Taejunomics

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ファイナンス理論からの10のメッセージ7:無裁定理論
 Excerpt:世の中にうまい話はない。
 
 コツコツと不定期で更新しているわけですが、久しぶりに、ファイナンス理論からの10のメッセージ。 今回は、無裁定理論です。

 
 1.裁定って何?
 2.無裁定とその考え方
 3.裁定価格理論(APT)の考え方
 4.インプリケーション




 1.裁定って何?

 あなたが一文無しだとします。 ですが、あなたは次のことを知っています。

 A村:コメ不足なので、米を持っていけば必ず1キロあたり3000円で売れる。
 B村:コメの貸出所があり、一ヶ月後に米そのものか、2000円を払う条件で米を借りることができる。



 あなたは文無しです。 ですが、あなたの前には億万長者になるチャンスが横たわっているわけですね。 そうです、B村で米を借りるだけ借りて、A村で売りさばいて、そのお金で、2000円だけ返せば、いくらでも、元手ゼロで、確実に利益を得られるのですよね。

 この、
 ①元手ゼロで
 ②確実に利益が得られる
 取引のことを、裁定取引といいます(このエントリー全般の趣旨から、より厳密な定義は割愛)。 英語ではArbitrage(アービトラージ)と言われます。 裁定をすることができるとき、市場には裁定機会がある、といいます。

 なので、ヘッジファンドの人々が通貨の大量売り浴びせを行ったり、安く取引されている株式を買い占めるのは、実は裁定ではありません。 元手がゼロではないからです。 このような裁定は、リスクアービトラージといて、理論で扱われる裁定からは区別されます。



 2.無裁定とその考え方

 無裁定というのは、その裁定取引を行えないことを指します。 もっというと、裁定機会が一瞬存在したとしても、すぐに誰かが裁定取引を行うことによって裁定機会が結果的に消滅することを指します。 いうなれば、甘い話が世の中に転がっていない、転がっていても、誰かがすでに見つけているということですね。
 
 さっきの米の例で言うと、あなたが米の裁定取引を行う結果、A村ではコメ不足が回復しコメの価格が下がる一方で、B村ではコメが少しずつ足りなくなり米の借入によりコストがかかるようになり、最後には裁定機会が消滅するわけです。

 ファイナンス理論において、無裁定の仮定ほど強固なものはないと思います。 実際に、世の中においては、多くの場合無裁定が成立しています。 たとえば、為替など、取引が頻繁に行われる市場においては、裁定機会は、数十秒とたたず消滅するという実証研究があるほどです。
 
 


 3.裁定価格理論(APT)の考え方

 この無裁定の考え方は、価格付けの理論においても生かされてます。 裁定価格理論、Arbitrage Pricing Theory、がその一つです。 
 
 さっきの無裁定の考え方を、資産の収益率について考えてみましょう。
 
 資産の収益率は、リスクなしに高くなることはあり得ないわけです。 もしありえても、そのような裁定機会は、すぐに消滅すると、理論は考えます。
 
 となると、収益率を高くするためには、方法はひとつしかないのですよね。 それは、リスクを負うことです。 
 
 CAPMでは、市場リスクが唯一のリスクの源泉と考えましたが、ここでは、それ以外にも、いくつかのリスクの源泉があると考え、それをファクターリスクと呼ぶことにします。 
 たとえば、ファクターリスクが、三つだけあるとしましょう、為替リスク、利子率変動リスク、賃金変動リスク、とします。
 
 すると、無裁定の考え方から、資産収益率は、次のように決まるはずです。

 収益率(の期待)
=安全利子率+(為替・利子率変動・賃金変動)リスクをとったことに伴う代償
 


 そうです、何らかのリスクを取ることがない限り、その代償を得ることはできない(期待収益率を高めることはできない)のです。 ならば、資産の期待収益率というのは、その資産が、どのファクターリスクに対し、どれくらいのリスクを取っているのかによって決まってくるはずです。 無裁定が働いている以上、このリスクを取ることにより得られる代償、すなわち、リスクプレミアムは、皆において等しいはずです(違う場合はまた裁定がおこるのです)。

