Taejunomics

            政治、経済、社会、哲学、芸術、文学、スポーツ、マイクロファイナンス、教育などなど、徒然なるままに書き綴ります。 ※お初の方はカテゴリー欄の「Taejunomicsについて」、をご覧ください。
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野口悠紀雄「ファイナンスの基礎」@Taejunomics-第一回
今期チューターをすることになる、野口先生の「ファイナンスの基礎」のサマリーを、ブログの記事にしていきます(先生の了承済みです)。ちなみに、このブログでは以前に、「ファイナンス理論からの10のメッセージ」(書きかけ)というカテゴリーで記事を書いています。よかったらどうぞ。特に今回の授業と関係のあると思われるエントリーは、多分これです。
http://stjofonekorea.blog6.fc2.com/blog-entry-663.html#more



今回は、分散投資についてお話します。ファイナンス理論は錬金術ではありません。だから、ファイナンス理論で楽してお金儲けはできません。ですが、ファイナンス理論から得られる示唆は非常に重要なものです。ファイナンス理論からの貴重な贈り物の一つは、「分散投資」です。

分散投資を土台とした保険、そして株式会社制度というのは、どちらもファイナンス理論に適った西洋の発明品で、この発明が、ヨーロッパの発展の一つの理由になったといえるでしょう。


0.分散という言葉
1.分散投資の効果
2.なぜ分散投資が好まれるのか?
3.分散投資の大切な前提


0.「分散」という言葉

非常に面倒なのですが、ファイナンス理論では、「分散」は二つの全く異なった意味を持っています。

①「リスクを分散させる」、と言う時に使う、リスク要因を散らして下げるという意味での分散。英語で言うとDiversificationです。

②そして、もうひとつは、「バラつきを示す尺度」としての分散。ファイナンス理論では、分散の大きさを、リスクの大きさとして考えます。この分散、英語ではVarianceです。エクセルでは、Varpという関数、Varという関数で計算できます。

多くの場合は、単に分散といえば②を指します。そして、「リスク分散」という時には、①を指すようです。非常にめんどくさいのですが、文脈で考える必要があります。これから勉強をしていく上で、これらについてしっかりと覚えておくことはとっても大切です。
(最初にファイナンス理論を輸入した時にこんな翻訳をしてしまった人を恨みましょう…)



1.分散投資の効果

「ベニスの商人」に登場するアントニオらヴェネツィアの商人たちは、取引されていた商品を一つの船団に満載して運ぶことはせずに、必ずいくつかの船団に分けて航海に出していました。これはなぜでしょうか?


この効果について、まず確認してみましょう。
設定は、以下の通りです:
------------------------------------------------
あなたは船を4隻持っています。取引をするために、船をいくつかの海に出すことを考えています。あなたの選択肢は三つあります:

①すべてを地中海に送る
②地中海と大西洋に分けて送る
③4つの海に分けて送る

船は常に帰ってくるわけではありません。 2分の1の確率で、船は沈没や海賊に遭うなどして帰ってくることが出来ません。ひとつの船が帰ってくることにより得られる収入は0.5とします。

-------------------------

この結果を表にすると、こんな感じになります。 (クリックすると拡大されます)

Noguchi-1-1.jpg



それぞれの収入が得られる確率をグラフにするとこうなります。

Noguchi-1-2.jpg

Noguchi-1-3.jpg

Noguchi-1-4.jpg



異なる海に船を送ることにより、リスクを下げることが可能となることがわかりますね。


さて、ここまでで、アントニオが自分の船をいろいろな海に出すことにより、自分が得ることになる利益のばらつきを抑えることができることがわかりました。

ここで、より根本的な問いが生じてきます。

なぜバラツキ(分散)が少ない投資を行うほうが良いのでしょうか?

