Taejunomics

            政治、経済、社会、哲学、芸術、文学、スポーツ、マイクロファイナンス、教育などなど、徒然なるままに書き綴ります。 ※お初の方はカテゴリー欄の「Taejunomicsについて」、をご覧ください。
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野口悠紀雄「ファイナンスの基礎」@Taejunomics―第二回
というわけで、第二回です。

(エクセル資料を作りました。ここからダウンロードできます)
https://www.webfile.jp/dl.php?i=332679&s=23a04419cbcd9d69b66d


0.大数の法則
1.保険とリスクプレミアム
2.効用と効用関数
3.期待効用最大化行動


(「続きを見る」をクリックしてください)



0.大数の法則

まず、ファイナンスを知る上で大切な法則を一つ書いておきましょう。 
それは、大数の法則と呼ばれるものです。

これは、「あるサンプルの平均は、サンプルのサイズが大きくなると母集団の平均に近づく」というものです。たとえば、ここに小学一年生のクラスがあるとしましょう。 クラスが50人の場合のクラスの平均身長は、クラスが10人の場合よりも、全国平均に近づくことになります。 これが大数の法則です。

(エクセルファイルで確認してみてください)




1.保険とリスクプレミアム

さて、前回のアントニオの船の話に戻りましょう。
この時代にも、保険会社があったとします。
アントニオは、このような保険を買うことができます:

 ・保険料は、1.1
 ・アントニオの船が沈没した時、2.0の保険金が支払われる
 (アントニオの船が帰ってきたときには、保険金はもらえない)
 
前回と同じように、船が帰ってくる確率は2分の1で、船が帰ってきたときの収入は2.0、船が帰ってこなければ収入はゼロになるとしましょう。

結果は、以下の表の通りです。

Noguchi1.jpg





さて、この保険について、二つの問いが浮かんできます:


問い1.保険会社がこの保険を売るのは妥当なのか?

いろいろな面倒くさいコストは一切ないと仮定します。
そのような場合、保険会社がこの保険を売るかどうかの意思決定は、保険会社がどのくらいの数の人々にこの保険を売っているのかに依存します。
なぜ、売る相手の数に依存するのかというと、保険の加入者が多ければ、上で紹介した大数の法則が働き、保険会社の収入は、ほぼノーリスクになるからです。
 
上の保険を見るとわかるように、保険料は1.1、保険料の期待値は1.0です。ということは、保険会社の、保険を一つ売ることによる収入の期待値は0.1です。

ここで、もし保険を少数の人に売るのであれば、保険会社の収入は、場合によってばらついてしまうことになり、保険会社は相当大きなリスクにさらされる可能性があります。もしかしたら、一人当たり0.1の収入は、そのリスクの対価としては少なく、保険会社にとってこの保険を売るのは得策でないかもしれません。
しかし、保険を多くの人々に売るのであれば、保険会社の顧客一人当たりの収入はかなり安定してくることになります。 ならば、保険会社にとって、保険を売る合理性が生じてくるわけです。




問い2.アントニオはこの保険を買うべきか?

ここでも、アントニオはリスク回避的だとします(リスク回避の事を忘れてしまっていたら前回の記事を参照)。

この場合、明らかなことは二つあります。
 ・保険料が1なら買う
 ・保険料が2なら買わない
 
(下の図を見るとわかるように、保険料が1なら、収入の期待値がノーリスクになり、リスク回避者のアントニオは迷わずこれを買います。 逆に、保険料が2なら、アントニオの収入は常にゼロになってしまうので、アントニオは保険を買わないでしょう)
Noguchi2.jpg



 
問題は、保険料が1から2の間のときです。 
 
この場合には、明らかな答えはありません。 アントニオにとって、保険を買うか否かの意思決定は、アントニオ本人の「リスクを嫌う度合い」に依存します。 この、リスクを嫌う度合いの事を、リスク回避度と呼びます。
 
  
 
さて、アントニオが、「このくらいの保険料ならこの保険を買ってもよい」という金額が、1.2だとします。 この場合、アントニオの期待収入は0.8になり、保険を買っていない時の(リスキーな)期待収入である1.0に比べ、0.2だけ期待収入が下がることになります。
 
この0.2を、リスク・プレミアムと呼びます。  (ちょっと厳密に言うと、保険リスクプレミアムと呼びます。) 
リスク・プレミアムとは、「リスクを回避する代償として、その人が許容できる最大額」です。 

