Taejunomics

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ファイナンス理論からの10のメッセージ8:効率的市場仮説
 ファイナンス理論からの10のメッセージ8:効率的市場仮説

 自分だけが特別な能力を持っていて、市場で儲けられると思っている人に、一言だけ言うのであれば:

 市場をなめないでください。

 といわけで、今日のファイナンス理論からの10のメッセージは、効率的市場仮説についてです。

1.効率的市場仮説とは何か
2.効率性の三つの段階
3.でも、本当に効率的なの
4.勉強しないのなら、TOPIXにしときなさい
 

 1万円札が道端に落ちています。
 あなたは、この落ちている1万円札について、どう思いますか?

 1)これは本物に間違いない! 拾わな損!
 2)これは偽札に間違いない。 本物だったら誰かがもう先に拾っているはず。

 2)と考えたあなたには、効率的市場仮説を受け入れる心理的土台があると思われます。




1.効率的市場仮説とは何か

 効率的市場仮説とは、「市場において、資産の価格は、すべての情報を反映している」という仮説です。 あくまで、仮説なんですね。 というのも、この実証はなかなか難しいからです。
 
 これだけじゃちょっとわかりにくいので、例をあげて考えてみましょう。
 
 TJ社いう自動車メーカーがあるとします。 このTJ社は、財務基盤もよく、有効な研究開発にかなりの金額を投入しており、将来収益が伸びるということが予想されているとします。

 さて、TJ社が将来、かなり高い確率で成長を遂げるという事を皆が考えているとして、あなたがこのTJ社の株式を買うのは投資政策として有効なのでしょうか?

 答えは、ノーです。
 
 なぜかというと、その高い確率で上がるという事が皆に知られているので、すでにTJ社の値段は、その予想が織り込まれた高い値段になっているはずだからです。 いくらTJ社が将来成長するといっても、値段がすでに高くなってしまっているので、株を買った人にとっては、そんなに高い利益は望むことができないのです。
 
 このように、市場は、すでに手に入っている情報を価格に織り込んでしまう。 だから、ほとんどの場合、ある情報を得たからと言って、それが勝てる要因にはならないのですよね。 ここら辺が、普通に何かを選ぶことと、株式投資をするときの大きな違いかもしれません。 株式投資において重要なことは、周りとの期待とのギャップにあります。 


 さて、ここまで説明すると、市場はランダムウォークをする、と言うことの意味がわかってきます。 
 ランダムウォーク仮説とは、市場における資産価格の変動はランダムで予測できないという仮説のことです。 なんで、こんな事が言えるのかというと:
 1)市場はすぐに情報を価格に反映する
 2)新しい情報だけは、価格に織り込まれていない
 3)しかし、新しい情報はわからない
 4)だから、価格の変動もわからない(ランダム)
 
 というわけですね。
 
 前にも紹介しましたが、このランダムウォークに関して興味がある方は、マルキール先生の、
ウォール街のランダム・ウォーカー 株式投資の不滅の真理 ウォール街のランダム・ウォーカー 株式投資の不滅の真理
バートン マルキール (2007/05/25)
日本経済新聞出版社

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 これをご覧ください。(新版が出たんですね)

 
 


2.効率性の三つの段階

 この、市場の効率性には、三種類が考えられています。

 ①強度の効率性~どんな情報(インサイダー情報)を使っても、情報をもとにして、ミスプライスを探すことができない
 →これが成立するのなら、インサイダー規制は株式投資において無意味です。

 ②中度の効率性~すべての公開情報を使っても、ミスプライスを探すことができない
 →これが成立するのなら、財務分析は株式投資においては無意味です。

 ③弱度の効率性~市場の過去データでは、ミスプライスを探すことができない
 →これが成立するのなら、チャートは株式投資において無意味です。
 

 さて、みなさんは、どの程度まで市場が効率的だと思いますか?
 
 いろいろな研究の結果では、③はほぼ間違いなく成立していて、②は論争があるところ、①は、たぶん成立していないだろうというのが大方の方向性です。
 
 で、これをやると、いつも会計の先生方のお怒りを買うらしいのですが、、、中度の効率性が成立して言うという事が、会計が無意味だと言っているわけではないのですよね。 会計情報が信頼できるからこそ、中度の効率性が保障されるわけです。 ここで言っている事は、どこかの4半期決算の結果を基に、市場を出し抜こうなんて考えは、甘いという事です。
 


3.でも、本当に効率的なの

 ただし、実際には、効率性とは相反するような事柄が発見されています。 それを大きく2種類に分けると:
 1)恐慌
 2)アノマリー

 に分けられるでしょう。

 1)恐慌
 情報がすべて価格に反映されているのであれば、恐慌は起こらないと考えられます。 もちろん、合理的な期待を人々がもっていたとしても、バブルははじけうるし、恐慌は起こりうるのですが、恐慌には、単純な合理性や情報の反映だけでは説明できないような価格形成がされる事があります。 このことは、市場が必ずしも効率的でないことを反映しているのかもしれません。

