の歯は、ルームメートの頭突きによってへし折られた。 へし折られたのは、歯だけでなくて、それ以外の色々なものだった気がする。

 同じ学校ではなかったけれど、彼の事を僕は高校の頃から知っていた。 スポーツができて頭も良く、音楽も出来る快男児。 それが、高校のころに僕が彼に抱いていた印象だった。 多くの友人も同じような感覚を抱いていたに違いないと思う。
 
 その後彼に何があったのか、僕には知らない。 もしかしたら、高校の頃に僕が知っていた彼は、よそ行きの姿だったのかもしれない。 ルームメートとして共に生活をしたときの彼は、僕の知っていた彼ではなかった。 僕と、立場としては正反対の側にいた。 授業はさぼり、夜は外に抜け出して酒を飲んで、朝っぱらに帰ってくる。 時々土足禁止の寮内に靴を履いてあがってくるし、ものすごい暴力衝動にも駆られたりする彼だった。
 
 もう1年目も終わる頃。 彼は、夜中まで徹夜して、授業に全く出ていなかった。 このままだと、単位が無くなって、留年することになるのが明らかだった。 全くもって余計なおせっかいなのだけれど、僕は、彼が何とか授業に出るように努力していた。

 そんな冬のある日の事。
 一時間目の経済学の授業が終わった。 彼は、いつもどおり、授業には参加したが爆睡していた。 むっくりと起きて、
 
 「だるい。 帰る。」

 といって、すたすたと校舎を出て、寮へ帰り始めた。 まだ他の授業は残っている。

 僕は追いかける。

 「おい、待てよ。 お前このままじゃ卒業できないぞ。」

 「うるせえ。 俺のことなんてどうだってええから、○○の事をまず何とかせえ。」

 帰ろうとする彼。 寝不足だからか、そうとう苛立っていた。

 僕は彼を押しとめた。 「だめだ。」 だめだ、ってなんてありきたりな言葉なのだろう。 もっと気の利いた事を言えてもよかったのに。
 
 彼は、時々見せる、ものすごく神経質的に目をむいた表情で僕を見た。

 そして、次の瞬間、僕の顔に頭突きが入った。 「うざいんじゃ、お前。」
 
 歯が欠けるほどのものだったから、相当な強さだったのだろう。 歯が折れたことに気づき狼狽している僕を尻目に、彼はすたすたと寮へ帰っていった。
 
 僕は追いかけた。 そして、まだ、彼に授業に戻るように話し続けた。 彼は聞く耳も持たず、ベッドに入っていってカーテンを閉めた。 
 
 その時僕は相当に混乱していたのだけれど、彼のベッドに向かってこんな事を話した。 今となって考えるとものすごく青臭いのだけれど、泣きじゃくりながら。
 
 「僕の態度に一貫したことが無かった事は謝る。 それは確かにそうで、僕は他の皆に対しても同じように接するべきだった(彼の様な人が数人いて、僕はその人たちまで対処しきれなかった)。 僕に二枚舌の様なところがあったのは事実だ、ごめん。
 でも、僕にとって君はすごく大切な友達だと思っていて、だからこうしている。 それはわかって欲しい。」

 ベソをかきながらしゃべっていたので、何を言ったのかは正確に覚えていないけど、内容に間違いは無いと思う。 ベッドの中の彼が、これを聞いていたのか定かではない。 もしかしたら、ヘッドフォンでもつけてすでに寝ていたのかもしれない。 
 
 



 彼は留年し、学校を辞めた。





 「歯を折られたときに、お前は殴り返してやればよかったんだ。 そうしたら、問題は解決していたかもしれない。」と、あの後少なくない人が僕に言ってきた。 

 お前はあの時何をしてたんだ。 そんなお前に何が分かるんだ。

 心の底ではそう思っていても、言ったらただの愚痴になるのは分かっていたので、何も言わず僕は黙していた。


 
Comment
≪この記事へのコメント≫
小説の中の話みたいですね。
真正面に向かっていくTaejunさんの素直さが伝わってきます。
私はあまり人に興味が持てないので「あぁ、そう…」ぐらいで終わってしまいます。
自分自身にだって興味があるのかも分かりませんが。
2007/04/05(木) 10:49:54 | URL | LEE #MXCqsy6o[ 編集]
初めてのコメント ^ ^
実はひっそり覗いてました^^笑。

これに似たエピソード(と、言っても最後まで読まないと分かりませんけど。笑)が自分も大学時代にありました。。。読んで、思い出してしまいました。何か甘酸っぱい、切ないキモチになりました^^
こんなキモチま懐かしいです。。。笑
2007/04/05(木) 12:38:10 | URL | NAM CHONG GI #-[ 編集]
LEE、君と初めて話したときも荘だったのだけど、何かやるべき事を見つけて、必死にそれをやってごらん。 十代の頃に必要なのは、ああだこうだ考えることよりも、やると決めたことにがむしゃらに突き進む勢いだから。


なむ、あらら、読んでくれてたのだね^^。 汗顔です。。
ここらへんは、ちょでせんに色々とリアクションをもらいたいところなのだけれどね。 なかなか。 書いていて僕も甘酸っぱいです^^;
2007/04/06(金) 22:59:30 | URL | Taejun #-[ 編集]
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