では、このリスク・プレミアムは、どのように決定されるのでしょうか?
その問いに答えるためには、効用というものについて考える必要があります。
 



2.効用と効用関数

効用とは、人々がある便益から感じる満足度を、数字化したものです。 そして、効用関数とは、ある富の水準に対応する効用の水準を決める関数です。

 効用関数にはその数学的な形にしたがって、いろいろなものがあります。 べき型効用、指数効用、対数効用、などなど。 それでも、全ての効用関数について、経済学では共通の性質があります。それは、以下の二点:
1) 効用の水準は、富の水準が増加するに従い増加する
2)富が増すにしたがい、追加的に増す効用は減少する(これを、限界効用逓減の法則と言います)

1)はそうですね。千円もらうより、一万円をもらった方が、一万円よりは10万円のほうがうれしい、という事を言っています。
2)は、また別のことで、無一文から一万円を手に入れるときの喜びの方が、一万円を持っているときにさらに一万円を手に入れるときの喜びより大きいという事を話しています。前回の授業でも話したように、リスク回避的ということと、2)は、実は同じ事です。




3.期待効用最大化行動

さて、ここが今日一番ややこしいところです。

経済学では、人々は自分の効用を最大化するように行動すると考えます。まあ、これは、経済学でなくてもありふれた事実なのかもしれません。

ただし、ここで重要なのは、僕たちが扱うのは、未来の効用について、ということです。
将来がどうなるかわからない、だけど、僕たちは、将来を見越して、将来における満足度を高めるように行動をしないといけないわけです。


では、どうすればよいでしょうか?


絶対に正しい正解はないのかもしれません。ただ、多くの場合は、次のような方法をとります。

1)将来起こりうるイベントを考え、それぞれに起こりうる確率をつける
2)そのイベント毎に得られる効用と生じうる確率をかけて、「平均的に得られるであろう効用」を計算する
3)この、「平均的に得られるであろう効用」すなわち、期待効用を最大にするように行動する


では、例とともに考えてみましょう。

投資案1
・50%の確率で利益16万円
・50%の確率で利益2万円


投資案2
・50%の確率で利益14万円
・50%の確率で利益4万円


ちょっと計算するとわかるように、二つのプロジェクトから得られる利益の期待値は、9万円ですよね。
では、期待効用はどうなるでしょう?


このときの、それぞれのプロジェクトの期待効用は、絵にすると、こうなります。(オレンジの三角です)

Noguchi3.jpg


Noguchi4.jpg



投資案2の方が、高い期待効用をもたらしてくれるのがわかりますよね。
だから、リスク回避的な人々は、投資案2を選択します。



さらにわかることは、期待値(この場合9万円)の効用、(グラフの赤丸)は、投資案から得られる利益が確実でない限り、常に効用の期待値より大きくなるということです。これは、本当に大切なことです。

「期待値の効用は、効用の期待値より大きい」のです。


さらに、期待値の効用と、効用の期待値の差は、金額として計算することができます。

ちょっと式にすると、

期待値の効用―効用の期待値=something

なので、

効用の期待値+something=期待値の効用

になりますね。

このsomethingは、何なのでしょうか?

ちょっと考えてみましょう。

ヒントは次の通りです:

・効用の期待値は不確実な投資案から平均して得られる効用で、期待値の効用は常に9万円から得られる投資案から得られる効用、すなわち、確実な9万円から得られる効用である

・Somethingは、投資案の利益のばらつきが大きいときほど大きくなる

・Somethingを足すことにより、不確実な投資案から得られる満足度と、確実な投資案から得られる満足度が等しくなる。いうなれば、Somethingは、確実な投資案を不確実な投資案に切り替えたときの「埋め合わせ」と理解することもできる


わかりましたか?

経済学では、このSomethingの事を、リスク・プレミアム、と読んでいます。
リスク・プレミアムは、このように、効用関数の形を決めたら、計算することができます。
(ちなみに、金融商品をちゃんと作っている会社は、アンケートに基づき、人々のリスク・プレミアムを得たのちに、それに合うような効用関数をつくって、金融商品の値段をつけています)



この、リスク・プレミアムに対する理解は、本当に大切なので、絶対に忘れないようにしてくださいね。

というわけで、今回の授業はこれまでです。

質問や分かりにくい点、誤りの指摘など、歓迎します^^。





Comment
≪この記事へのコメント≫
業界トップシェアの会社の商品価格が割高に感じられるのは、そういったリスクが関係しているのでしょうか…

大企業ほど有利…??
2008/05/01(木) 03:02:16 | URL | 三浦介 #-[ 編集]
コメントありがとうございます。
その場合は、経済学の寡占モデルの方が説明しやすそうですね。


2008/05/01(木) 19:56:37 | URL | Taejun #-[ 編集]
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2009/05/19(火) 01:02:10 | | #[ 編集]
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