Taejunomics

            政治、経済、社会、哲学、芸術、文学、スポーツ、マイクロファイナンス、教育などなど、徒然なるままに書き綴ります。 ※お初の方はカテゴリー欄の「Taejunomicsについて」、をご覧ください。
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貧困の終焉、レビュー。
 開発の勉強会&プロジェクトが始まっているのですが、その間に話がされた内容などを、僕のブログを通じて公表していくことになりました。 というわけで、第一弾ですね。
 
 
 
貧困の終焉―2025年までに世界を変える 貧困の終焉―2025年までに世界を変える
ジェフリー サックス (2006/04)
早川書房

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 実は経済学者の中では賛否両論があったりするらしいのですが、そんなことはさておき、僕が開発に着手しようというきっかけを与えてくれた本。

 1.メッセージ
 2.貧困の原因
 3.開発において考えるべきこと-臨床医学のアナロジーの必要性
 4.出来ること
 5.雑感

 
 要約:私たちが知らないうちに、年間800万人が極度の貧困のうちに死んでいる。 それには明確な理由があり、私たちはその問題を解決することができる。 正しい戦略は正しい状況分析に基づくべきものであり、この本では、その考え方と実例を提供する。 言うまでもなく、一番大切なのは、私たち一人一人の熱意と行動にある。

 
 
 

 
 
 1.メッセージ
 
 この本において、「貧困の終焉」とは、
 ・人類の六分の一を占める、極度の貧困(一日当たりの収入が一ドル以下、2001年時点で世界中に11億人)を終わらせること
 ・中程度の貧困も含めた世界中の貧しい人々全員に、開発の梯子を登れるように機会を提供すること

 の二つを意味しています。

 この本のメッセージは明確で、それはイントロダクションにおいて書かれていることその通りです。 本の全体の構成は、このイントロダクションの内容をより深く、さまざまな自身の経験とともに敷衍した内容となっています。

 ジェフリー・サックスが伝えようとしているいものは、以下の通りだと思います:

・現状と希望:現在、世界で毎年、八百万人以上の人々が、生きていけないほどの貧困の中で死んでいる。私たちの世代は2025年までにこのような貧困をなくすことができる。

先進国の無関心:ほとんどの人は、生きるためだけに日々闘っている人々がいること、そして世界中の貧しい人々の多くがその戦いに敗れていることに気づいていない。

貧困と平和:極度の貧困によって弱体化した社会は不安と暴力をはびこらせ、グローバルなテロリズムの温床にさえなる。 だからこそ、軍事費に大量の資金を投入している先進国にとって、開発の問題は、自国の利益にも資するものだ。

少なくない開発の現状:豊かな社会が貧しい人々を助けるためにやっていると称することと、実際との間に大きなギャップがある。 開発の方法について、見なおす必要がある。

この本で取り扱う開発の目的:死にかけている人間に、人生における自分の割り当てをもっとうまく使うべきだったとお説教するのはむごいことだ。むしろ、彼らを開発の梯子につかまらせ、せめて一番下の段に足を掛けさせてやることが私たちの務めだろう。そこからは自力で昇ってゆくこともできるのだから。

開発の主体:これは集団的な作業だ―私も働き、あなたも働く。・・・私たちの安全と繁栄は集団的な決断にかかっている。

開発は複合的なもの:基本的なインフラストラクチャーの必須条件(道路、動力、港湾)と人的資本(健康と教育)がととのって初めて、マーケットは開発の強力なエネルギーになる。・・・保健、教育、インフラストラクチャーをうまく配備できる有能な政府と、必要な時に与えられる外国からの援助があれば、経済的な成功は確実なものになる。

・圧迫と苦悩の時代に、彼は孫たちの世代、二十世紀の終わりになれば、イギリスをはじめとする工業国では貧困が根絶されているだろうと予見した。・・・ケインズは正しかった。現在、極度の貧困は豊かな先進国から姿を消し、中程度の発展を果たした国の多くでも見られなくなった。今日、同じ論理にのっとって、私たちは孫の世代ではなく、自分たちが生きている間に極度の貧困を根絶できると言えるはずだ。




 2.貧困の原因 

 ジェフリーサックスは次に、さまざまな国の現状を鑑みて、貧困の原因について、以下のようなものに分類しています。 貧困が生じている場合、この8つの類型のうちいくつかが当てはまっていて、それらの程度に応じて、開発の処方箋は異なったものになるべきだそうです。