 これが、偉大な金融経済学者Rossらが考案した、APT、Arbitrage Pricing Theory、のエッセンスです。 ロジックとしてはとってもすっきりですよね。

 もう一度、APTの要約をしておきます:
 無裁定が成立しているのなら、
 ①消去不可能なリスクを取ることなしに収益率を高めることはできない
 ②リスクを取ったときに得られる代償は等しい
 ため、資産収益率は、ある種のリスクを取ったことに対する対価、すなわち、ファクターリスクプレミアムと、リスクを負った程度により決定される。




 4.インプリケーション 

 僕は、このブログで何度も、世の中に甘い話はないと書いてきました。 友達が、目を輝かせて「これは素晴らしいビジネスだ」なんていうときも、まずは疑ってかかります。 それは、この無裁定の考えが身に染み込んでいるからなんですね(そして、実際そういった会社の財務諸表をみるとハチャメチャな場合が多いのですが)。
 世の中にはそうそううまい話が転がっているわけはないのです。 もちろん、あなたが偶然、そのうまい話を見つけた人間第一号である可能性はあります。 ですが、そうでない場合のほうがはるかに多いことを考えるのであれば、むしろ、無裁定が成立していると考えるほうが安全なのですよね。
 
 では、実際に高いリターンを、もしくは、望ましい成果を出すには、どうすればよいのか。

 ファイナンス理論が教えてくれることは、「リスクを取るしかない」というものです。
 
 ですが、僕は、この結論を人の問題に持ち込むことはできないと考えています。 僕は、人間の場合には、運などを度外視するのなら、自分の現状の能力を上回る成果(これは金融資産で言うリスクプレミアムに似たものです)を出すためにできることは、一つではく、二つあると考えます:

 ・リスクをとる
 ・努力する

 そうなんですね。 人間は、金融資産と違って、努力することができるのです。 不断の努力こそは、その人の現状の能力を上回る成果をもたらす手段なのですよね。 努力には、リスクはさほど伴いません。 これって、素晴らしいことなのではないでしょうか。

 無裁定というと、なんというか、無機質というか夢がないというか、そんな感じを与えるかもしれませんが、無裁定の理論が話しているのは、楽して儲ける話がないというだけであって、その人の努力について報われることをなんら否定しているわけではないのです。 もちろん、市場に一瞬だけ現れる裁定機会を狙う人になろうとすることを、僕は何もとめるものではありません。 そういう人たちがいるおかげで、市場において裁定機会が消滅し価格付けが適正になされるのだし、努力がむくわれることになるのですからね。


 人の達した高峯は一躍地上から達したのではなく、同伴者が夜眠っている間も一歩一歩とよじ登ったのである。  ブラウニング
 
 

 というわけで、無裁定価格理論は、これくらいでおしまい。 
 次回はいつになるかわかりませんが、効率的市場仮説について話していきます。 お楽しみに^^

Comment
≪この記事へのコメント≫
勉強になりました。
為替のように取引が多いマーケットでは
鞘取りは難しいってことですね。
私は細々と先物で鞘取りをやっています。
我々からみると片張りでリスクをとる方たちが
たくさんいて、裁定取引を無裁定がほとんど
で世の中にうまい話はないという考え方をもつ
人々が多いと生きていくことができます。
2008/07/25(金) 23:09:51 | URL | ヨール #-[ 編集]
仰る通りですよね。
裁定機会があると信じている人たちのおかげで、多くのアービトラージャーが利益を得ているわけですし。
理論は理論として、それとの現実のかい離を考えることはとても大切だと思っています。

これからもどうぞよろしくお願いします!
2008/07/27(日) 01:08:01 | URL | Taejun #-[ 編集]
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2009/10/25(日) 22:39:21 | | #[ 編集]
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無裁定理論について色々と調べていたら、簡潔で賢そうな感じの記事が見つかりました! ファイナンス理論からの10のメッセージ7:無裁定理論 ...
2009/10/25(日) 22:05:05 | 金融・経済ケモノ道
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