これは、非常に重要な問題です。人によっては、バラつきの大きい波乱万丈の人生のほうが(たとえそこから得られる結果の期待値(平均値と考えてください)が等しくても)、生き甲斐があるというかもしれません(もし波瀾万丈の人生の方が平穏な人生より期待値が高いのなら、この議論は誤っています)。

でも、経済学は、そうは考えません。むしろ、「幸せに慣れてしまう」人を考えるのです。


幸せに慣れてしまう人にとっては、収入がゼロから1に増えたときの喜びは、収入が1から2に増えた時の喜びに勝ります。このときの喜びを数値化したものを「効用(Utility)」といいます。そして、喜びに少しずつ慣れてしまうことを、経済学では「限界効用は低減する(Marginal utility diminishes)」といいます。この事を初めて話したのは、天才一族のベルヌーイ家の一人、ダニエル・ベルヌーイでした。


こんな、幸せに慣れてしまう人にとっての、自分の効用の最大化は、結果におけるバラツキを可能な限り下げることにより得られます。ファイナンスの言葉で言い換えると、リスク(分散)の低い投資をすることになるわけです。日常生活の言葉で言うと、日々同じように暮らすことにより得られるのかもしれません。
(参考:http://stjofonekorea.blog6.fc2.com/blog-entry-962.html#more

ここまでの議論で、非常に重要なことがわかります:


幸せに慣れてしまうということと、リターンのバラつきを嫌うことは、同じ事なのです。


(ただ、個人的には、ドストエフスキーが「死の家の記録」で書いていたように、人間は不幸にも慣れることができるのかもしれないと思ったりします)

経済学は限界効用の低減を、重大な理論前提としています。人間に対する洞察というのは、社会科学においては当然ながら最大の重要事なのですね。




3.分散投資の大切な前提

ここまで書いてきませんでしたが、上の例で分散投資がリスク(バラツキ)を減らすためには、重要な前提が必要となります。それは、異なる投資対象について起こる結果が、お互いに依存していないことです。すなわち、地中海で嵐が起きることと、大西洋で嵐が起こることは、お互いに独立の出来事だということです。

このように、ある事象が、互いに全く依存せずに生じるとき、これら事象は「確率的に独立である(Stochastically independent)」と言います。
また、事象たちが起こることがお互いにある程度関連している場合には、これら事象には「相関関係がある(Correlated)」と言います。相関には正の相関と負の相関の二種類があります。正の相関の場合、上の例で言うと、地中海で嵐が起きれば、大西洋でも嵐が起きやすくなります。負の相関の場合は、逆に、地中海で嵐が起きると、大西洋では嵐が起きにくくなります。

相関の程度を表すのは、相関係数です。 これは、エクセルで計算できます。関数はCorrelです。相関係数はρ(ローと読みます)という記号で多くの場合表され、-1から1の間を取ります。 相関係数が-1の場合は負の完全相関、0の場合は無相関(確率的に独立なら無相関です)、1の場合は完全相関と言います。

分散投資においては、投資対象の間の相関が低ければ低いほど、すなわち、-1に近ければ近いほどよりリスクを減らすことができるようになります。

すなわち、分散投資が有効であるための条件は、「異なる投資対象のリターンが、完全な正の相関をもっていない事」にあるのです(逆に負の相関はリスク分散の観点からは歓迎されます)。このポイントも非常に重要なので、覚えておいてください。


以上です。

コメント(わかりにくい点や質問)など、どうぞよろしくお願いします!
もちろん、このブログは僕のブログなので、野口先生の授業の受講生でなくてもコメントは大歓迎です。



Comment
≪この記事へのコメント≫
あくまでも例え、なのかもしれませんが…

四つの船に積み荷を分けるということは、コストも四倍とはいかないまでも(小型船を使える?)上がるのではないでしょうか?
2008/04/22(火) 12:48:51 | URL | 三浦介 #-[ 編集]
…ってごめんなさい。はじめから四隻持っているのですね。(汗)

一隻を戦闘専用艦にし船団を組ませれば海賊へのリスクは軽減しやすいかもしれませんが…台風は…

ゲームの「大航海時代」や「提督の決断」を思い出しました。しかし両作品とも、大艦隊を絞って運用する方が、小艦隊をたくさん運用するより効果的だった記憶があります。うーん。
2008/04/22(火) 12:57:57 | URL | 三浦介 #-[ 編集]
はい・・・ あくまで、たとえ、、なのですよね。。

いろんな武将に兵士を持たせるより、ひとりにがっつりと持たせて突撃させた方が効率が良いことと同じなのかもしれません。。

2008/04/23(水) 01:02:07 | URL | Taejun #-[ 編集]
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