 
 ・貧困の罠
 貧困そのものが経済停滞の理由となっている。 貧困のため貯蓄ができず、成長のための資本の蓄積が不可能。収入のすべて、あるいはそれ以上を生きるために使い果たしてしまう。

 ・自然地理学
 資源、土地の豊かさ、交通の便など。現代においては、経済発展にとって重要ではあるが不可欠のものとはなっていない。 ただし、逆境にある国々は不利を克服するためにより多くの投資が必要。

 ・財政の罠
 政府の財源が乏しいためにインフラの整備ができない。 特に、国民健康保険、道路建設、電線の不円、港湾の整備など。 財源の乏しさの要因には、貧困のための税収不足、政府の腐敗・無能、Debt Overhang

 ・政策の失敗
 政府が開発に向けてとるべき政策が適切でない。 経済破綻と国家破綻(内戦、暴動、大量虐殺など)は絡み合う場合が多い。 

 ・文化の壁
 女性の抑圧など、文化的な要因が影響している場合。 国家破綻にもつながりうる。

 ・地政学的要因
 外国による障壁

 ・新発明の不足
 もともと低所得国のための技術開発がされる事は少ない。 しかしテクノロジーの輸入は可能。 

 ・人口の罠
 低所得国においては、種の保存本能のために多くの子供を持とうとする結果、貧困が加速する。 教育や女性の労働機会の提供など、インセンティヴシステムの構築が必要。



 3.開発において考えるべきこと-臨床医学のアナロジーの必要性
  
 上でみたように、貧困が生じる原因は、国によって様々なのですから、開発の戦略も、国の状況に合致したものである必要があります。 サックスは、この開発政策について考える際には、医学のアナロジーが相当程度において有効であると説きます。 この臨床医学に沿った手法を、彼は臨床経済学と呼んでいますが、このアプローチが必要である理由は、次の5つです:


 1)システムの複雑さ
 人間の体は複雑なシステムで成り立っている。  さまざまな事情が複雑に絡み合っている。 一つの事象が、他の事象を誘発することが多い。 経済発展について考える際にも、政策が及ぼす思いがけない効果を考えるべき。 これは、有名なルーカス批判にもつながる内容なわけですね。
 

 2)個別診断の重要性
 上の複雑さゆえに、各々の状況について個別的な判断が重要。 臨床医学においては、患者について確認すべきチェックリストがあり、そのリストには優先順位が付されている。 チェックリストの答えに応じて、最もありそうなケースから想定する。 経済状況についても同じ。 一国の経済を分析する際には、チェックリストが必要で、それを用いて問題を分析することにより、一国の状況を包括的に理解し、目下改善すべき問題について考えることができる。


 3)家庭医療の重要性
 医療は、多くの場合家庭内で行われる。 病を治すには、病人が置かれている環境を理解する必要がある。 国の経済についても同様で、国がおかれているさまざまな状況を考慮する必要がある。
  

 4)観察と評価が重要性
 初診の誤りはありうる。 そのリスクを低減するためには、定期的な観察とフィードバックが必要
 

 5)専門職であること
 それに携わる者には厳しい規範と倫理と行動規定が必要。
 しかし、残念ながら、現在開発に携わっている人々にはこれが備わっていない場合がある。
 
 
 この、貧困の原因と、臨床医学のアプローチの考え方から、ジェフリーサックスは、国の状況についてのチェックリストを作りました。
 昨日の勉強会では、タイにおける開発について、このチェックリストを参照しながら勉強したのですが、初学者の僕たちですら、これを用いて問題を分析すると、何が必要なのかが、結構よく分かることができました。 チェックリストは、この記事の最後に貼り付けておきます。


 4.出来ること

 ジェフリーサックスの説く、するべきことのうち、僕たちのレベルでできることというのは、次のようなことなのだと思います。

 ・貧しい人々の声を世界に届かせる
 とにかく、僕たちも知っているように、問題の一つは、先進国の無関心にあるわけです。 先進国のGDPの0.7%が毎年費やされれば、世界中から貧困を根絶することができると彼は主張します。 これは、しかも、各国政府が約束したODAの額で賄える額なのだそうです。
 しかし、それがなされない。 もちろん、いろいろな政治的理由があるとは思うのですが、それはここでは置いておいて、深刻な問題の一つは、僕たち一人一人の無関心にあり、その一因は貧しい人々の声が僕たちにうまく届いていないことにあるのだと思います。 それを何とか届くような仕組みを作ることができれば、さまざまな動きを追加的に呼び起こすのではないかと思います。
 
