Taejunomics

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安心社会から信頼社会へ。
Tirole勉強会でお世話になっている蟻川先生のお勧めで読みました。 結構面白かったです。

安心社会から信頼社会へ―日本型システムの行方 (中公新書)安心社会から信頼社会へ―日本型システムの行方 (中公新書)
(1999/06)
山岸 俊男

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本書では、安心と信頼を区別します。 安心とは、相手の利害関係に対する認識に基づいた期待であり、信頼とは相手の人格に対する認識に基づいた期待と、本書では考えています。 どちらとも、不確実性に富んだ世の中において人間が行動する上での知恵となるものといえます。

今までの日本社会は、不確実性に対し、集団主義的な対処をしてきました。 終身雇用制度において、人々は、雇用者の人格について心配せずとも、雇用を保障されていました。 このような集団主義的な社会構造のもとでは、人々の関係性は、信頼よりも安心に依る事が多くなると著者は指摘しています。

集団主義的な社会構造は、多くの場合、機会費用をもたらします(たとえば、終身雇用制度を他の制度に切り替えれば、より多くの社会的便益が得られる可能性があるわけです)。 著者は、この機会費用の増大を一つの要因として、集団主義的な社会構造が変化しつつあり、それと同時に、この社会構造に依存していた安心が崩壊していると指摘します。


この安心の崩壊そのものは、問題ではなく変化であり、これからは、信頼に基づく社会環境を作っていく必要があるのであないか、と著者は説いています。


これが話の本線で、伏線として、相手を信頼しようと努める人の知能について、かなりの部分が割かれています。 何でも、著者らの実証によると、相手を信頼しようと努める人ほど、他人の人間性についての評価能力が高く、知能も高い傾向にあるそうです。



 


内容そのものは、非常に興味深いものでした。 社会の変化を、心理的・構造的な側面から切る本について、あまり読んだことが無かったので、新たな視点を得ることができました。 また、僕も人を信頼することと、騙されやすいことは全く別のことだと考えてきたので、そのアイディアについてサポートする結果が存在する事について、うれしく思います。

しかし、どうしても、著者のメインとなる主張が、ロジックや具体的な証拠のみならず、発想に基づいている側面があるのは否めないと思います。 すなわち、集団主義と安心の関係性、安心の崩壊などは、主張ではあっても、事実といえるレベルにはなっていないと感じました。 ただし、これは、主張の内容の性質上、仕方のないものなのかもしれません。

また、章だてがあまり良くないのかもしれません。
同様の主張が数回本書の中で繰り返されるのは、John Cochraneの言葉を借りれば、章だてに改善の余地がある証拠なのだと思います。 特に、信頼する人間が本当に騙されやすいのか、を検証することと、本書のメインの主張は少し離れたところにあるため、この記述のあたりで、読者は、かなり混乱してしまうかもしれません。


全般的には、読む価値のある本でした。 紹介してくれた先生に感謝です。
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