Taejunomics

            政治、経済、社会、哲学、芸術、文学、スポーツ、マイクロファイナンス、教育などなど、徒然なるままに書き綴ります。 ※お初の方はカテゴリー欄の「Taejunomicsについて」、をご覧ください。
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CAPMをもう少し掘り下げて。
 質問を頂いたので、もう少しCAPMについて詳しく書いてみます。


1. β-期待収益率のプロットは、原理上どんな場合でも一直線にならぶのでしょうか。それとも特定の条件を満たす場合に一直線上にならぶのでしょうか。それともβ-期待収益率のプロットが一直線上にならぶ可能性があることを意味しているのでしょうか。

2. βで線形回帰することに意味があるのでしょうか。標準偏差-期待収益率でも線形回帰できる気がします。「標準偏差はある一定の正の値以上しかとらないのに対し、βが正負の値をとりうる」の他のメリットはあるのでしょうか。




 但書:質問に対する第一段落が答えで、残りはかなり蛇足です。 もし興味があったらごらんください。

 
 1.ベータは常に期待収益率と線形関係になるのか

 結論から言うと、ノーです。 二基金分離が成立している場合に、この線形関係が成立します。

 
 CAPMを成立させる論理は、二基金分離定理です。 これが成立していると、リスク回避的な人々は、安全資産と市場ポートフォリオのみを、自らの期待効用最大化のために保有します。 (※1)

 人々が皆保有するのが市場ポートフォリオだからこそ、市場ポートフォリオの変動をリスクの本質と見なすことが許され、そして、市場ポートフォリオとの共分散を用いて、全ての資産の格付をすることが許されているのです。 
 
 
 もし、二基金分離が成立していないのなら、ベータと期待収益率が線形関係になる保証はありません。 (※2)
 
 同じ意味ですが、市場ポートフォリオが効率的でないのなら、これまたベータと期待収益率が線形関係となる保証はありません。 しかも、市場ポートフォリオが効率的である事を実証する事は出来ていないのですね。 (※3) Rollという人のCAPM批判のエッセンスはここにあります。

 


 2.標準偏差で回帰しないのは何故か

 もちろん、市場ポートフォリオのリターンの標準偏差で回帰を行い、期待値をとると、結論の形は同じなのですが、そこに至るまでの論理が違うので、ベータを用いて説明しているのです。 



 被説明変数Yを、説明変数Xを用いて回帰させた場合、
 Yi=α+bXi+誤差項
  
 になり、このとき、b=cov(X,Y)/Var(X)
 
 です。 これに、期待値をとると、誤差項の期待値はゼロですから、

 E(Yi)=α+bE(Xi) 
 となり、Xをマーケットリスクプレミアムとすると、CAPMと同じ形になります。

    
 じゃあ何が違うかと言うと、論理の違いなのですね。
 CAPMは、とってもしつこいですが、経済均衡において二基金分離が成立し、それによって市場ポートフォリオとの共分散を用いた資産の価格付が可能となるという論理展開から成立しているわけです。 CAPMの式は、いうなれば、均衡式なのです。 ある変数を、他のある変数によって説明しているものとは少し違うわけですね。



 3.ベータがマイナスである意味  
 
 ある資産のベータがマイナスであるという事は、その資産の収益の動きが市場のそれと反対であり、市場ポートフォリオのみに投資すると考えられている経済において、そのようなマイナスベータを有する資産はヘッジの効果がある事を意味しています。
 
 というと、難しいのですが、リスクをヘッジしているような資産は全て、本来の投資対象と逆の動きをしているのですね。 例えば:
 
 ・損害保険:持ち物が損害を受けたら保険金をもらえる
 ・プットオプション:持っている資産の価格が下がったら、プットオプションの価値は上昇する

 などなど。

 単独の期待収益率だけでは、なんとも表現しにくいものがあるわけです。

  
 

 ※1 
 2基金分離と言うのは、言葉の意味で言うと、二つのポートフォリオのみをもって、投資家の期待効用を最大化しうることを意味します。 もっと言うと、「あらゆる効率的ポートフォリオを、二つのポートフォリオによって構成することが出来る」ことを指しています。


 ※2
 2基金分離が成立するためには、ファイナンス理論における前提にいくつかの制約を課さないといけません。 現在分かっている事は

 ・効用関数に制約を加える場合:二次の効用関数を用いるか、HARA型の効用関数を用いる(うち、ベキor対数系のHARA型効用関数の場合は、肩のパラメターが同じこと)

 ・確率分布に制約を加える場合:収益が楕円分布に従うこと(正規分布や、t分布、多次元対称パレート分布など)

 以上が満たされている場合には、二基金分離が成立します。 証明は省略(興味のある方は、池田先生の教科書をご覧になってください) 


  
 ※3

 市場ポートフォリオの投資における優位性と、効率性はまったく別の次元の話です。 市場ポートフォリオが、半世紀以上にわたって、他の投資を上回ってきたといっても、それが市場ポートフォリオが効率的であることの保証とはならないのです。
 

Comment
≪この記事へのコメント≫
勉強になります。
わざわざ記事を書いていただいてありがとうございます。

二基金分離定理が成立していれば、期待収益率-βのプロットが直線で整理できるのですね。ただ、問題としては、二基金分離定理(市場ポートフォリオが効率的であること)が成立するかに疑問が残る、と。

「行動モデルを考慮した結果の式と、変数の関係のみを記述した式とでは意味する内容が違う」と、とりあえず理解しました。このような理解で大丈夫でしょうか。また、XをマーケットリスクプレミアムとするとE(Xi)は市場ポートフォリオという理解でよいのでしょうか。

β<0の解釈についてはいろいろ説明していただきました。ただそれは最終的にE(Y)>0となるような場合しか考えていません。利益が望めたいなめ、E(Y)<0となるような第3,4象限への考察はないのでしょうか。また今までの図では、α>0 かつ b>0という場合のみを展開してきました。α<0 または b<0といった場合も研究されているのでしょうか。

質問ばかりで長くなりましたが、とても面白いです。質問に対する記事を書いていただいてありがとうございました。

2007/04/09(月) 21:06:16 | URL | komatsuna #VWFaYlLU[ 編集]
 コメント有難うございます。
 
 2,3段落目のご理解は、概ね正しいと思います。 ただし、
 マーケットリスクプレミアム=市場の収益率-安全資産の収益率
 です。
 
 
 期待収益率がマイナスの資産って、意外とあったりします。 その代表例が、保険です。 保険は、支払っている保険料よりも、支払われるかもしれない保険金の期待値の方が低く、期待収益率はマイナスです。 ですが、リスクをヘッジしてくれるので、人々から受け入れられているわけです。  
 
2007/04/09(月) 21:57:18 | URL | Taejun #-[ 編集]
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