 ・一人一人の熱意
 何よりも、一人一人が、やるべきなのです。 気づいた人から。 世の中の変化というのは、いきなり起こるものではなく(そういう事が起こると、基本的に悲劇が待っています)、徐々におこるもので、その裏には、一人一人の考えの変化と行動があるわけですね。 気づいた人から、必要と考えた人から、できることを少しずつやっていくことができれば、何かが変わるのかもしれません。
 そんな思いで僕は勉強&プロジェクトの会を立ち上げたわけで、何としても一つ、問題の解決に貢献できるプロジェクトを成功させようと思っています。



 5.雑感

 熱意が伝わる本です。 理論も重要だと思うのですが、人が何か行動を起こす時、一番重要なのは熱い気持ちなのだと思います。 この本につけてもらったその気持ちを忘れずに、ずっとやっていきたいですね。

 今のところ、この本を読みながら、また、僕が普段行っている勉強とも重ねると、ウェブとファイナンスのロジックをうまく融合させて、僕たちにでも出来る、かつ世の中を変えていくことができるプロジェクトを考えられたらと思っています。





 (開発用のチェックリスト)


 (以下のものに、深刻度などもつけつつ、コメントを書き込んでいく)


1 貧困の罠
貧困の見取り図
基本的な要求が満たされていない家族の割合
世帯単位の貧困の分布
基本的なインフラストラクチャーの分布
・電力
・道路
・電気通信
・水と衛生設備
民族、ジェンダー、世代別の貧困分布
おもなリスク要因
・人口の動向
・環境の動向
・気候によるショック
・病気
・日用品の価格の変動
・その他

2 経済政策の枠組み
ビジネス環境
貿易政策
投資政策
インフラストラクチャー
人的資本

3 財政の枠組みと財政の罠
公共部門のカテゴリー別歳入と出費
・GNP比
・国際基準との絶対比
税収と支出の管理
貧困撲滅のための公共投資
マクロ経済の不安定性
公共部門のデット・オーバーハング
偽の財政赤字と隠れた債務の存在
中期的な公共部門支出の枠組み

4 物理的な地理的条件
輸送状況
・港湾、国際貿易ルート、航行可能な水路への近さ
・舗装道路の利用状況
・自動車輸送の利用状況
人口密度
・電力、電気通信、道路の接続にかかるコスト
・一人当たりの耕地面積
・人口密度に及ぼす環境の影響
農業環境
・気温、降水量、日照時間
・農産物の生育期の長さと安定性
・土壌、地形、灌漑の適性
・年間の気候の変動
・気候パターンの長期的な傾向
疾病環境
・人間の病気
・植物の病気と害虫
・動物の病気

5 政治の形態と失策
公民権と政治的権利
公共政策システム
脱中央集権と財政の連邦主義
腐敗のパターンと度合
政権の継続性と長さ
国内の暴力と防衛
国境地帯の暴力と防衛
民族、宗教、その他文化的断絶

6 文化的障壁
ジェンダー関連
民族および宗教の分裂
集団移住

7 地政学
国際安全保障関係
国境を超えた脅威
・戦争
・テロリズム
・難民
国際的な制裁
貿易障壁
地域及び国際的なグループへの参加

Comment
≪この記事へのコメント≫
ジェフリーサックス。覚えておきますね。機会がありましたら是非読んでみたいと思います。

三浦がもし総理大臣だったら、最初の外訪は大国でなく世界中で最も貧しい国や地域を歴訪して周り、足で歩き目で見て、当地の政治家や人々と膝を突き合わせて語り合うのですが。

「今度は五大国の元首と国連事務総長を連れてきたいと思います。なぜなら、世界中の政治というのはみなさんのためにこそあるからです。一緒に考え、語り、行動しましょう」
2007/11/28(水) 04:28:08 | URL | 三浦介 #OGPSQbQg[ 編集]
経済関連の本は読みたくもない(笑)が、これは興味あるな。
土曜にでも買いに行くわ。。。
2007/11/29(木) 01:44:57 | URL | 唐紙 #-[ 編集]
三浦介さん、唐紙、本当にお勧めの本なので、ぜひ読んでみてください。
途中で冗長になってくるので、国の一つ一つの事例については興味のあるものだけ読む、というのがなかなか効果的だと思います。

それが終わったら、今度はイースタリーという方の本もお勧めです^^。
2007/11/29(木) 01:53:53 | URL | Taejun #-[ 編集]
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