 2)アノマリー
 英語は、頭にaをつけると否定語になる言葉が結構あります。 Anomalyというのは、通常でない、という意味です。 実際、株式市場では、種々のアノマリーが発見されています。 いくつかを例にとると:
 ・曜日効果:休日の前日の株価は上昇(みんな明日は休みだから楽観的になる?)など
 ・小型株効果:規模が小さい会社の株式の収益率は、大きな会社のそれより高い(判官贔屓?)
 ・軽視効果:注目するアナリストが少ない企業の株価は、そうでない企業の株価より収益率が高い(アナリストの予想なんて、、、おっと、アナリストが少ない企業には隠れた情報?)


 などなどです。 
 この類のアノマリーは数多く観察されてきましたが、泡沫のごとく、一時期発見されては消え、という場合が少なくありません。 考えられる理由は、僕としては二つで:
 ・このような現象には理論が無いため、一時的なものにとどまる
 ・人々がアノマリーを利用して儲けようとする結果、市場はまた効率的に戻る

 じゃないのかなあ、と考えています。
 
 

4.勉強しないのなら、TOPIXにしときなさい
 
 さて、ここまで書いたら、株式投資における過信の危険を分かっていただけたかと期待するのですが、どうでしょうか。 
 
 上でも書きましたが、市場で成功するには、市場を出し抜く必要があります。 
 ちなみに、市場を出し抜くという事は、どういう事かというと、市場にいる、一番賢い人々の予想を裏切るような読みをもって投資を行う事を意味しています。 別にそれができるというのであれば、いいのですが、これは相当に難しいです。
 
 事実、過去ほとんどのファンドは、あるただ一つの資産の収益率を上回り続けることができませんでした。
  
 その資産とは、市場ポートフォリオ。 具体的には、TOPIXがそれにあたります。 
  
 最初の一万円札の例に戻りましょう。 自分が新しい情報と思っている情報がすでに人々の知るところだと考え、それ以上に勉強して努力しようというのも面倒ならば、TOPIXを買うのが最善だと思います。 
 あなたがもし、道端に落ちていた一万円札について、自分が第一の発見者だ、と信じて疑わないのであれば、自分が信じる銘柄を買ってみてください。 ただ一つ、注意しないといけないのは、一万円札を拾ってそれが偽札でも、大して困りませんが、市場において、投資を失敗すると、かなり大変なことになりうるという事です。 気をつけていってらっしゃい。

 
 市場は化けものだ、という人がいます。 本当に、びっくりするくらいのスピードで、市場は情報を価格に反映させます。 この価格反映は、一人一人の人間(&最近はコンピューター)によってなされていることを考えると、市場の効率性というのは、ある意味、人類の叡智の反映なのかもしれませんね。

 
 というわけで、第八回までおしまいですね。 次はまたいつの日か。

 
Comment
≪この記事へのコメント≫
………。

「経済学を勉強するのは、経済学者にだまされないためだ」と言ったのは誰だったでしょうか…

ともかく私は株・為替・先物等々から宝くじ・パチンコ・マージャンまで全ての博打は一生一切やりません。(断言)

鬼神は敬して遠ざける。

三浦にとっては「鬼神」よりもっと恐い世界です。(ぶるぶる)
2007/11/06(火) 09:30:57 | URL | 三浦介 #OGPSQbQg[ 編集]
anomalyは「ノーマル」の否定(abnormality)とは違って「均質」を意味する「homo-」を否定接頭辞の「an」で否定したという方が正確です。
2007/11/06(火) 10:27:11 | URL | 123 #-[ 編集]
三浦介さん、はい、基本的に個人投資家は食い物にされてしまう場合が少なくないので、やらないのが良いかと思います… もちろん、人それぞれではあるわけですが。


123さん、はじめまして。
勉強になります。
「aは否定語として、否定されているのは何なんだろう?」と思っていたのです。AnormalyでなくAnomalyなわけですから、なんなんだろうとわからなかったのですごく助かりました。 homoだったんですね。 新事実です。
これからもよろしくお願いします! 


2007/11/07(水) 00:16:49 | URL | Taejun #-[ 編集]
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2007/11/08(木) 13:16:54 | | #[ 編集]
Taejun さん。こんにちは。
(以前、地震の本で書き込みさせていただきました)

「経済学を勉強するのは、経済学者にだまされないためだ」
… これは、イギリスの経済学者、ジョーン・ロビンソン
が言ったとおもいますが。彼女は、ケインズと同時代の人です。それでは。

2007/11/09(金) 14:47:40 | URL | タナカコウイチロウ #wr80fq92[ 編集]
タナカコウイチロウさん、お久しぶりです。
おー、そうなのですね! また、浅学な僕の知識が一つ増えました。 ありがとうございます。
 
2007/11/12(月) 00:46:48 | URL | Taejun #-[ 編集]
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